もふもふ秋田犬 マラソン編
『日本海側を中心に大雪が……』
シロクマがマイクを片手にニュースキャスターとして働いている。こんな時、奴は大活躍だろう。まさに本領発揮だ。日本の雪など北極に比べれば大した事は無さそうだけども。
コタツに潜りながらミカンを皮を剥き、そのまま丸々口に頬張る。
むむ、このミカン……甘いでござる。流石熊本在住の従姉から頂いたミカンだ。
「フンッ」
そんな私を見て、愛犬フワワが羨ましそうに見つめてくる。
むむ、フワワもみかん……食べたいでござるか?
「ワフッ」
「ふむ。ならば私と勝負でござるよ。勝つことが出来たらミカンを譲渡するでござる」
まあ、そんなにケチる事もないのだが。
何せダンボール箱いっぱいにミカンが送られてきたのだ。近所やバイト先にも配ったが、一向に数は減らない。しかしフワワにオヤツを与える時、私は心を鬼にする。簡単にオヤツにありつけると思ったら大間違いだぜ! と。
要はヒマなだけなのだが。
「ではフワワ。にらめっこで勝負でござる」
「ワフッ!」
私の意図を理解したのか、眼前に迫ってくるフワワ。
近い……っていうか近い! こ、この犬……ガチで私に勝負を挑んできている!
犬に睨めっこで負けるわけにはイカン……!
「ではフワワ……笑っちゃだーめよ、あっぷっぷ!」
「ゥー……ワフ……」
お互いの顔を睨み合う私とフワワ。
フワワは私の目をまっすぐに見つめてくる。何て奴だ。目を逸らそうとしない。そんなにミカンが食べたいのか。別にこんな事しなくてもあげるのに!
いや、勝負だのなんだの言いだしたのは私か。
「……ん……っ」
ヤバイ……鼻に……フワワの毛がムズムズと……。
あぁっ……クシャミが……クシャミが出そうで……
「ブシュッ!」
しかしクシャミをしたのはフワワの方。
私の顔は見事に犬の唾液まみれにされ、一瞬だけ無我の境地へと……
「な、なにするでござるか! うぅ、ヨダレまみれ……」
「ワフっ」
「ミカンをよこせと? 人の顔をドロドロにしておいて良く言うでござる。お仕置きとして……モフモフの刑だー!」
フワワを撫でまわしながら押し倒す私!
ウフフ、ここか? ここがええのんか? フワワなんて……私にもみくちゃにされてしまえばいい!
「こんばんはーっ」
その時、家の玄関が開く音と共に聞こえてくる挨拶。
むむ、この声は……隣の佐吉さんか。ちなみに私が住まうこの建物はボロ長屋。佐吉さんはその長屋に住まう住民の一人だ。ボロいがそれなりに部屋は広く、なにより家賃が安い。光熱費込みで月一万。風呂は近所の銭湯に行かねばならぬが。
そのままフワワと共に玄関へと向かうと、そこに居たのはやはり佐吉さん。
時代劇に出てくる侍のように、まげを結っている。しかもこんなに寒いのに佐吉さんはTシャツ一枚という出で立ち。いつかの親子が思いだされる。
「どうしたでござる? 佐吉さん」
「君こそどうしたの、その顔……なんか付いてるよ」
うっ……フワワのヨダレがまだ……。
急いで洗面所へと向かい顔を洗って……再び玄関へと戻ってくる私。
その間、佐吉さんとフワワは楽しそうにしゃれ合っていた。フワワが佐吉さんを押し倒し、顔をペロペロ舐めまくっている。
「う、ウワアァァァー! フワワちゃんタンマ! 顔中ヨダレまみれに……」
ぁ、私と同じ目に遭ってる。まあ私はクシャミをぶっかけられたんだが。
「ところで佐吉さん、本当に何の用でござる? 仮にもここは女子大生が住まう聖域。何の用事もなく来たのなら、金銭が発生するでござるよ」
「フフゥ……手厳しい……。用事はあるよ。今度マラソン大会あるから……君も参加してくれない? 元陸上部でしょう?」
言いつつ何やらチラシを渡してくる佐吉さん。
むむぅ、マラソン大会……とな? このクソ寒いのに……
「ちょっと無理でござるよ。私はコタツでヌクヌクしながらミカンを食べるのに忙しいゆえ……」
「無茶苦茶暇そうじゃない。じゃあよろしくね。ちなみに賞品も出るよ。一位には温泉旅行の旅をペアでご招待……」
ふむ……温泉旅行……。
しかし旅行に行くとなるとフワワを預けなければならない。佐吉さん預かってくれるん?
