表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

9 皇帝の盤上


 ワシントン。


 サイラスは報告を受けていた。部下の話を聞きながら、サイラスは視線を落とす。そこにはチェスの駒が居並ぶ盤面がある。正面ではエクセラが頭を抱えて、かなり劣勢になっている盤面を睨んでいる。



 通信の途絶した十字軍艦隊が、通信を回復。敵艦1隻を撃退したが、予想外に損害が大きく、イタリアに帰港した。本来なら巡洋艦1隻くらい簡単に沈められるはずだし、その後はギリシャに上陸する予定だったはずだ。その為に陸上運搬船まで用意していた。

 なのに、イタリアの軍港に到着した十字軍艦隊は、搭載された兵器を軍の施設に向けて一斉射撃を開始。陸上運搬船から降りて来た装甲車の攻撃と併せて、軍港は壊滅。

 空母から飛び立った戦闘機が基地を破壊、その後首都ローマ及びヴァチカン市国を空爆。


 たった1日で、たった1隻で。


 巡洋艦に忍ばせていた人員で十字軍艦隊を乗っ取り、強奪した軍事力を利用して、イタリアヴァチカンの政府は、たったの1日で崩壊した。


(あぁ、やっと本気を出して来たか)


 アトスの時にドレスブラックを使わなかった。だが今回の作戦、50隻を超える艦隊を1隻の巡洋艦で乗っ取るなんてことは、どう考えても人間業ではない。ということは、この戦いには化け物を使ったという事だ。

 アトスは反乱だったから、ドレスブラックを使わなかったのだ。だがイタリアヴァチカンは、政府を維持していたとはいえ、シュティレードの属国である。


(人間には手加減してやるけど、俺には容赦しないってわけか)


 つまるところ、そういうことだろう。アルヴィンはシュティレードを敵国と定めたのだ。他のどの国が戦争を仕掛けても、ギリシャはやんわりと退避させる。だが戦争を仕掛けてきたのがシュティレードなら、完膚なきまでに叩きのめす。

 艦隊も基地も政府も壊滅状態に陥った、今回のイタリアのように。それにしても、国家を滅亡させるのはやり過ぎだとは思うが。


 アルヴィンは既にイタリアを手中に収めた。どんな手を使ったのか、ヴァチカンの狂信者たちも大人しくなった。イタリア国民はアルヴィンに逆らわない。全く不思議な話だが、それも仲間の能力でどうにかしたのだろう。


 その事に、他の国が活気づいている。56隻に及ぶ艦隊を、たった1隻で撃破する能力。シュティレードに勝利した、初めての勢力。


 もしかしたら。


 もしかしたら、ギリシャなら。

 シュティレードの支配から、自分達を解き放ってくれるのではないか。


 人々が、そう思い始めた。



 あぁ、そうか、とサイラスは思う。だからアルヴィンは、イタリアとヴァチカンを滅亡させるなどと、派手な事をやったのだ。だからたった1隻だけで迎撃したのだ。

 こんな派手なパフォーマンスに、魅了されない人間はいない。アルヴィンは英雄にでもなるつもりなのだ。

 そこまで考えて、サイラスは鼻で笑った。


「そういつまでも、上手くいかないよ」


 あれはイタリア軍、ヴァチカン騎士団だったから負けたのだ。大して戦争も経験していない指揮官が、敵をなめてかかったから負けたのだ。

 だが、既にサイラスは歴戦の猛者。なにより彼は軍人として軍師として、天才的に才能を発揮している。

 そして、強大な軍事力、大量破壊兵器、忠実な狂戦士、魔法、エクセラ。彼が手にするカードは多い。


 イタリアが不発に終わっても、大した損害ではない。シュティレードの勢力は、既にヨーロッパと中東を席巻している。ギリシャは既にシュティレードに包囲されているのだ。

 ここから盤面を覆すことなど、ほとんど不可能と言っていい。


「狼男は、今度はどんな手を使ってくるかな」


 そう言ってサイラスは、うんうんと唸って頭を悩ませるエクセラのルークを取って、ショックを受ける彼女に容赦なく、チェックメイトを言い渡したのだった。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