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6 第11次十字軍地中海戦 1

 一般軍人たちの受けた命令は、市民の保護。街や村を守ること。そして攻撃には、特殊部隊ドレスブラックが投入される。


 まず戦端を開いたのは、領海侵犯してきた、ヴァチカンの騎士団による戦団。


 第11次十字軍遠征。


 ヨーロッパの他国と違って、イタリアヴァチカンは自ら降服したため、その政府機能を維持している。その為、ヴァチカンは未だに教国である。元々ヴァチカンは対外的には武力を持たない存在であるが、訳合って現在は武力が存在する。


 各地のカトリック教会にある騎士団を編成し、海を渡って侵攻してくる。軍と提携し、スポンサーが提供する空母や戦闘機を率いてやってくる。

 アトスとは格の違う、世界最大の宗教の勢力だ。


 それに対するは、ドレスブラック海洋部隊「コバルト」。海の魔女率いる小隊である。海神の血を引く怪人である、ラミア族のリディアを筆頭に組織された海兵隊だ。他にも人魚やセイレーンなど、水棲の魔物を中心とした構成になっている。


 敵の艦隊が公海上を、一身にこちらに向かってくる。青い空に青い海、白い波しぶきを黒鋼の船で巻き上げて、こちらに向かってくる。



 十字軍の方も、こちらに気付いた。団員の一人が双眼鏡を眺めながら、上官に報告する。


「巡洋艦です!」

「数は?」

「1隻です。偵察でしょうか」

「かもしれんが、装備はわかるか」


 言われて団員はもう一度双眼鏡を覗き込む。望遠にして、甲板のを映し出す。

 そこに映っていたのは、青く見えるほど黒い髪をした、コバルトブルーのセイラー服を着た少女たち。

 幼女も混じったその集団に、団員は目を丸くして報告した。


「あれは敵艦ではありません! お、おそらく、学生の研修か何かだと!」

「どういう事だ?」

「30人ほどの少女の姿を確認できました。敵艦ではありません!」


 長官は唸った。平時なら、少女たちの載った巡洋艦に攻撃するなど、狂気の沙汰。

 だが今は非常時だ。あれはギリシャの巡洋艦だ。乗っているのが軍人だろうが少女だろうが、敵の軍に変わりはないのだ。


「攻撃用意!」

「艦長!? 正気ですか!?」

「今更正気が必要か? 我らは狂信者だぞ!」

「っ……!」


 そうだ、自分達は神に仕えている。心から神を信仰する狂信者。この戦争は神の為に行っていることを忘れてはならない。

 ギリシャは化け物が支配する化け物の国。それに加担する国民も同罪だ。民間人だろうが少女だろうが、そんな事は関係ない。


「何が少女だ。人間を裏切ったあばずれめ。ギリシャ国民は全て、人類にとってのユダなのだ! 攻撃用意!」


 そうだ、自分達は狂信者。神はいつも正しい。だから、神を信じる自分達だって、いつも正しい。

 艦長のこの選択は、間違っていない。少なくとも人類にとって、カトリックにとって、正義であるはずだ。


 そう判断した団員たちは、慌ただしく配置についた。



 速度を落とすどころか、空母からカタパルトによって戦闘機が射出される。ミサイル艦から魚雷が発射され、ソナーに夥しい数の魚雷が映る。

 それに気付いた少女たち。ラミア族のリディアと、ゴルゴン族のエウリュアレ、マーメイド族のメロウ、セイレーン族のラウラ。4人を初めとした少女たちは溜息を吐く。


「女の子を撃つなんてひどいわ」


 メロウが腕組みをして言うと、ラウラも同調する。


「これだから船乗りって、下品で嫌ね」

「沈めたくもなるわ」


 エウリュアレも同調して苦笑したが、リディアも呆れ笑いしながら言った。


「これも想定内だったんでしょ、大統領は。だから私達1隻だけで、アレをどうにかしろとのお達しよ」

「無茶ぶりだわ」


 被害を抑えたいと考えるのは当然だが、ラウラの言う通り無茶ぶりである。更にアルヴィンは、こんな無茶ぶりを言った。


「あんまり敵艦を攻撃しちゃダメだよ。攻撃に対する防御はしてもいいよ」


 それを思い出して、少女たちはやっぱり溜息を吐く。本当に無茶を仰る。彼女たちは海では無敵だ。それこそ、船を沈める為に恐れられている怪物たちだ。

 それなのに船を攻撃してはいけないという。全く人をなんだと思っているのか。


 だが、愚痴っていても始まらない。もう魚雷や戦闘機は目前に迫っている。


「あぁもうっ!」

「しょうがないわね!」

「みんな行くわよ!」


 狙われているのは、その少女たちが乗った、たった一隻のカリプソ級巡洋艦。白煙を引きずって迫る戦闘機から、ミサイルがカリプソに向かって発射される。戦闘機はすぐにその場から離脱したが、ミサイルは真っ直ぐにカリプソに向かって飛ぶ。

