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19.運命が決まる日

 ウェルマ・ライアンついに7歳になりました。


 あの公爵家の出来事から4年が経ち、あれ以降カルリと会う事はなかった。どうやら王都にあるバーンヘイズ邸に移り住んだようで、会いたくても会う事が出来なくなってしまった。


 次姉のエルダは11歳になった、時々バーンヘイズ公爵家の人間が様子を見に来るが基本的にウェットランド家が面倒を見ている。

 その間に色々と調べられたようで、物凄い魔力を秘めているらしく魔力判定をすればB近くまであると言われているようだ、将来的に王都のアカデミーに行く事も決定した。


 長姉のサーニャは14歳。現在はウェットランド家で従事しており見習いメイドとして働き始めた。

 元々私達姉妹はウェットランド家の人達からは好意的に見られていたのですんなり雇ってくれたみたいだ。今はそのままウェットランド伯爵邸で住み込みで働いている。


 兄のザックは13歳になった。相変わらず悪ガキのまんまだ、だけど最近は母ミシェルについて行って狩りを学んでいる。

 どうやらこのままハンターになるようで、騎士をしている父サイアムとしては少し寂しそうではあった。だけど生活が安定しているのはハンターだとザックは判断したようだし、何より上司との上下関係を垣間見たあたりで騎士への見方が変化していった気がする。


 最後に弟のウォルフだ、私が3歳の時は新生児だったけど、今は元気に4歳な男児だ。少し生意気なのは仕方ないが、時々私に甘えてくるのがたまらなく可愛い。


 そして7歳になったという事は、私も人生の最初の転換機を迎えようとしていた。

 最初は魔力というものは無色透明だ、それが7歳になるとそれが少しずつ変化して色がついてくる。魔力に色がつくとは、言葉そのままに魔力が赤色や青色に変化していく事だ。

 色がつくとは魔力を顕現する事ができるという意味で、赤色なら火を操り、青色なら水を操る事が出来る。そして色が濃ければ濃いほど魔力を秘めていると言われている。

 逆に無色だと魔力を顕現する事が出来ない、たとえ魔力があったとしても無自覚のうちに体力強化や身体治癒に使っているという、さらに無色の人は総じて魔力の量も少ないためスタート地点で大きな差があると言われる。稀に無色の人でも魔力が高い者が出現すると言われるが過去に数例ほどあっただけらしい。

 そしてここで大切なのが色がつく人種だ。これには代々伝わる血筋が重要な因子と言われている。つまり色がつく人間はこの国で貴族と呼ばれる人達ばかりで、例え平民から出たとしても何代か前に必ず貴族の血があると言われている。それがこの国の常識であり、階級制の裏付けになっている。


 だが近年、その概念が覆りつつあった。


「インヘリット」と呼ばれる特異な存在の出現だ。


 その存在自体は昔からあり、ただそれが突然変異と信じられており存在自体が稀であった。

 だがこの数年で何人か現れており、私の姉のエルダもこれに該当する。インヘリットとは前世からの能力を受け継いだ者という意味で、全くの無色の家系からでも突然濃い色の魔力を持つ子供が生まれる場合がそれに該当する。

 そしてインヘリットは総じて能力が高いと言われている。なぜなら前世が優秀な人間ほど後世へと力が受け継がれやすいとされており、その魔力は8公と呼ばれる上位公爵に匹敵する程の濃さだと言われている。

 突然のインヘリットの出現に慌てたのが王家や貴族達だ、なぜなら彼らの出現は現体制を揺るがす可能性があるからだ。なのでバーンヘイズ公爵家のようにエルダを囲い、管理の行き届くアカデミーに入れようとしているのだろう。

 貴族にとって現体制が揺らぐのを一番嫌っており、インヘリットの子供達を反体制派に使われるのを特に危険視しているのだ。


 少しだけ平和に影を落とすような事案になりつつあるインヘリットだが、実を言うと私もそうなのではないかと思っている。

 私は前世であるベネルネス・グランマーレの記憶を受け継いでウェルマ・ライアンに生まれ変わった、なのでおそらく能力も一緒に受け継いだ可能性が高い。自慢ではないが前世の私は濃い水色の魔力を持っており、普通の人間より遥かに優れていたと自負している。

 なので7歳になった洗礼の儀でおそらく色が出るだろう。その時どうなるか分からないけど、上手くいけばエルダ同様に王都にあるアカデミーへ行くという道が開ける。もしかしたら希少な水色の魔力という事でグランマーレ家が目をつけてくれるかもしれない。

 これは単に私が過去に縋っているだけなのかもしれない、だけど許されるならこれが私が一番望む結果だ。もう一度だけ子供達や夫に会いたい、大袈裟に言えばそれが私のやる気になっていると言っても過言ではなかった。


「ウェルマ、準備できたか?」

「うん」


 父のサイアムに促されて外に出る。4年経った今でも元気な我が家の名馬ダンダムが私を待っていてくれる。

 サイアムに抱き上げられてダンダムに乗る、そして私を抱き込むようにサイアムもダンダムに跨る。

「これもついでに換金してきて」

 母ミシェルがいつものように籠一杯の素材を渡してくる、前のエルダについて行った時は私はこの荷物の中に埋もれていたのが懐かしい。だけど今回は違う、ダンダムの上だから快適そのものだ。

 サイアムが籠を背負って出発する。もう何度も通い慣れた道だ。今なら歩いてでもウェットランドの街まで行けると思う。片道20分くらいだ、心地よい風を受けてダンダムは歩く、あっという間にウェットランドの街の城壁が見えて来る。


 期待感と不安でドキドキする。今日、ある意味私の人生が決まるといっても過言ではない。

 きっと上手くいくと信じている。

読んでいただきありがとうございます。

明日も投稿します。

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