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第4話

「もうちょい大人しゅうしてくれたら腕の一本くらいで済ましたるでええええええ!」


ヨイーダが老人とは思えない動きでアニスとカーパーに襲いかかる。風の加護でも受けているのだろう。


「皇帝陛下に兄ちゃんの身柄差し出したらワシもようやくこんな汚いとこから出れるんや!堪忍してや!


シエラ クスィフォス!!」


「伏せて!」


アニスの怒号に咄嗟に身をかがめた瞬間、周囲の木々が切り倒された。1秒でも遅れていたら真っ二つになっていただろう。

状況は整理できていないがどうやら何か大変な事に巻き込まれているのだという事だけは分かった。


「あんた達の好きにはさせないわ!


エクリクシ イフェスティーウ!!」


ヨイーダに向けてアニスが呪文を放つ。

その直後目の前が炎と煙に包まれあたり一面は火の海と化した。

奴の生死は定かではないがこの様子ではただでは済まないだろう。


派手な戦いを繰り広げたせいだろう。

遠くでサイレンの音が鳴り響いている。


「ここにいたら見つかるわ。近くまで私の仲間が来てるから走るわよ!」


「一体なにがどうなってるんだよ!わけがわかんねえよ!」


「死にたくないならついてきなさい。ここにいたら死ぬ事くらいわかるでしょ」


俺は【死】という言葉を突き出され萎縮してしまい、走り始めるアニスの背中を追いかけることしかできなかった。


しばらく走り続けているとアニスの仲間が魔導四輪駆動車で迎えに来ていた。

一安心したからだろうか、食肉工場で行っていたことや自分が食べたものを思い出して思わず吐き出してしまった。


「カーパー罪悪感を持つなとは言わないけど憎むべきはあの施設を作り出した悪魔のような皇帝よ。悪いと思うならあいつを倒す為に私たちに協力して」


「俺みたいな奴にできることがあるのか…」


「あなたにしかできないことよ」


「それってどういう」


言い切る前に魔導車が目的地に着いたようだ。

武装したダークエルフが周囲を警戒しながら俺たちを出迎えた。

どうやらアニスはこいつらの中でもかなりの地位にいるようで皆が代わる代わる挨拶していく。


「アニス、こいつが例の男か」


武装集団の中からダークエルフというよりはオーク族に近い体躯を持つ男が現れアニスに尋ねた。


「ええ、これから団長に報告しにいくわ。

私たちの200年越しの悲願達成も目前よ」


なんの話をしているのか皆目見当もつかない。

俺はアニスの後ろについていきながら何故か遠い昔の事を思い出した。




綺麗な草原の上で俺は優しく微笑む女性と過ごしていた。彼女は俺の頭を撫でながら優しく話しかけている。


「しばらくこの首飾りをつけていて。あなたが大きくなって時がきたら外して誰かの為に立ち上がるの。それまではこれがあなたを守ってくれる」


「それってどういうことなの?」


「今は難しいけれどきっとその時がきたらわかるわ」




「…ーパー…カーパー!大丈夫?この方がリデル団長よ」


俺の名を呼ぶアニスの声で一気に現実へと引き戻され、気がつくと目の前に1人のダークエルフが立っていた。

その男は細身ではあるが、目力が強くなんとも言えない迫力がある。


リデル団長と呼ばれるその男は俺の首飾りをじっと見つめながら何やら呟いている。

あの女性の名前も、いつ貰ったのかも思い出せないがなんとなく外すべきではない気がして身に付けていた。


「カーパー・デ・アフトクラトラス、この首飾りはもう必要ないだろう」


そいつが首飾りに手をかざした瞬間辺りは光に包まれ一本の槍が現れていた。

荘厳な雰囲気を放つその槍の名前を俺は何故だか知っていた。


「神槍グングニル」


「記憶を取り戻しつつあるかカーパー、その槍は神アカシェトスが作りし神槍グングニル。この世で唯一タムリエル三世を打ち倒すことのできる武器だ」


「記憶を取り戻す…」


そう呟いた瞬間頭が割れるような頭痛が襲いかかり俺は意識を失った。

目が覚めたときにはアニスが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。どうやらこれまでの事は夢ではなかったようだ。


「カーパー、あなた大丈夫?あれから3日も寝込んでいたのよ」


俺はすべての記憶を取り戻した。

タムリエル三世は俺の手で止めなければいけない。

それこそが遠い記憶の中にいる女性が願った事であり、俺の使命だったのだ。


「大丈夫だ。タムリエル三世を倒す決心がついたよ」


-カーパーの参戦を契機に反乱軍は勢いをつけ帝都への進軍を開始した-




同時刻 大阪都 チェンロー邸


「あの男が見つかったという事は反乱軍が一気に動き出す可能性がある。ツランヌスお前は計画通り我が軍をここへ集結させるのだ」


「お任せください。いよいよカイヨ・チェンロー皇帝陛下の時代がやってくるのですね」


「まだだ、最後まで気を抜くんじゃない。皇帝陛下とてそう甘くはあるまい」


密かに帝都を離れたカイヨチェンロー中央統合軍集団総参謀長は自らの野心のため秘密裏に動いていた。

反乱軍に乗じて皇帝タムリエル三世を討ち自らが次期皇帝の座につくべく暗躍している。


「ふふふ、低俗なダークエルフ諸共帝都を火の海にしてやろうじゃないか」



田中義秀(2031文字)

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