第十八話 事実確認 関係確認
「ラスタリアの領主問題については、マコトさんが聞いた通りの内容で間違いありません。一年前のラクルス・バートデルトの病没にあわせて、弟のコンクス・バートデルトがレンリア・バートデルトから領主の座を奪った形になります」
「ありがとうアーニャさん。それで今の領主はどうなんでしょうか?」
「良くないですね。手腕はラクルス・バートデルトに遠く及びません。街の発展には無関心、贅沢をして日々を過ごしています。ただ欲望のために街を食い潰す……というほど愚かではないようで、運営は部下のスミカ・ミドコロに任せています」
「その名前はレンリアから聞きました。領主に戻るためにまずはスミカを取り戻したい、って言ってました」
「スミカ・ミドコロは、もともとレンリア・バートデルトの侍女です。ラクルス・バートデルトがどこからか拾ってきた孤児ですが娘の右腕にするため、あらゆる教育を施したという話です。今のラスタリアが現状維持できているのは彼女の力によるものですね。レンリア・バートデルトが取り戻したがるのも当然だと思います」
「うん、レンリアから聞いた情報ともズレてない。ありがとうアーニャさん。助かりました」
イースレインに戻り、今はアーニャさんと情報の突き合わせを行っている最中である。なにしろ貴族の後継者問題という大事だ。関わるにしても正確な情報を得てからにしておきたかった。
「そのスミカさんがレンリアについてくれるかどうかが問題ですね……」
「レンリア・バートデルトとスミカ・ミドコロは主従の関係でしたが、周囲の人間からは姉妹のように仲が良かった、という話を聞きます。ですがスミカ・ミドコロが、コンクス・バートデルト側についている理由がわからない以上、現時点では判断のしようがありませんね」
「なるほど」
僕は現在の情報を整理する。
実質、街の運営をしているのはスミカさん。だから彼女を取り戻せればそのまま街も領主の座も取り戻せる。ただ、それが上手くいくかというのが問題だ。
考えこむ僕をアーニャさんがじっと見ていた。
なんだかとても圧力を感じる。
「私はマコトさんにラスタリアのギルドでの情報収集をすすめただけなのですが……どうして領主問題に巻き込まれているのでしょうか?」
「そのへんは僕にもさっぱり」
どうしてかは、僕が聞きたいくらいである。
平々凡々に暮らしてきた僕が道を歩いているだけでトラブルが寄ってくるようになってしまった。今まで平穏だった分の揺り戻しが来ているのだろうか。
でも、巻き込まれてしまったものはしかたない。
何も知らないまま殺されそうになった研究所に比べれば、自分で選択できるだけずっといい。我ながら図太くなったなぁ、と思ってしまう。
「関わってしまった以上、僕はできることをします。目立たない生き方について相談しておいて、アーニャさんには申し訳ないです。でも力になってあげたいんです」
約束を守るために立ち上がった女の子。
その姿を見届けたい。そう思ったのだ。
「はぁ……マコトさんはそういう人ですよね。まだ短い付き合いですが、それはよくわかりました。ギルドは街の運営に不干渉です。ですが隣街の領主が変わる可能性も考えて準備をしておきます」
「ありがとうございます!」
「ただし、一つだけ約束してください」
「はい?」
「もし魔力のことがバレても私がフォローします。ですから私のところにちゃんともどってきてください。私は今までもこれからも、マコトさんの担当なんですからね」
「はい!」
「注意してください。お姉ちゃんを泣かせたら七代祟られるんですからねー!」
最初はギルド職員としての言葉で、最後はアーニャさん自身の言葉で、応援してくれることが嬉しくて、僕は満面の笑みで答えるのである。
「安心してください。弟は大好きなお姉ちゃんのところに戻ってくると、相場は決まってます。それじゃ、行ってきます!」
マコトが出ていった後の冒険者ギルド。
アーニャは隣の同僚につぶやく。
「男の子って、ズルいですよね……あんなに恥ずかしがって呼んでくれなかったのに、こんな時だけは大好きなお姉ちゃんって呼んでくれるんですから……もぅ……」
「しらんしごとしろ」
長い耳の先まで真っ赤なアーニャ。
アメをガリガリと噛み砕く同僚さん。
隣街の騒動をよそにイースレインは平和であった。
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どういう方向を重視していくか悩んでます!
もっと女の子とイチャイチャしろ!とかちゃんと無双しろ!とか
今までのノリで変えなくていい!でも一言でもいいので感想をいただけると助かります!