ほのぼの☆家庭教師物語
家庭教師を雇う事になった。
目的は俺ではなく中3の妹の学力向上の為。
どんな先生が来たのか第三者ながら興味があった。
初日、一目見てみたい心境だったが、妹の部屋を覗く訳にはいかないので、後からどんな先生だったか、然り気無く聞く事にした。
俺
「家庭教師どんなやつだった?」
妹
「え〜、良い先生だったよ。兄貴より年4つ上だって。」
4つ上。と言う事は大学3年生かぁ。
容姿がどんなだったか、詳しく聞くと変に思われるので、その質問は避ける事にした。
しかし、数ヶ月後チャンスが訪れた。
それは夏休みだけ俺の勉強も見てほしいと、親が頼んでいたのだ。
嫌だ!って言葉では否定したが、内心は、やった!と言う気持ちだった。
そしてついに家庭教師の先生がやってきた。
トントン。
俺の部屋をノックする。
俺
「ど、どうぞ。」
カチャ
先生
「はじめまして。」
俺
「あっ、はじめまして。」
彼女は想像してた人物とはかけ離れていた。
背がちっちゃくて、細身。服装はTシャツにダボダボのGパン姿。おまけに黒ぶち眼鏡。
正直その時はガッカリしてしまった。
先生
「夏休みだけお世話になりますね。」
俺
「こ、こちらこそ。」
意外と愛想は良く、直ぐに打ち解ける事が出来た。
もちろん下心などの発想もなかったので、勉学に集中する事が出来た。
夏休みも終盤に差し掛かった頃、ある出来事が起きた。
いつもの様に妹の授業が終わると俺の部屋にやって来る。
先生
「こ、こんばんは..ちゃんと宿題はやった..かな?」
いつもより少し元気がなさそうな小さな口調だった。
俺
「まぁまぁ、出来たよ。」
先生
「どれどれ。あっ、ちゃんとやってるね..。エライ、エライ..」
採点をしている時、先生の顔色を伺ってみたのだが、何だか顔が、やけに火照った感じがしたので先生の額に手を当ててみた。
先生
「えっ!?な、なに?」
ビックリした表情だったけど、明らかに熱がある感じだった。
俺
「先生、熱あるんじゃない?」
先生
「そんな事ないよぉ。今日は暑いからだよぉ。」
俺
「いや、絶対熱あるね!計ってみなよ。」
そうやって体温計を先生に手渡した。
先生
「熱無かったら..難しい問題やってもらうからね。」
1分後、体温計のアラームが鳴る。先生
「こ、怖いから、見て..。」
俺
「怖いって。貸してみなよ。」
体温計を渡され、見てみると、39度の高熱だった。
思わず、
俺
「あっ..」
と声が出てしまった。
先生
「..何度..だった?」
と息遣いが荒い表情を浮かべながら問い掛けてきた。
俺
「今日はもう無理だね。ほら。」
体温計の表示を見せると、
先生
「どおりで..しんどかったわけだ。」
それから、先生は最後まで頑張るって言っていたのだが、無理させる訳にもいかないので、親に事情を説明した。
すると親は
「このまま先生を帰らしても一人暮らしで可哀想だから、今日は泊まっていただきなさい。」
と言う事になり、先生をこのまま一晩泊まらせてあげる事になった。
妹の部屋に一緒に寝かせて上げようと言う形になったのだが、妹は受験生なので風邪をうつしたらいけないって先生が言ったので、俺の部屋で寝かせてあげる事になった。
先生
「なんか、すごい申し訳なくて..ごめんね..。」
俺
「遠慮すんなって。それより、眼鏡取った方がいいんじゃない?」
そう。前々から俺は先生の眼鏡を取った素顔がとても気になっていた。
先生
「あっ..。そうだね。でも私、視力すっごく悪いの。」
先生が眼鏡を外した瞬間、胸が急激に熱くなってしまった。
俺
「か、可愛い。」
先生
「えっ、何か..言った?」
俺
「い〜、い、いや、なんでも。と、とにかく、頭冷やすから寝てくださいっ。」
今まで、俺の女性のタイプであったスタイル抜群の美人系だったのに反して、これがロリ系と言わんばかりのロリ顔。
しかも年上。
一気に自分のタイプを覆す瞬間だった。
先生の額に濡れタオルを乗せてあげると
先生
「ありがとう。優しいんだね。お兄ちゃん..。」
チラっとこちらを見ながらニコッって笑う先生にドキドキが止まらなかった。
しかも、お兄ちゃんだなんて!
