表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/228

17.道が開けた気分だ

 思いがけない所でアレクシスの話を聞くことが出来た。出来ればもう少し知りたいけど、どうすればいいんだ?


「グランマーレ様といったら奥様が数年前に亡くなられたばかりでは?」


 今ここにその奥様がいるから、もっと話を聞かせて!


「ああ、聡明な方だった。子供達2人も奥方様によく似ている、賢く強い意志の持ち主だ。母親が亡くなったというのに気高く、我々の前で一度たりとも涙を流さなかった。カルリもそのように強く育ってほしいものだ」


 バーンヘイズ卿がカルリを優しく撫でる。

 ヤバイです、今の私は泣きそうになっている。


「おっと、ウェルマを怖がらせていたか」

 違います!感動して泣きそうになっているんです!!

「カルリと仲良くしてくれ」

 笑顔で私まで撫でられてしまった。カルリと共に解放されてサーニャ達のもとに戻る事ができた、本当に命拾いしたと思う。


「それで、エルダに関してはバーンヘイズとウェットランドで囲うことになるだろう、しっかり学ばせて将来的にアカデミーに入学させる事になるだろう」

 つまり、エルダの事を両家で囲ってしまおうという事か。それで王都のアカデミーに通わせてエリートコースを真っ直ぐ進む事になるんだろう。その間に色々と教育して貴族の傘下にいさせようという考えだな。


 ちょっと待てよ。


 王都のアカデミーに行けばアレクシスやアニスに近づけるんじゃないのか?

 いや、王都に行ければ実際に会えるかもしれない。こうして貴族がインヘリットの子供達を囲っているのなら面会する機会だってあるかもしれない。


 おそらくだけど、私もインヘリットだ。


 私は前世のベネルネスの記憶を引き継いで生まれ変わった。くしくも「インヘリット」という存在は前世の力を引き継いで生まれた子供の事だ。どう考えたって私はそれに該当するはずだ。

 おそらく私は前世のベネルネスの力であった氷を操る水色の魔力を持っている。それならば私もインヘリットとしてエルダと同じように王都のアカデミーに入る事が出来るんじゃないのか? 

 そうすればアレクシスやアニスともう一度会えるかもしれない!!


 もう一度、アルバレスと会えるかもしれない!!


 何だろう? 不思議な気持ちだ。漠然と流されるままに下級騎士の家の娘ウェルマ・ライアンを受け入れていた。決してそれを否定する訳ではないけど、不透明だった私の未来が一気に晴れた気分だ。


 もしみんなに会えたらどうしよう? 私がベネルネスなんて言っても誰も信じられないだろうな?

 名乗らずに他人としてでも良いから何かの支えになってあげたいな。


「ウェルマ?」


 ここでカルリの声がして、その綺麗な顔が間近にあって驚く。すっかり妄想の世界の中にいたようだ、どうやら私が考え事をしている間に話が進んでいたようだ。

「夕御飯を食べるってさ、行くよ」

 サーニャに促されてご飯を食べる場所へ移動する、ちゃっかりとカルリもサーニャと手を繋いでいる。

 それにしてもカルリは私の何を気に入ったのだろうか? 何かが見えているとか言っていたし、もしかしたらカルリにも何か秘密があるのかもしれない。


 食堂に到着する。さすがにこの場にバーンヘイズ卿は居ない、だけどヘレア夫人とカルリと一緒に食べるようだ。それでもバーンヘイズ卿がいないだけで気分が楽なのは間違いない、サーニャもエルダも緊張はしているが何とかマナーを守って食べる事が出来ている。

 それにしてもウェットランド邸でテーブルマナーを教わっていて本当に良かったと思う、この場にいる全員が私達を品定めするような目で見ている。どこかで私達の粗を見つけて馬鹿にしようとしているのが見え見えだ。

 一方のヘレア夫人は私達を見て目を細めている。きっとマーリン夫人の教育が行き届いているのに満足しているんだろう。


 おそらくだがヘレア夫人は身分が上の公爵家に嫁いで色々とあったのかもしれない。

 屋敷の空気でこの家の人間全員がバーンヘイズ公爵家という肩書きに心酔しているのが分かる。きっとこの屋敷でヘレア夫人の立場は強くない、私達の行動に目を光らせているのは私達の粗を見つけ、そこからヘレア夫人を貶めたいからだろう。マーリン夫人が厳しく私達を躾けたのはそれが一番の理由かもしれない。


 なんとか緊張の食事を終えた。私達が寝る部屋まで案内される事となる、食堂を出る際、私はめざとくある物を見つけた。それは新聞だ、さっきバーンヘイズ卿が新聞にアレクシスの事が載っていたと言っていた、その記事があの新聞に載っているかもしれない。

 持って行ったらダメだろうか? いや、3歳児が新聞を読むなんておかしいか?

 後ろ髪を引かれつつサーニャに手を引かれて移動する。


「私もここで寝る!!」


 私達の案内されたのは客間で、フカフカのベッドが3つ並んでいる。そこでカルリは私達と一緒に寝ると駄々をこね始めた。


「お嬢様、我儘を言ってはなりません。この者たちとは育ちも身分も何もかもが違うのです。共に寝るなどあってはならぬ事です」


 例の従女が相変わらずキツい言い方をする、まるで私達の前でわざと言っているようだ。


「そうですよ、お嬢様。この者たちをこしらえるとしても立場を弁えさせてないとなりません」

「主従関係という線引きは明確にしなければなりませんよ」

「カルリ様は平民とは違うのです、今は分からないかもしれませんが、とても大切な事なのです」


 従女達がカルリを半ば強引に連れ出していく。私達は酷い言われ様だったけど、何も言い返す事も出来ずに呆然とそれを見るだけだった。


 ただエルダを囲おうとしているのに、そんな態度をとるのは悪手な気がするけど、彼女達にはそのような事は興味が無いのだろう。


読んでいただきありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