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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

日陰者の冒険

作者: 石川 瑠佳

 江戸が政の中心になって二百二十年ぐらい経っているそうだ。世の中は飢饉に見舞われていた。


 追いかける。どこまでも。トカゲ人間は出鱈目な重心をかけ、臨戦態勢で走る。

 山の中、木から木へ跳び移るよりも速く俺は走っていた。隠れるなどしてないが、忍びよりも俺の方が忍べているのでは。他の人よりも目立つことをしているのに日の目とは縁がない。勝手にそういう自負が、もはや出ていた。

 太陽が目を射す。

「クッ…」

 一瞬の隙を突き、トカゲ人間は攻撃に転化をした。本格的な戦闘が開始をした。トカゲ人間は殴ってくると見せかけて、頭から口の中へ……。

 歯が首へ。俺は手刀でのどを突く。

「グヘッ…」

 トカゲ人間は苦しみを紛らわしながら言う。

「結構、エグいことしてくれんじゃねーか」

「自分はかまわないってのか?」首を喰いチギろうとしたヤツに言われたくはない。

 爪で引っかいてきた。

 俺は、手に鉄の防御板を、巻き付けていたので受けた。

「しつこくないかお前?」

「お前だよ」

 足に付けた、鉄製の防御板の窪みの可動のとってをつかみ、まっすぐの拳じゃない撃ち。

「ギャッ…こんなの付けて走ってんじゃねー」

「あいにくこっちは、ものすごく健脚なんだ」

 昔はオンブ屋さんをやったのだった。人を背負ってどこにだって行く自分で作って考えた仕事だ。

 米俵を遠くの村に届けたこともあった。最終的に元気過ぎて、大人三人分以上の体重を持った力士を背負い、何十里も先の海まで行ったのは俺の密かな自慢だった。

 痩せ型的なのに猪二頭分の勢いで、動くことができる人間だと、言われていた。

 ただ、謎なよろずの請け負い屋の限定的な仕事と世間から受け取られていたので地味で、あった。

 結局は、よろずの請け負い屋をやっているのだが。

金次(きんじ)は後少し手先の器用さがあったら金を稼ぐのが楽だっただろう」と、少し残念さをにじませて父に昔言われたことがあった。その、父は今は亡くなったが。喧嘩もちょっとは、あったが仲のいい親子ではあった。

 実際、不器用さのある人間だなと自分でも、思う。

 さらに、反対の脚ので、真上からベッシャー―ッ。

「もう、飛脚の仕事でもやれよ…」

「他人の仕事をグチャグチャと、そんなのが人を喰ったりするトカゲの態度か」

 片手で押さえて、もう一つの手で真上からさらにグッシャッ。トカゲ人間は、絶命をした。

 俺は小刀を使ってしっぽをスッパリと切りさばいた。小さな女の子が出てきた。

 女の子は眠ってしまっている。

「スーッ、スーッ」

 女の子の年齢は五つ、六つぐらいの感じだ。

 俺はトカゲ男を見る。闘いを仕掛けるにあたって情報は調べておいた。コイツは死んだ男性の、邪悪ななれの果て。

 元は盗賊であった。仲間に、分け前を奪いとられて殺されたのだった。

 男性の悪霊はまず近くにいた、蜥蜴の身体を奪いとった。そして、命をつなぐため子どもを喰らっていたのだ。生きたまましっぽに置いておいたのは命を吸っていざというとき、強い身体へ力を加え与えるためだ。

 じゃなければ歯型なんてつけられたくなかったよ。

 だが、それにしても、やっぱり飢饉のときは化け物、妖怪の類が増えているような気がする。

 俺は女の子を抱きかかえたまま、来た道を戻る。


 町の入口。客の呼び入れをしている。

「宿をとらんか?」

 宿を決めた。女の子の具合の悪そうなのを見て、宿屋の女将さんが、心配をした。

「アラ、この子だいぶ身体が冷たいね。大丈夫かい?」

「少し冬眠のような状態だったんで」

 人のよさそうな女将さんではないか、と俺は少し考えた。あの、提案をできるだろうか?

 女の子の調子が悪そうなので二日程、泊まって過ごした。女将さんに思いきって相談をする。

「すみませんが、この女の子を養子にしてもらえませんか?」

 断られる確率の方が高いと、思った。しかし、

「うちには子どもがいないから、こんなに可愛い子ならかまわないけど…」

「おとっつあん」

 丁度、眠っていた女の子が小さく、声を出した。夢の中で昔のことを思い出しているのだろう、改めて聞いた話でも、やはり両親は亡くなっていた。

「あんた、おとっつあんかい。一緒にいてあげなよ」

 俺は十九だから本当ならすごく早い時の子、だな。結婚もまだ。今、想い人もいない訳なのだが。

 もしかしたらという時もあるから、女将さんは一応言っているはずだ。

 一瞬、可愛いからいても、いいかと思う部分もあったから、女将さんにやや重い話をできる範囲でずっとして、[一人で行きな]と言われるために話すことにした。この旅は小さな子どもには危険過ぎる。

「違う、俺は忍者を知って進むことで生きていく男だ。ちょっとしか話せないけど、この飢饉の世に、食隠しの忍びが潜んでいる。俺が怪しい者を倒す。すると、隠しきれないでこの世に何かが出る。といった寸法、さ」

「じゃあ、あんたが頑張れば飢饉がわずかでも良い方向へいくって言うのかい」

 半信半疑で女将は聞いた。

「多分ではあるんだけど」

 はっきり言えないのが俺の弱いところだ。

「あんた、なら頑張らなくちゃいけない。この子はちゃんとあずかっておくから。将来、あんたの子にしたら喜ぶ」

「そうだろうか、な?」

 女将さんがポツリと呟いた。

「…妻に、したりして」

「なんで、えっ?」

 俺はどぎまぎした。想像つかないぞ。女将さんの変な勘は、当たるのか?

 しかし、こんなことを言って、おかしな方向へ行かないように釘をさしている可能性もありそうな気がした。

 さて、ここらへんは、巻き込みたくないので女将さんには話さないが俺は元々は京の都辺りにいたのである。そこで、こっそり権力を持つ優しい役人さんに頼まれてしまった。資金提供をするから、あの一団のできるだけ怪しいところを倒す手伝いをしてくれないかと。

 飢饉の中、徳川家の家臣の中心近くへといる欲深い権力者と強いつながりを持って、民が飢えてもお金儲けを大事にする集団がいる。結局、いい権力者もいれば、悪い権力者も潜んでいたりして困る。

 複雑な世の中だと思う。

 しかも、そいつを倒すというのは徳川家が隠し持っている望みでもあったりするのだ。

 つまり食隠しの忍者たちがいる。そいつらが食物を隠すために他の忍びたちや、化け物たちを使って、世を荒らして富を蓄える、悪いヤツラなのだ。(あの、トカゲ男もその一味で悪いヤツだったから倒したのであった)

 たとえ権力者の天下泰平に穴を開けることになったって、酷いことをしている欲を悪を流していって、本当に生きている力を見つけていきたい。その中で、自信が付けば自分に合った仕事で働いて、生きていける気がしている。

 日陰の色落としって俺自身が思えるまでまずは、冒険を続けて頑張って行こう。

 俺は、女将さんに笑って話す。

「女将さん。俺はただの冒険好きな野郎って訳だ」


                   終


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