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第6話

「何かが変だ」


シャンブルタ宮殿へと突入したカーパーが疑問を発した。


帝都島根に入るまでは蟻のように湧いていた敵が宮殿まで1人としていない。それどころか、帝都そのものが人の気配の一切無いゴーストタウンと化している。


「罠……だよな」


アニスとリデルに問いかけたが、反応が無い。

振り返ると後方にいたアニスとリデルもいつの間にかいなくなっていた。


「くそ!あいつらどこいったんだ!」


眼前で生殖行為が行われなくなったことで、頭上の隆々としていた陰茎が半分程の大きさに縮小し、右腕と一体化したグングニルの力が弱まっているのを感じた。



誰一人として遭遇しないまま、宮殿最奥の皇帝の間に通ずる扉の前に立つと、カーパーを迎え入れるように扉が開いた。



「わあああ、こんなとこまで来れるやつおったんや。報告にあった神槍グングニルっていうのはほんまやったみたいやなぁ」


玉座には一人の男。


「お前がタムリエル三世か」


「そういうあんたさんはグングニル持ってはるし、カーパー君ってことでええんかな」


「かの世界終身皇帝に名前を読んでもらえるなんて光栄だな」


威勢良く啖呵を切るが、頭上のカウパーはどんどん萎えていく。


「グングニルってな、欲望を具現化させて始めてその力を発揮出来る神槍やねん。だから、欲望の源が無かったらただの槍と同じ。逆に、わしの持っとるダラマンジャイホイは欲望を吸い取る力を持っててな、捧げた贄の数だけ欲望を貯蓄出来る神盾なんやわ」


「はっ!訳分かんねえことばっか言ってんな!俺の仲間をどこにやった!」


「ここまで誰にも会わんかったやろ。グングニル持ってるあんたさん以外全員、ダラマンジャイホイの贄になってもうたよ。贄がおればおるほど、強い欲望叶えられるからな。非効率な会議のやり方は、こういう非常時に備えてたって訳。」


つい数時間前まで北九州の反乱を抑えるために議論していた1000人以上いた人々、いや、帝都島根中の人々は神盾ダラマンジャイホイに捧げられたのだ。



「はっ!いい加減なこ「それ、醜いなぁ」


カーパー頭上の意思を持った陰茎、カウパーの言葉を遮った直後、それは千切れた。



ぐああああああああ


カウパーの悲痛な断末魔が宮殿内に響き渡る。



「こんなんに欲望ストック使ってまうんめっちゃ勿体無いけど、グングニルの分身が相手やったらしゃあないわなぁ」


頭上の陰茎が千切られ、グングニルはその力を着実に弱らせていく。


「ぐああああああああああ」


「人の欲望ってのは厄介でなぁ。一つ叶ったら次から次にどんどん溢れてくるんやわ。あんたさんがわしを倒したいと思えば思うほどその力をダラマンジャイホイが吸い取んねん。」


そう呟くと、今度は右手と一体化していたグングニルが折れた。




----------------

「カーパー、カーパー、聞こえますか。起きてください」


「ん、んん、ここは……」


「久しぶりですね、カーパー。ここは、あなたとグングニルの精神世界です」


「あ、あなたは……」


「私はアカシェトス=グングニル。あなたの右腕と同化していましたが、神盾の能力によって、解除されてしまいました」


「そうだったのか。どうすればあいつを倒せる」


「目の前のタムリエル。いや、アカシェトス=ダラマンジャイホイを葬ることだけを考えてください。あなたの欲望を満たすことでグングニルはその真の力を発揮します。」

----------------



「カーパー・デ・アフトクラトラス……直訳したら<河童の皇帝>か。河童の皿が角に変体してエルフになったってのはほんまやってんな」



エルフの祖先は河童という事実がタムリエル三世の知識の欲望を一つ満たし、ダラマンジャイホイに貯蓄される。



「20年前に神槍グングニルを奮う河童の王がわしの魂を貫くって神託があった時から、ずーっと君のこと待ってたんやけどなぁ。期待外れもええとこや」



瞬間、カーパーが光に包まれる。


「お、ええやん」


「よお、あんたを葬り去りに地獄から戻ってきたぜ」


グングニルを左手に携え、タムリエル三世へと猛進する。


「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」




「河童風情がよく喋りよるわ」


ダラマンジャイホイを掲げる。

が、何も起こらない。


「何っ!?」



砕けるダラマンジャイホイ。グングニルによってブーストされたカーパーの大きすぎる欲望、タムリエルを葬り去るという欲望によって成せた究極奥義。


「俺は全ての欲望をグングニルに捧げた。その力は貴様の欲望を凌駕する!」



「ば、馬鹿な!!??こ、こんなことが、こんなことがあってなるものかああああああ」


ぐわあああああああああああ



砕けたダラマンジャイホイは溜め込んでいた全ての欲望を吐き出し、タムリエル三世はグングニルに貫かれた。



「さあ、カーパーよ、グングニルで全ての欲望を貫くのです!!」


「カーはっはっハッハッハ、この瞬間を俺は待ちわびていた!!」


「カーパー!?」


狼狽えるグングニル


「知ってたか、グングニル!お前とダラマンジャイホイはアカシェトスの寄り代でしかないってことを!そして、グングニルが欲望を具現化させる神槍だってことを!!」


カーパーが言い終わると、右腕が光に包まれ、砕けたはずのダラマンジャイホイがカーパーの欲望によって同化する。


左手に持っていたグングニルも同化し、ここに新生アカシェトスが降臨した。





200年後……



「あと、一万だけ。いや、千円入れれば当たるんだ。当たれば、負けを全部取り戻せるんだ」


こんな自問自答を幾度となく繰り返し、パチンコ屋の消費者金融で錬金したお金が底を尽きた。


こんなはずじゃなかった。新生アカシェトスが降臨し、その種族であったエルフが世界を牛耳っていた。人間の王であったタムリエル三世を討ち取ってからというものエルフが人間族を支配していた。


高尚な人間の血をひくこの俺が、エルフが作った遊技台如きに人生を狂わされてしまっている。


「兄ちゃん、金欲しくないか」


声のするほうに声をやると小汚いホームレスのような見た目をした男が笑顔を貼り付けてこちらを見ていた。


缶切り缶詰 2439文字


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