「一位取るの前提なんだね……まあ、もし本当に一位になったら別にいいよ。というか俺とペアで行ってあげても……」
「お断りでござる」
一刀両断で断る私の前で項垂れる佐吉さん。そんな佐吉さんを慰めるように、フワワは佐吉さんの背へと飛び乗りモフモフ・ワールドへといざなう。
「と、とりあえずマラソン大会出てくれるって事でいいんだよね。出場してくれる人……年々減ってて困ってたんだ」
「まあ分かったでござるよ。ちなみにハーフマラソンでござるか?」
「いやいや、大半老人とチビっ子だから」
ふむ、という事は大した事ない距離でござるな。
「勿論フルマラソンだよ」
「老人とチビっ子……どうするつもりでござるか」
※
そんなこんなでマラソン大会当日……。
私は気合の入ったジャージ姿で会場に向かうと、そこには佐吉さんの言った通りチビっ子と老人が集まっていた。大体五十人前後だろうか。やはり小さな町のマラソン大会なだけに出場者はそこまで居ないようだ。というか本当にフルマラソンなんだろうか。完走できる人間がこの中に何人いるのか。
『えー……テステス……マイクテル……』
町長さんがマイクを握りマイクテス。というかマイクTELってなんだ。作者が間違えて書いて『ま、いいか……』と思ったに違いない。
『皆様、おはようございますー。今年もやってきました、ウキウキワクワクマラソン大会』
そんな名称だったのか。ウキウキワクワクって……。
『このクソ寒い中、マラソンなんて何を考えているんだ……と皆様は思っているに違いありません』
おい、ちょっと待て。
町長が言っていい言葉か、それ。
というかそんな事思ってたら出場なんぞせんわ。私は思ってるけども。
『しかし寒い中走るって……なんか体に良さそうだから走りましょう。ちなみに今年の景品は結構豪華です。一位は豪華温泉旅行をペアでご招待……二位はニンテ〇ドースイッチ……』
何ぃ!!
二位! 二位を目指そう! なんか俄然やる気出てきた!
ライバル達はチビっ子と老人……陸上やってた頃は短距離選手だったが、さすがにこのメンツに負ける気は……いや、一位じゃダメなんだ。確実に二位になる為には誰かの後に……
「あれ、君も来てたんだね」
「ん? おふぅ! パン屋のお兄さん……!」
何故ここに!
もしかして参加するでござるか?!
「あぁ、うん……なんかマゲ結ってる人に頼み込まれて……こう見えて高校時代はサッカー部だったからね。走るのは嫌いじゃないんだ」
決まった……私の中で完全なプランが今決まった。
パン屋のお兄さんに一位を取ってもらって……私が二位になる!
グフフ……完璧な計画……
『では出場者の皆様、位置についてくださいー』
むむ、もう始まるのか。
よし、気合を入れなおして……ニン〇ンドースイッチは私が貰う!
『位置についてー、よーいドン』
……?
あれ、もしかして今の……開始の合図?
メッチャやる気が削がれた……。
※
マラソンコースは町内の名所を巡りつつ、スタート地点へと戻ってくる物。お兄さんと話ながら走っていて判明したが、どうやらフルマラソンと言っても42,195キロを走らされるわけではないらしい。
「フルマラソンと聞いてビックリしたでござるよ。そりゃそうでござるね。こんな狭い田舎の町でそんなコース確保できるわけないし……」
「うんうん。まあ、十キロあるかどうかかな。ちなみに僕達……今のところ先頭みたいだけど……」
チラっと後ろを見てみる。
しかし誰も追ってはこない。まあ老人とチビっ子が大半だったからな。
「と、ところでお兄さん……一位取ったらどうするでござる?」
「あぁ、温泉旅行? どうしようかな。ペアだっけ。誘う人間居ないしなぁ」
いや、居る! 居るだろ! 目の前に!
