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第十四話 肩書は迷走中


 ルミナとの召喚契約の詳細を知ってから1ヶ月。


 僕は厳しい修行中だった。今までが不真面目だったわけじゃないけれど、明確なペナルティが課されれば危機感も変わる。

 

 毎日、ギルドに向かい魔物の素材を売り、山にこもって魔術の練習、アーニャさんにすすめられた動きが鈍いタイプの魔物を狩って宿屋に戻る。この繰り返しだった。

 

 今日も日課を終え、イースレインの町に戻る。

 その時、不意に声をかけられた。


「お前さんが、最近来た新人の冒険者か?」


 高齢の男性、冒険者だ。周囲のピリッとした雰囲気が教えてくれる。細い体格とわずかに漏れ出す魔力の気配から魔術師とわかる。僕は心の中で警戒しながら答えた。


「一応、僕は新人ですね。そちらが探してる人かはわかりませんが」


「変な気はまわさなくていいぞ。イースレインのギルドの新人はお前さん一人だ」


「でしたら何の用ですか?」


 老冒険者がわずかに動く。抜き身の刃のような気配を感じる。場の空気が張り詰めきった瞬間、男が口を開いた。


「お前さんはアーニャ嬢ちゃんとつきあっているのか!?」


 はい!?なんですか?

 ついに新人冒険者がシメられる展開が来たかと警戒していたらこれですよ?僕のシリアスな気持ちを返してほしい。


「ワシら隠居した冒険者達はな、あの子のことを孫娘のように愛でておる。それが最近は、お前さんにつきっきりだ。どんな男か見極めねばならん!どうやら魔術師らしいということで、ワシが代表としてやってきたというわけだ!」


「新人だからケア多めなだけかもしれませんよ」


「ただの新人にあそこまで砕けて話すものか!それにお前さんとアーニャ嬢ちゃんはデートまでしていただろうが!」


 ですよねー。デートじゃないけど通じないですよねー。


 それにアーニャさんの行動はギルド職員としては親身すぎるように思える。そりゃ、僕だって嬉しいですよ。アーニャさん美人さんだし、オフのふんわりお姉さんなギャップもいいし、おっぱいもとっても大きいし、好意を持たれていたらこの世の春だ。


 ただアーニャさんはどこか遠くを見ている時がある。誰かを僕に重ねているように感じられる。すべてを素直に受け入れて浮かれてはいけない。そんな風に思えるのだ。


 それに僕からすれば、この世界でやっていく上で大切にしたい協力者、それがアーニャさんだ。ルミナ同様、色恋で気まずくなったら生きる手段を失うことになる。


 命綱なら心も体もモノにしとけ?

 普通の高校生にジゴロみたいな行動はムリだって!

 なので僕は色恋沙汰に踏み込みづらいのである。

 

「というわけで、お前さんには力を見せてもらうぞ。そこでアーニャ嬢ちゃんにふさわしい男か見極めさせてもらう」


「拒否権は、なさそうですね。戦うんですか?」


「いいや、つまらんことで嬢ちゃんに嫌われても仕方ない。ここは紳士的にいこう──我が身に宿りし奔流よ。汝は撚り結びて高みを知る。其の威光は空を断ち切り茨を払う鎧となれ。『励魔の甲冑(ハイマギアーマー)』」


 老冒険者の体を球状の魔力が覆った。

 励魔の防御壁だ。輝きから高純度の励魔とわかる。

 一線を退いても一流の魔術師と魔力が物語っていた。

 