あなた、俺より年上でしょ!
ってツッコミたくなる感じだった。
俺
「せ、先生、リンゴみたいに顔真っ赤だから、早く寝た方がいいね!何かあったら呼んで。俺は下の階で寝るからっ!」
もっと、先生の顔を見ていたかったけど、好意を持ってしまった事を悟られそうな気がして、俺は自分の部屋から出ようとした。
先生
「このまま..死んじゃったりして。」
その言葉に返答せず、俺はドア開けて部屋を出た。
『なんなんだろうか?この気持ちは。こんなに胸が締め付けられる思いは初めてだ。』
それから俺は夜中に何度も先生がいる部屋に入り、タオルを交換してあげた。
先生もグッスリ寝ているみたいで、起こさないように、そっとしておきたかったのだが、三度目に我慢出来なくて、遂に先生の唇にキスをしてしまったぁぁぁ。
先生の唇は熱くて顔に熱気が伝わってくるくらい高熱で熱かったけど、とても柔らかくて、10秒くらいはしていたと思う。
それから、夜が明けて少し熱は引いたみたいだったが、母親が朝一で先生を病院に連れて行った。
俺は部活があるので、先程まで先生が居た自分の部屋に戻り支度をしていると机の上に小さな紙切れがあった。
手に取って見てみると、それは先生からのものだった。
『何度も看病しに来てくれてありがとね』
って短い文章だったけど、凄く嬉しい気持ちになった。
のは一瞬だった。
俺
「えっ!?ま、待てよ!何度も..って事は先生、俺がキスしたの知ってんじゃ..」
背筋が凍ってしまった。
これは次合わせる顔ないじゃないか〜。
一週間後、先生がやってきた。
先生
「こんばんは。この前はご迷惑をおかけしました。」
と、ペコリと挨拶。
いつものように、冴えない服装に黒ぶち眼鏡だったけど、完全に好意を持ってしまっている俺は、まともに先生の顔を見れなかった。
俺
「もう良くなったんだね。良かった良かった!」
キスしたのバレてるのか気になっていたが、平然を装った。
先生
「お兄ちゃんは、介護の仕事とか向いているかもねっ。あっ、これ、看病してくれたからお礼にどうぞ。」
先生はカバンの中から小さな紙袋を手渡してきた。
俺
「あっ、ありがとう。何だろ?先生開けてもいい?」先生
「いいよ。あまり大したものじゃないけどね。」
中身の袋から出てきたのは、キャラクターものの、リップクリームだった。
なぜ、リップクリーム!
考える余裕はなかった。
キスした事もう完全にバレてるじゃないか!
先生
「前々から気になってたんだけど、お兄ちゃんずっと唇乾燥してるから、これが一番良いかと思って。」
先生も誤魔化しているのか、俺を試しているのか、分からなかったけど、俺の中では完全にバレたと思っていた。
もう破れかぶれだった。
俺
「せ、先生ごめんなさい。俺、我慢出来なくて先生にキスしてしいました。ごめんなさい。でも俺初めてで、どうしていいか分かんなくて、先生の弱味に漬け込んで..。」
あ〜ぁ、言っちまった。
完全に終わりだ..