この前、犬ドンした上にキスまでしといて……それは無いでござるよ!
「君は? どうするの?」
「えっ、わ、私は……」
温泉旅行当たったら……お兄さんと……
「ぁっ、フワワちゃんと行くんだよね。いいなー、愛犬と温泉旅行」
うぉぉぉぉぃ! ペット可の旅館だったらそれもアリだけども!
確かにフワワも連れていけたら楽しそうだけども!
でもお兄さんとも行きたい……なんて口に出せぬ!
恥ずかしいから!
「なんて……冗談冗談。分かってるよ。本当は……」
え? ほ、本当は?
「二位狙ってるんでしょ? ニンテン〇ースイッチ」
大正解!! でも不正解!
今の私の気持ち的には全然不正解だよお兄さん!
「あ、第一名所が見えてきたね。あそこでスタンプ貰うんだね」
「ふ、ふむ。小学生の時にやったウォークラリーを思いだすでござるな……」
第一名所、と書かれた看板の所に立っていたのは……
「おや、久しぶりだね、お嬢さん」
いつかのめんどくさいお父様!
あれ、何してんの?!
「第一名所、それはこの私なのだよ。公園で頭にネクタイを巻き、なおかつ斬新なパンツルックをしていた私は、町長にこの町の名所として認められたのさ」
迷所の間違いでは……。
というかそれで……このクソ寒い中、斬新なイノシシ柄のパンツルック姿なのですな。警察機関に通報されなければいいけど……いや、いっその事私が通報してしまおうか。
「ではスタンプを押そう。カードを……」
「何してるの! お父さん!」
その時! 凄い勢いで追い上げてきた女子が一人!
言わずと知れためんどくさい親子、そのNO.2……このお父さんの娘さんだ!
「ゼエ……そんな……姿で……ゼエゼエ……そんな所で……ウプ……」
大丈夫か、吐きそうな顔してるけども。
娘さんはトランクスお父さんから水を受け取ると一気飲み。
そのまま父親を睨みつけながら
「スタンプ! 頂戴!」
「よかろう、我が娘よ」
トランクスのマークが入ったスタンプをカードに押してもらう娘さん。
あ、私達も押してもらわねば。
「ところで……また会いましたね、サンタ犬のお姉さん」
秋田犬だって言ってんだろ。
ちなみにあの時頂いたサンタ帽子とメガネは大切に家でホコリを被っている。
「何故私がここに居るのか……気になりますよね?」
「全然。じゃあそういう事で」
「あぁ! 待って! お願いします! 聞いてください!」
ええい、相変わらずめんどくさい!
じゃあ聞くでござるが……何で居るのでござる?
「えっと……お父さんが居るから……」
「で?」
「で……って?」
いや、そんだけ?
「はい」
お父さん大好きなだけだろ
※
そのままめんどくさい親子から逃げるように走り去る私とお兄さん。
というか名所って……。
「面白い親子だったね。知り合いだったんだね」
「し、知らないでござるよ」
「あの娘さんも可愛らしかったし……」
あぁ! お兄さんが他の女に取られてしまう!
くぅ……めんどくさい上に姑息な女子め……!
「名所はあと二つ……楽しみだね」
あの第一名所を見て何故楽しみと言えるのか。
お兄さんは本当に心が広い……って、第二名所見えてきた。
そこに居たのは……
「ワフッ」
「フワワ……何故ここに?」
軽トラの荷台に積まれたフワワ。
暖かそうな布団が敷かれ、フワワはトナカイ柄の掛布団の中から顔を出している。
「フフフ……待っていたよ」
軽トラの運転席から出てきた男。
それは……えっ、誰?
