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28.新たな出会い

 新しくナフタという女の子と親しくなれた。食事中に少しだけ会話をしたが、グランマーレ領出身だと言う、それだけで私の中のナフタの株が爆上がりだ。

 どうやら私と同じように下級騎士の家に生まれ、地元の剣術道場で剣を学んだらしい。それで洗礼の儀式で色が見つかったので道場の師匠から薦められて士官学校を受験したらしい。しかし本人は筆記で落ちると思って落ち込んでいるようだ。


「おい、筆記の結果が出たってよ!」

「見に行こう」


 受験生が話しているのが聞こえる、これで私の受験番号があれば次の試験へ進められる。


「見に行きましょうか」

「ううう、見たくないような」


 弱気なナフタに苦笑いしつつ、合格者が記された数字の羅列から自分の番号を探す。

「あった」

 胸を撫で下ろす、自信はあったけど結果を見るまではやはり不安だった。

「ウェルマさん! ありました!! 218番ありました!!」

 どうやらナフタも合格したようだ、とても喜んでいるので私まで嬉しくなってしまう。


「合格者はすぐに正門に集合せよ」


 試験官らしき人が大声で叫ぶ、取り敢えずに言う通りに正門に向かう。


 合格したのは100人程いるだろうか? 女の人も私とナフタを含めてチラホラといるのが見える。

「334人中92人か。まあ、こんなもんだな」

 試験官をしている背の高い騎士が私達を見て感想を述べる。

「これより体力試験を行う、この士官学校を5周、制限時間内に走破しろ!」

 責任者と思われるベテラン風の騎士が試験内容を説明する。

 …5周か、士官学校が1周どれくらいなんだろう?


「それでは初め!」


 え? いきなり始まった!?

 こっちは準備体操も何もしてないぞ!?

 慌てた人達が一気に走り出すけど…これは罠じゃないのか?


「ウェルマさん、行かないと!」


 ナフタが私を急かす。

「まずは準備運動です、予備運動しないと怪我をします」

 焦ってはいけない、周囲をみると半分くらいは柔軟体操をしている。

 おそらくこの試験で一番怖いのが途中で走れなくなる事だ、いきなり焦って走り出すと怪我やお腹が痛くなる。昼食を少なくしておいて正解だったと今更ながら思う。

 焦っていたナフタも周囲を見て気がついたのか、ゆっくりと深呼吸して身体をほぐ始めている。


「行きましょうか」

「はい」


 ナフタはどうやら私と一緒に行くみたいだ。だけど私は走力は自信がある。果たしてついてこれるだろうか?


 取り敢えず少しずつペースを上げていく。いい感じだ、道が良いので走りやすいし、士官学校周辺に何があるか見る事ができる。

 1周目を通過する、時計を見ると余裕のあるタイム設定のようだ。

 そして私を追いかけるナフタを見ると普通に私のペースについて来ている。結構自信があっただけに思ったよりショックだ、こうなったら意地でも引き離してやろう。


「ペースを上げても良いですか?」

「はい!」


 何で嬉しそうに笑っているんだ? まだ余裕なのか?


 ここで脱落者っぽい人が見えてくる。脇腹を押さえて苦しそうな人から、座り込んでしまった人もいる。


「これって引っ掛けだったんですね」


 走りながらナフタが話しかけてくる、思ったより余裕そうだ…実は私の方に余裕が無くなってきている、ナフタを引き離そうとスピードアップしたのを今更ながら後悔している。これは素直にペースダウンした方が良いかもしれない。


「あれ?」


 ナフタが不思議そうに私を見る。


「試験の意図が分かったので私はペースダウンします」


 苦笑いしながらスピードを落とす。

 本当に私は世間知らずだった、バラド師匠の地獄の訓練を乗り越えた事で調子に乗っていたかもしれない。世の中には私より上の怪物のような人がいるんだと思い知らされた。

 するとなぜかナフタもペースダウンし始めた。


「時間勝負じゃないなら私もこのペースで良いです」


 笑顔を向けられる、ここは素直に負けを認めるしかなさそうだ。

「…体力には自信があったんですけどね? 上には上がいたので驚きました」

 正直に白状し、負けを認める。

「うん、ビックリした。実は私もかなりギリギリだったりした」

 もしかして強がっていただけなのか?

「あはは、世の中に広いです、私も結構自信があったんですよ」

 ナフタも正直に白状する、どうやら私と同じ事を思っていたようだ。


「ははは、じゃあ私はもう少し強がれば良かった」

「我慢比べなら負けませんよ」


 そうだ、ここは実力主義の士官学校なんだ。

 負けず嫌いな人ばかりが集まってくる、それが例え女の子でも一緒なんだ。


 何となくナフタと打ち解けられた気がする。ちなみに私はもう勝負するつもりはないので自分のペースを守って走っている、ナフタに先に行っても良いと言ったがどうやら私と一緒に走りたいようだ。


「あ、危ない」


 突然フラフラと私達の方によれてくる女の子いる。倒れそうになったので体を支える、どうやら最初に準備運動をせずにすぐに走り出しただろう、脇腹を押さえて苦しそうにしている。


 …この子はきっとダメだろう、コースの脇に座らせて先に進む。


「大丈夫ですかね?」

 ナフタが心配して後ろを振り返る、私もチラリと振り返ると再び立ち上がって歩き出している、すごい根性だ。

 結局はそのまま一緒にゴールした。私達より先にゴールした人もおり、世の中は本当に広いと感心してしまった。

「こんなもんかな?」

 試験官の背の高い騎士が時計を見て呟く。最初より半分くらいの人がゴールしたようだ。

「いや、まだだな」

 遠くに左右にフラフラと寄れながらさっきの女の子がやって来た。


「良い根性だ」


 責任者っぽいベテラン風の騎士は顎髭を触りながら感心している。時計を見ると残りはあとちょっとだ。


「もう少し」


 小さな声でナフタが応援する。全員が見守る中フラつきながら女の子がゴールする、何か縁があるのか私達の方にフラついてくる。このまま放っておくわけにはいかないので抱き抱えて支える。


「知り合いか?」

「い、いいえ」


 試験官に尋ねられる。勿論違うので首を横に振る、隣でナフタも否定する。

「まあ、丁度いい、少し休ませてやれ。1時間後に実技試験を開始する」

 制限時間ギリギリだったが、この子もどうやら次の実技試験に進めるようだ。

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