27.王都にて
鉄道の旅は想像以上に大変だった。
ケチって一番安い乗車券を買ったので座席に座る事が出来ない、平気だと思ったが道中ずっと立ちっぱなしは思ったより辛かった。
これは不味いと思いバーンヘイズから王都への列車では座席券を買うが、まずこれが思ったより高額で驚いた。しかもその日は途中までしか進まず、予期してなかった列車の中で一泊するハメとなった。
そして王都についた頃にはヘトヘトになってしまった、長旅になると聞いていたけど思ったより大変だった。
取り敢えず到着したので王都のウェットランド伯爵邸に挨拶に行くことにする。
試験は明後日なので時間は少し余裕があるが、泊まる宿も探さないといけないからやる事は沢山だ。
せっかくなのでウェットランド騎士団の制服の上着だけでも着て王都のウェットランド邸へ向かう。
「こんにちは、ウェットランド領より参りましたウェルマ・ライアンと申します。ご当主様に面会をお願いしたいのですが」
守衛さんは私が騎士団の制服を着ているので普通に接してくれた。中と連絡を取ってもらい、すぐに会ってくれるとの事なので中に入らせてもらう。
「ウェットランド領より参りましたウェルマ・ライアンです」
「入れ」
ウェットランド家の現当主のダズム・ウェットランド卿と久しぶりの面会だ。
「大奥様からのお手紙です」
マーリン夫人の手紙を渡す、中身を確認して机の上に置く。
「…本当に、無色の子供に何を入れ込んでいるのやら」
ダズムは私を見て大きな溜息を吐く。まあ、これが無色の人間に対する普通の反応だ。
「よい、下がれ。あまり品位を貶めるような事はするなよ。それと…まあ、頑張ってこい」
「ありがとうございます! それでは失礼します」
深々と頭を下げて部屋を出る。私を見る貴族は基本的には今のような反応だ、ただ最後に激励してくれたので嫌われていないと思う。普通ならもっとぞんざいに扱われるはずなので、ウェットランド家の人達の対応は本当に温かい。
ウェットランド邸を後にし、拠点となる宿を探すことにする。王都に知り合いなどの伝手はないけど、こう言う時に便利なものがある。
「ここが王都のハンターギルド。やっぱ立派だなぁ」
中に入ってハンター証を見せる、ウェットランドでハンター証を手に入れておいて本当に良かった。これさえ持っていればどこでもお金を稼ぐ事ができる。
「ウェットランドから? また田舎からご苦労なこった」
無愛想なハンターギルドのおじさんが私のハンター証を確認する。
「それでしばらく拠点となる安い宿を探しているのですが?」
「この建物の裏の宿なら安いぞ、飯はないけど水が使える。飯はこの施設内に食堂があるから安く食わせてやる」
無愛想だけど思ったより優しかった。、お礼を言ってハンターギルドの裏にある建物へ向かう。
そこは普通の素泊まり用の宿で、綺麗ではないけど野宿をすると思えば全然良い。
「素泊まりでこんなに安いの?」
貼ってある料金表を見て驚く、これならウェットランドの宿より安い、さすがは王都だ。
「素泊まりで3日」
「うん? ウチは騎士様が泊まるような場所じゃないぞ?」
受付のおばさんが私の格好を見て訝しむ。
「私はまだ騎士ではありません。領主様邸に伺ったのですが、唯一まともな服がこれしかないもので」
「ふーん」
そう言うと無愛想に部屋の鍵を渡してくれる。
「水は中庭にある井戸を好きなだけ使って良い、ただし獲物の解体はするな。飯はないから隣のギルドで獣臭い肉でも食べるんだな」
口が悪いな、悪い人じゃ無さそうだけど。
「ありがとうございます」
一礼して部屋に向かう。3階は誰も泊まっていないようだ、2階は人が泊まっているのに? 私が女だから気を遣ってくれたのかな。
部屋に入るとベッドと小さな机があるだけの簡素な部屋だ、何となさすぎて実家を思い出す。
窓を開けて外を見てみるとハンターギルドの裏側だ、今まさに狩ってきた魔物の解体が行われている瞬間だった…私はそれを見てそっと窓を閉じた。
本当なら王都を見て回りたかったけど、今は自分の事が先決だ、試験勉強の復習をしつつ当日に備える。
そしてついに本番がやってきた。
王都の南側にある士官学校に向かう。すでに大勢の人が集まっており、女の人もちらほらといる。明らかに歳上の人から小柄な女の子など様々な人が集まっている。
受付を済ませて受験表を受け取る、私の番号は81番だ。まずは難関と言われる筆記試験からだ。
と言っても実は私にとっては難しくなかったりする。普通に前世の知識が残っているし、私の性格上どうしても入念に何度も復習してしまうので思ったより余裕だった。周囲の人達が頭を抱えているのが不思議に思えたほどだ。
こうして午前中を使った筆記試験は終わった、次は体力試験で最後が実技試験だ。
取り敢えず昼食を買いに外に出る。士官学校の近くには売店や食堂などがある、ただ食堂は満タンだったので売店でパンとミルクを買い、士官学校の中庭にあるベンチで食べる事にした。
「あの、隣いいですか?」
不意に声をかけられる、そこには私と同い年くらいの癖っ毛の女の子が立っていた。私と同様に売店のパンとミルクを手に持っている。
「どうぞ」
自分の手荷物をどかして座るスペースを開ける。この時、気がついたのだが周囲のベンチは全て座られており、彼女はとても困っていたようだ。みんなが1人1つのベンチを使っており、この子は一番話しかけやすそうな私の所に来たのかもしれない。
「ありがとうございます。良かった、怖い人じゃなくて!」
女の子は私に頭を下げてベンチに腰掛ける。
「あ、私はナフタと申します」
「私はウェルマです」
丁寧に自己紹介されたので自己紹介を返す。
「大人っぽいけど、若いですよね?」
思ったよりぐいぐい話しかけてくる、そして大人っぽいというのは、背が大きいと言いたいのだろう。
「15です」
「15?良かったぁ、同い年の女の子がいて!」
ナフタも私と同じ15歳のようだ、ただ若く見えると言うより小柄なので逆に幼く見える。
「お互い受かると良いですね」
「本当ですね」
隣で私と同じ一番値段の安いパンとミルクを食べ始める、これだけで親近感が湧いてしまう。
読んでいただきありがとうございました。
明日も投稿します。