「まだ登場はしてないが、君が住まう長屋の大家なのだよ」
ぁ、そうなんだ。勿論知ってるでござるよ。まだ登場してないけど。
「でも何でこの町の名所に……? フワワが何か関係あるでござるか?」
「それはもう。君とフワワちゃんはどちらが飼い主か分からない組み合わせだし」
おい、何言ってんだ。
確かに私は身長低いけども! 下手したらフワワに乗れそうだけども!
「老人達から可愛いって評判なんだよ。というわけでめでたく……この町の名所になってしまったというわけさ」
成程……分かった。
この町にそもそも名所なんてもんが無い事が。
「というわけでフワワちゃん、スタンプをどうぞ」
フワワの肉球へと何やらインクのような物を塗りたくる大家さん。
ちょっと、それ大丈夫な奴でござるか?! 有害な成分入ってない?!
「大丈夫。イチゴ磨り潰して作った奴だから。ちなみに余ったイチゴ汁はジュースにして美味しく頂きました」
そのままカードにフワワの肉球スタンプを押される私達。
なんか……ドロっとしたものが垂れてくるんですが……。血判状みたいになってるんですが……。
「じゃあ引き続き頑張ってね。ぁ、フワワちゃん……もうしばらく借りていい?」
「お手柔らかにお願いするでござるよ。あとフワワにサンタ帽子とメガネを着けようとしてくる女子高生が来ると思うでござるから……もし来たら断固阻止してほしいでござる」
「よく分からんけど分かった、じゃあ頑張ってー」
※
第二の名所も越えた私達。
なんだか……今更だが何してるんだろう……。
「最後の名所……楽しみだね。このままいくと神社にぶつかるね」
神社……むむ、そういえば聞いたことがあるでござる。
この町の神社には、恋愛運が上昇する岩がパワースポットとして有名だと……。
こ、ここに来て本命が!
その岩に触れて恋愛運上がれば……お兄さんと一緒に温泉旅行……
「ぁ、第三名所見えてきたね」
「え?」
まだ神社までは距離がある筈……って、本当に第三名所が!
しかも神社とは全く関係ないところに! な、なんで?
「待っていたぞよ。若者よ」
この人は……町長さん!
なんで貴方が第三名所に……!
「知れた事。このワシこそ、この町の名所のラスボスだからサ」
何言ってんだ、この人。
という事はあれか。めんどくさいお父さんが小ボス、私とフワワが中ボス、そして町長さんがラスボス……。
うわぁぁーん! こんな変態のカテゴリーに入れられてしまうなんて!
「失礼な娘め。それはこれを見てからにしてもらおうか」
すると町長さんは何やら白黒写真を……。
むむ、なにこの写真。屈強な男がボディビルダーみたいにポーズとってるけども。
「それワシ」
「さいですか……」
そっと写真を返し、はよスタンプ押せや、と急かす私。
しかし町長さんはそれを拒否! なんで!
「合言葉が必要なんよ。今までの名所から浮かんでくる言葉を言ってくれたもれ。正解だったらスタンプを押そう」
そんなルール初めて聞いたわ!
確実に今作ったルールでござろう!
しかしお兄さんは真面目に考えている。
あぁ、なんて心の広い……。こんなフザけたノリの中、この人が唯一まともな気が……
「ぁ、変人……?」
うわぁぁーん! お兄さんから変人判定が!
私とトランクスおじさんが同じカテゴリーに!
「残念ながら違うのじゃ。おい小娘、お前は分かったか?」
「うぅ、ヒント……ヒントをくだせえ……」
正直答えなんてどうでもいいが。
こうなったら確実に一位になって……お兄さんを絶対に温泉旅行に誘ってやる!
「ふむ。良く思いだすんじゃ。第一、第二と……何が出てきた? そして第三には何がおる」
「何がって……町長……」
【注意:みんなも考えてみよう!】
まさかとは思うが……第一名所にはイノシシ柄のトランクスを履いたお父さん。
そして第二名所にはトナカイ柄の布団を被ったフワワ。
そしてそしてここ、第三名所には……町長……
まさかまさか……
「猪鹿蝶……」
「大正解!!」
うおぉぉぉい! ちょっと待て!
トナカイは鹿じゃないし! 町長=蝶々って小学生のダジャレじゃないんだから!