「こちらからは何もしない。ワシの防御を抜いてみせろ。抜けなくても将来の見込みがありそうであれば認めてやる」


「このまま帰ったらどうなります?」


「何もしないさ。嬢ちゃんに嫌われたくないからな。ただな、お前さんも冒険者なら、こういうことは向こうからいくらでもやってくる。そのことは覚えておいた方がいい」


「……僕が勝ったらどうしますか」


「かつてのA級冒険者、ザイル・キロワナの名にかけて何でも言うことを聞いてやる!」


「わかりました。やります」


 最初は上手く逃げる方法を考えていた。

 だが老冒険者、ザイルの言葉には心に触れるものがあった。

 冒険者をやる以上、いずれ人前でも戦わなくてはいけない。

 早いか遅いかの違いだ。


 それならまだ良心的な、アーニャさんのためと言いながら、どこか新人を導こうとしてくれるこの老冒険者で、慣れておいた方がずっといい。そう思えた。


 僕は体内の魔力をコントロールする。

 光輝くルミナの力。これを人前に出せば大騒ぎだ。

 だったらそのまま出さなければいい。


 この方法は銀の小羽根亭でご飯を食べてる時に閃いた。

 1ヶ月ずっと練習し続けてきた魔術でもある。


 ディバインアローの工程と並行して、自分自身の魔力を呼び出す。強大すぎる魔力と弱すぎる魔力。今にも崩れそうなバランスを維持して、神の魔力を自分の魔力でコーティングする。イメージするのはエビフライ。


「我が身に宿りし奔流よ。汝が纏うは一時の狩衣。掌中に集いて矢束を成せ。『偽装の矢(フェイクアロー)


 僕の魔力で表面を覆われた矢は励魔並みの輝き。

 だがその芯に詰まっているのは神の魔力だ。


 偽装の矢は僕の手を離れると同時に一直線。

 着弾してザイルの障壁に抵抗されるもわずか、瞬く間に励魔の甲冑を打ち砕いた。

 魔力の破片がきらきら舞い散る中、偽装の矢はザイルの肩をかすめて空へと消えてゆく。


「な……なんだと……励魔の矢(ハイマギアロー)であの威力だと……特別に貫通力を上げる術式でも組んでおるのか」


 よし上手くいった。

 ディバインアローより威力は落ちているが、見映えを励魔の矢にできた。これなら魔術的に工夫をしている方向で勘ぐられることはあっても、魔力が別物とは思われない。魔力がステータスなこの世界では、下位魔力への偽装という発想がないはずだ。


「僕の勝ちですね。まず一つ目のお願いは、僕の魔術について他言無用でお願いします」


「あぁ、切り札は隠しておくのが当たり前だ。わかった。周囲に強かったと伝えるが、詳細は話さない。それにしても口止めならワシを討った方が早いぞ。防御を抜かれた時点で、お前さんの勝ちなんだから」


「そんな風に助言をくれるザイルさんが必要なんです。二つ目のお願いです。新人冒険者の僕がいっぱしの冒険者になるまで、経験豊富な冒険者からのアドバイスをお願いします」


「──はは、負けた。負けた。魔術でも器でもお前さんの勝ちだ。お願いがなくても協力させてくれ。ワシもお前さんがどこまで行けるのか見てみたくなった」


 ザイルさんが僕の肩をバシバシ叩く。


「これでもワシは鉄壁の防壁と広範囲魔術の併用で『要塞』ザイル・キロワナと呼ばれていたが、まだまだ甘かった。これほど若くて優秀な魔術師がでてくるとはな!」


 申し訳ないけど、それは違うんです。

 ズルで勝っただけで僕はちゃんとした魔術師じゃない。

 一応は召喚術師枠だけど、存在自体がイリーガルだ。


 召喚術師でもない魔術師でもない

 たまたま光の聖典、別名ルミナの日記が日本語だったから生き残れただけ、

 ただの……、ただの……、日記、術師?

 なんじゃそりゃ、何を言ってるんだ僕は


 ようやく人前で戦えるようになった僕だったが

 しっくりこない肩書きに首を傾げるのである。



読んでいただきありがとうございます。

下にある☆の評価や感想、ブックマークなどいただけると

より続きの話が出やすくなるのでどうかよろしくお願いします。


どういう方向を重視していくか悩んでます!

もっと女の子とイチャイチャしろ!とかちゃんと無双しろ!とか

今までのノリで変えなくていい!でも一言でもいいので感想をいただけると助かります!

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