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おきまり  作者: 新戸kan
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 私は過去は振り返らない人間だ。歴史の授業なんて退屈もいいとこ。話が逸れたが言いたいことは、どうやって死んだのか、向こうにいる家族は、なんて、どうせ帰ることは出来ないのだから、もう関係ない話。薄情やら、冷たいって思われても私にはどうすることも出来ないんだから。


 と考えていると鬱になりそうなことも、先生の授業が始まれば消えてしまう。最初は漫画の読み過ぎかと思っていたけど、やっぱりこの世界は元の世界とは違うらしい。まず、先生のもそうだが、皆の髪。失敗した実写映画の、コスプレ感の拭えないそれとは違い、とても自然なカラフルな頭をしている。逆に黒髪が貴重だと思える、というかいない。

 次に授業の内容に大きく関わるもの、それが魔力だ。この言葉について私が思い浮かんだのは、魔法使いが魔法を使うのに使う力、他にはクラスの男子が話しているゲームだろうか。うちはゲームはなかったから良く分からない。ドラマも恋愛とか医療系、推理系ばっかり見ていた。その推理も自分で考えるのではなくて、ああなるほど、くらいなもの。だから深くは考えない。それが私にもある、という現実だけ受け止めればいい。何故私がこんなことをとか、想像とは違うお姫様の暮らしも。

 それと世界が違うと判明したことで大事なことがある。下手なことは喋らないことだ。この世界にないものを口走れば、変なもの、例えば悪霊が取り憑いているだとかで、魔女裁判のように処刑されては堪らない。最悪のそれを避けられたとしても、籠の中の小鳥状態にされる可能性もある。私は何も知らない子供でいることにした。


 カレンダーも季節もないため日付の感覚は分からないが、皆が私の誕生日を祝ってくれるから、何となくで一年は分かるようになった。間違いでなければ365日ではない。


 4歳になった私は、その魔力の使い方を教わっていた。どうも、この世界では必須らしい。世の中には聞き慣れない、まもの、なんてものがいて、それと戦うために必要だとか。それなら私は剣とかの方がいいと思う。漫画でも鬼とか、人間を襲うものをやっつけるのは剣が多いし。一度言ったことがあるけど、その魔力が使えないと武器も効かないんだって、不便な世の中。ここでの生活も、初めはキャンプ教室みたいで良かったが、慣れてくると、大都市の利便性に浸かった人達だと、早く帰りたい思うほどには不便。私は他に楽しめるものがあったから何も問題はないけど。


 5歳になると、このお城は私の庭も同然。初めて見た時はせめてもと、煌びやかなものを想像していただけに、歴史観光で訪れそうな古城のようであったときは、少しがっかりした。今はと言えば、違う。多くの店が入っているショッピングモールのようで、見たことないデザインの服や食べ物が並ぶ様は、失われた子供心を刺激する。お金がいらないのも良い。私が王女だからではなく、お金そのものが存在しない。少ない小遣いから遣り繰りしていた時を思い出せば、あれもこれもと手にとっては、部屋に戻ってお母さんに怒られた。でもそれも仕方のないことなのだ。以前の私は部活のために短髪でオシャレにも程遠い人間だったのだから。こんな可愛らしい女の子であるなら今度は女の子しようと決めた。

 別の授業も始まった。何でも家族の功績について。身内の話であるのでこそばゆく感じ、そういう時は恰も話に集中しているように先生の顔をじっと見る。色気を感じる三つのホクロが良い感じに軽減してくれた。先生の方もつまらない授業を真面目に受けるフリに騙されて、これが役に立つ日が来るとは、世の中何が役に立つか分からないものだ。


 6歳で漸く魔力の扱いにも慣れ、内から眺めるだけだった、外出が許可される。勿論一人でとはいかない。お姉ちゃんかおにいちゃん、どちらか随伴。今日は初めてだから二人ともついてくる。

 まずは家の外観の確認。想像していた、和洋どちらも当て嵌まらない。洋の方が近い感じ、おにいちゃんの話では、まだ改修中らしい。

 このお城がある場所だけはイメージ通りで、森の中にあるみたい。ただ、世界の違いを痛感させる。暖かい気温なのに紅葉したような鮮やかな植物。それだけならまだ南国かと思えるが、よく見るとイルミネーションのようにキラキラ光るものがある。感覚ですぐに何か分かった。

 次は私の願望が叶う。今までは窓越しだったけど、やっと触れ合うことが出来る。うちではペットを飼えなかったから楽しみで仕方がない。その子達の固有名はコ・ネコ。猫と全く同じ見た目でありながら、その体は成猫で人を丸呑みできるのではというほど。でもそんな怖い存在ではない。この子達の目はとても優しい。それにこれも、私のこの魔力が教えてくれている。どちらが強者であるかを。

 コ・ネコをお世話をするのは専門の人達。何でも彼らが何を言いたいか分かるそう。先生は魔力によるものと教えてくれたけど、残念ながら私には分からなかった。この世界全ての人間が持つという魔力も、その量の個人差やら特徴があるようだ。

 

 せっかく魔力の使い方を覚えたので実戦もと思っていたけど、この辺りはコ・ネコの力もあって、まものと遭遇することはない。それなら今度外出するときは、近くの街まで行ってみよう。かつては旧市街と呼ばれた街、現在は世界の中心となる街だそうだから。

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