ぁ、でも参加者にはチビっ子いるし……いやいや、でもちびっ子が猪鹿蝶って知ってるか? 今時の子って花札とかやるんだろうか……。
「というわけでスタンプを押そう。おめでとう、若きカップルよ」
「か、カップルって……」
そのままスタンプを押してもらう私とお兄さん。
むふぅ、蝶々のスタンプ……。
「ではこれで君達が優勝したも同然だろうが……最後まで走り切る事。じゃあ頑張って」
「おいっす……」
そのまま私達二人はゴールを目指し走る。
しかしその途中で、お兄さんがなんか立ち止まった。むむ、どうしたん?
「ちょっと寄ってかない?」
「むむ、ここは……」
例の神社……恋愛運が上昇するという岩があるパワースポット……。
※
神社の中は紅葉が微かに見て取れ、静かな雰囲気で爽やかな空気で満ちている。
むふぅ、なんだか心が綺麗になりそうでござるよ。
「ここかな、例の岩……」
お兄さんは恋愛運上昇の岩を見つけると、私に手招き。
ふ、ふふぅ……まさか……まさかとは思うが……
どうせここで作者のボケが入るんでしょう?! 分かっているでござるよ!
「こっち」
グイっと手を引かれ、そのまま例の岩を背に立たせられる私。
え、何? かつあげ?
「ねえ、温泉旅行……行きたい?」
ピタ……とお兄さんは岩へと手を付きながら私に顔を寄せて……
って、ギャー! 岩ドン! 犬ドンの次は……岩ドンだなんて!
「い、いきたいですけども……」
「誰と?」
誰とって……そりゃ……
あぁ、でも恥ずかしくて言えない……!
「俺の顔見て」
「は、はひ……」
やばい、心臓がドッコンドッコン大太鼓を叩いてる。
鼓膜にまで心臓の音が激しく響いてくる……!
私と目を合わせるお兄さん。
そのまま……何も言わず唇を合わせてくる。
「キス……好きだもんね」
「す、好きっす……」
「俺の事は?」
そ、それは……えっと……ござる……
「ほら、目逸らさないで……」
「は、はひぃ……」
再び唇を合わせる私達。
この心臓の高鳴りはマラソンをしたからなのか。
それともこの状況に興奮してるからなのか。
もうダメだ……心臓が破裂してしまう……!
「俺は君と一緒に行きたいんだけど……君は? 行きたくない?」
「い、いきたいっす……」
「ござるは……?」
ご、ござる……いきたいでござる……
「じゃあ……ちゃんと言って」
「え、えっと……も、もっかい……キス……してほしいでござる……」
そのまま三度のキスを繰り返した後……私は……
とりあえずもっかいキス
温泉旅行!
→トン汁食べたい
あぁ、なんだこの選択肢!
なんでカーソルがトン汁に……!
確かにマラソンしたあとのトン汁は格別だけども!
「温泉旅行……お兄さんと行きたい……でござる……」
「いいよ。ちゃんと一緒に居てくれる?」
い、居ます……
※
それから私達は無事に完走しゴール。
ふぅぅ、ようやくマラソン大会終わった……これでお兄さんと温泉旅行に……
『はーい、お二人とも二位ー。でもニンテン〇ースイッチ一つしかないからね。ジャンケンで決めてね』
ふふぅ、分かったでござるよ。
さあ、勝負だお兄さん……って、ええええ!!
一位は?! 誰が一位でござるか!
「エイドリアーン!」
その時、超有名な映画のセリフを叫ぶ女子高生の姿が。
ま、まさか……あの娘が一位?!
しまったぁ! ぬかった……お兄さんとイチャイチャしてる間に……抜かされてたのか!
「どうしたの? そんな落胆して。ほら、欲しかったんでしょ? ニンテン〇ースイッチ」
「いや、そうでござるけど……でも温泉旅行が……」
「……? 行くよ? 誰も賞品で行こうだなんて言ってないでしょ」
「……へ?」
こうして私は……ニン〇ンドースイッチを手に入れつつ、お兄さんと温泉旅行にも行けるという豪華特典を得る事に成功しました。