もっと、ちゃんとした告白するんだったな..。
まぁ、あとはどう反応するか、恐る恐る先生の顔を見た。
先生
「えっ!?なんの事?キスって..?」
知らばくれてるんだって分かってる。
先生も、きっとこのまま気付かせておいて、深入りはしたくないんだなぁって思い、これ以上この話を持ち出すのは止めた。
俺
「あ、あれ?俺、夢見てたのかな?」
笑って誤魔化す俺。
先生
「お兄ちゃんは面白い人だね!」
お互い笑って事なき終えた。
それから、何事もなく、夏休みが終わり俺の授業も終わりとなった。良い夏休みの思い出が出来たが、どうしても先生の存在が気になる。
夏休みが終わっても、妹だけは授業があるので、いつでも会おうと思えば会える。
週に二回先生が来る日があるのだけど、行動に出れない俺は、微かに妹の部屋から聞こえる先生の声だけを聞いては思いに更けていた。
月日が経ち、年が明けて妹の受験が差し迫る頃、妹からある事を聞いた。
妹
「ねー、兄貴、先生、コンタクトレンズにしたんだよぉ。めっちゃ可愛いんだからぁ。」
そんな事を聞いたもんだから、俺は益々会いたくなった。
おまけに、
妹
「あとね〜、あたし受験合格したら、先生とデートするんだぁ。」
なんて事言いやがって、どこまで羨ましいヤツなんだ。
そして、数日後、見事妹が志望校に合格した。
当然、家庭教師の仕事はここまでであるから、もう二度と先生に会うことはないんだろうなぁ。
と、過去に犯した過ちや、後悔等がまた急に思い出して思い出せば思い出す程、どうしても、もう一度先生と会いたかった。
そんな時、
妹
「日曜、先生とデートなんだぁ。いいでしょ。先生家に来るからね。」
この機会に一度挨拶だけはしとくかな。
そして、日曜日がやってきた。
先生が家にやって来るんだと、はしゃぐ妹。
午前9時先生がやってきた。
妹
「兄貴、出てー。」
準備に捗っている妹からの声で、俺は玄関のドアを開けた。
扉の向こうには、まるで別人の様な、とっても可愛い、先生の姿があった。
白のワンピースに花柄のリボン。
薄く化粧もしているのか、もう以前の黒ぶち眼鏡とは想像も出来ない姿だった。
先生
「あっ..お久しぶり。お兄ちゃん。」
俺
「あっ、お久しぶりです。ちょ、ちょっと待ってて下さいね。」
直ぐにドアを閉めてしまった。
何をやってるんだか、俺は..。
これが最後になると思えば途端に胸が苦しくなった..。
そんな時だった。
妹
「あいたたた。急にお腹が痛くなった。替わりに兄貴、先生とデートしろ。」
俺
「何言ってんだよ。俺がいける訳ないだろ!」
妹
「早く行けって!待たせるな!」
何故か飛び蹴りを喰らわされ、俺は転げてしまった。
意味が分からなかったが、もう一度、扉を開け、先生に事情説明すると、
先生
「そうなんだ。お兄ちゃんでいいよ。遊びに行きましょ!」
先生は満面の笑みだった。
俺はまだ、自分が信じられないまま、先生と一緒に動物園に行く事になった。
これは、夢に違いないと疑うしかなかったが、段々とこれは現実なんだと認識し、先生の顔をまともに見れるようになった。
先生
「動物って可愛いよね!目が純粋でキラキラしてるよ!」
子供の様に、はしゃぐ先生がとても可愛いかった。
何故か、先生は弁当を作っていて、一つは大きなお弁当箱で、
先生
「これは、お兄ちゃんのね!いっぱい食べて。」
こんな楽しい日も次第に終わりが近づき、今日でお別れなんだと思ったら急に寂しくなってきた。
俺
「先生。ありがとね。妹の代役だったけど、凄く楽しかったよ。」
夕日が落ちる間際、ベンチに座り俺から話を切り出した。
先生
「あたしも。凄く楽しかった。ううん。代役じゃないよ。」
少しの間お互い沈黙が続いたが、俺は後悔しない様に先生に告白した。俺
「先生。俺、先生の事、夏が終わってからもずっと好きでした。先生と付き合いたいです。今日みたいな日をいっぱい過ごしたいです。」
言ってしまった。
先生
「ダメだよ。お兄ちゃん、来年受験だから、勉強の妨げになっちゃいけないし..」
俺
「妨げになんかならないよ。むしろ先生いなけれゃ、受験どころじゃないし..あっ、だったら、先生とまた一緒に勉強..」
俺が話してる途中、先生は急に泣き出した。
先生
「..すごく嬉しい。あたしも、あの時看病されてから、ずっと気になってて、あんなに優しくされた事なかったから..でも、ホントにあたしでいいの?」
俺
「はい!先生、大好きです!」
先生
「もう、先生って言うの止めてよぉ。」
泣き笑いする彼女はとても、可愛かった。
俺
「じゃ、俺の事、お兄ちゃんって言うのも止めてよぉ。」
先生
「好きなくせにっ!」
ツンツンと脇腹をつつかれ、俺がよろけた瞬間、
彼女は俺に軽くキスをした。
先生
「弱味に漬け込んでの、お返しです!」
新学期が始まり高3になった俺は先生、いや彼女のマンションに行って、勉強を教えてもらってる。
最近、就職活動を始めた彼女は、リクルートスーツを着ている事がよくあるのだけど、これで、勉強を教わってる時は、かなりHな気分になる。
いつまで我慢出来るのやら..。