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第四十話 召喚

先週分の予約を忘れていて一週放置してしまいました。

ゆっくりですが話は進んでいく予定ですので少々お待ちください。


 僕は悩んでいた。


 神遺物が移動している。

 ルミナの話があり、移動している神遺物の所在を突き止めるのが、今回の僕の目的だった。


 そんな時に見つけた護衛依頼。ミンロジカル教の女神官イーナさんをアキュニスの首都まで送り届けるというもの。僕はこの一団が神遺物を輸送しているのではないかと考え、この依頼を受けることにした。


 狙いは合っていた。

 神遺物は見つかった。


 ただその場所が問題だ。

 倒れているイーナさんの腹部で、肉体に重なり合うようにして存在する紙の束のようなもの。

 それがおそらく神遺物。


 僕はおそるおそるルミナに報告する。


『ルミナ……見つけたよ』


『大丈夫です。こちらでも見てます。マコトさんがめちゃくちゃ動揺してるのが念話で伝わってくるんですもの。なにかなーと思ったら、これですよ。人間と神遺物を同化させるなんてえっぐいことしますねー。道理でなかなか神遺物の気配をたどれないと思ったんですよ。たとえるなら部屋で蚊の羽音だけ聞こえるんですけど、どこにいるのかわからないみたいな。あれってイヤですよねー』


 戸惑う心にルミナのいつもの口調が心地よい。ルミナが僕の動揺を察して長めに話しかけてくれているんだろうと思う。


『ありがとうルミナ。落ち着いた。それでこれをどう思う』


『もー、マコトさんはわたしがついてないとダメダメなんですからー、お察しの通り神遺物です。光る紙の束が本体です。その周囲に書かれている魔術文字は四種類、人の境界を一時的にあやふやにして他と同化させるもの、魔力を隠ぺいするもの、多量の魔力を蓄積するもの、そして時がくれば特定の呪文が発動するもの、この四つです』

 

 ルミナの見解、そして僕の予想が正しければこれは大変な事態だ。


『神の召喚ができるなら普通に召喚すればいい。それをしないということは正常な召喚をするつもりがないってことだ。そして、わざわざアキュニス首都に送りこんでから呪文を発動させようとしていることを考えれば――』


 ライツガルズ研究所時代にマティス先輩から教えてもらった召喚の豆知識。

 神は強大な力を持つ。そのため神の召喚の失敗時は、あたり一面が焼野原になることも珍しくない。それを敵地で意図的に起こそうとした事例が過去にもあったと聞いた。


『召喚失敗によるアキュニス首都壊滅が狙い、神の召喚の軍事利用ってことか……』


『もー!今の人たちは神様のことをなんだと思ってるんですかねー!都合の良い道具扱いしすぎだと思うんですけど!』


『人の命の扱いも軽すぎる!これじゃイーナさんは人間爆弾じゃないか』


『わたしのじゃないとはいえ、神遺物を悪用する人は許しておけません!』


『あぁ、僕が言えるセリフじゃないかもだけど絶対に一泡ふかせてやる』


 こんな策を考えたのはガルジェクト帝国の上層部、あるいは帝国そのものか。貴重な神遺物を道具に使うなんて個人レベルではありえない。真相については後々調べるが、今はまずイーナさんを助けなくてはいけない。


 僕はルミナに尋ねる。


『この召喚を止めるにはどうすればいい、ルミナ』


 ルミナは若干トーンを落とした口調で答える。


『この神官さんの体の中は、召喚に使う大量の魔力と神遺物が埋め込まれた、とてもデリケートな状態です。マコトさんの例えにも出ましたが、今にも爆発する寸前の爆弾のようなものです。今の状態では神遺物を抜き出すのも、魔力を抜き出すのも、難易度が高い上に膨大な負荷が体にかかります。成功してもおそらく神官さんは生きていないでしょう』


『ルミナでも難しいの?』


『……わたしを信頼してくれるのは嬉しいですけど、神の力は本来人間一人を対象にするようなものじゃありません。負荷を与えない繊細な作業はより難しくなっちゃいます。召喚時に町一つを破壊することはできても、小石一つだけを狙って破壊することが難しいのと同じことです』


『あぁ、それはよくわかる。すると、とれる手段は相当に限られているように思える』


『はい。わたしを召喚して抑え込む場合も、二つの神の力の衝突に神官さんの体が持ちません。ですから本質的に召喚を止めることはできません。神官さんを死なせずに助ける手段は一つだけです』


 ルミナの言葉に嫌な予感がした。

 大変なことになるのが目に見えた。

 だが、ここで逃げることはできない。


 僕は勇者召喚の材料にされ運命を狂わされた人間だ。

 それが許せないと抗って今まで歩んできた。


 だから神の召喚失敗の材料にされるイーナさんを見捨てたら、

 僕の芯となる部分が失われてしまう。


『教えてルミナ、彼女を救うための方法を』


『現在、神遺物にも魔力にも触れられないのは、彼女の体が臨界点に近い状態にあるからです。ですから、魔力が正当な手段で消費された後であれば神遺物を抜き出すことが可能です。ですが今の呪文では召喚失敗となり彼女もろともあたり一面が吹き飛びます。つまり』


 ルミナは一度言葉を切り、真剣な口調でこう言った。


『――誤った召喚が行われるより先に、マコトさんが正しい呪文で神の召喚を行ってください』


 それはルミナ召喚以来の大難題だった。


読んでいただきありがとうございます。


ちょっとでも面白いと思って頂けるのでしたら、下にある☆の評価や感想、ブックマークなどいただけると自信を持って書き進めることができ、より続きの話が書きやすくなるので、どうかよろしくお願いします。

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