 ミサイルがカリプソの左舷に着弾するかと思われたその時、幾度も爆炎が上がって、ミサイルが全て撃墜された。

 迎撃ミサイルを搭載しているのかと十字軍は考えたが、カリプソの甲板では、ビーチパラソルの下で煙草を吸う、アロハシャツに白いスラックスを着た一人の男が、サングラス越しにニヤリと笑った。


「なに笑ってんのよ! あ、危なかったじゃない!」

「もっと早く撃ってよ、ディラン!」


 少女たちに詰め寄られ、ディランと呼ばれたその男は、煙草をプッと甲板に吐き捨て、肩をすくめた。


「お嬢ちゃんたち、怒るとカワイイ顔が台無しだぜ?」

「五月蠅いのよオッサン!」

「お嬢ちゃんじゃないし! アンタより長生きしてるっつーの!」

「ディランうざい。仕事して」


 お嬢さんがたにウザがられるこの男。ディラン・ハートネット42歳。かつて魔弾の射手と呼ばれた千里眼を持つ超能力者、レオナルドの息子である。彼もまた、強化人間と千里眼が遺伝しており、その射撃の腕は父親譲り。

 レオナルドと母親は既に離婚しているが、アンジェロの説得もあって一緒にギリシャにやって来たのだ。余談だがレオナルドには恋人がいたので、同居とかはしていない。父親ながら、なかなかやるなとディランは思っている。 

 話がそれたが、そう言う事なので、失明した父親の代打として、この軍に狙撃手として籍を置いている。


 少女たちにウザがられる現実に打ちひしがれつつも、ビーチパラソルの下でテーブルに足を乗っけつつ、これまた父親譲りの迫撃砲、イービルアイで照準を定める。

 飛んでくるミサイルは、空気抵抗によって徐々に軌道が逸れる。その空気の流れすらも千里眼で読み取り、発射された砲弾は確実にミサイルの真管を破壊していく。


 その手腕にはさすがに少女たちも溜息をもらす。オッサンのくせにチャラチャラした男だが(これも父親譲りだ)、仕事となると完璧以上の仕事をする。


「おっ、お嬢ちゃんたち、俺に惚れ直したか?」

「最初から惚れてないよ!」

「ふざけんなオッサン!」

「そんな怒るなよぉ」


 これさえなければ素晴らしい味方なのに、残念な男だなぁディラン。そう思って溜息を吐いた少女たちだった。

++ドレス・コバルト++

 ドレスブラック海洋部隊。海の魔女率いる小隊。

 海神の血を引く魔族である、ラミア族のリディアを筆頭に組織された海兵隊。他にも人魚やセイレーンなど、水棲の魔物を中心とした構成になっている。

 海の魔物には不思議と女性が多い為、隊員のほとんどは少女や幼女で構成されている。その為、水兵らしくセーラー服が規定の兵装となっているが、これには軍艦を操作する男性軍人のやる気をアップさせようという目論見もある。勿論その目論見は功を奏しており、ドレスコバルトはアイドル的扱いである。


■リディア

 ラミア族真祖。神話の時代から生きる、海神の血を引く魔族。元々は神族の一人だったが、色々あって魔族堕ちした。周りが油断するという理由で、普段は幼女の姿をしている。

 海の魔力の恩恵を受けているため、海を操る水魔法が得意。


■エウリュアレ

 ゴルゴン三姉妹の末妹。元々は海の妖精だったが、美しすぎる髪が女神の嫉妬を買い、3姉妹揃って魔物に変えられてしまった。

 残念な事に姉二人は神話の時代に討伐されており、彼女が唯一の生き残り。


■メロウ

 マーメイド族の姫。物静かで大人しい少女。他の魔物と違って魔法が使えたり強かったりはしないが、海の生物たち全てと友達であり、彼らと会話する事が出来る。

 唯一の肉親である兄を失い、その原因が人間であったため、最近は人間が嫌い。


■ラウラ

 セイレーン族族長。歌声で船乗りを眠らせたり、心を惑わせて操縦を誤らせたりして、昔から船を沈没させる魔物として恐れられてきた。

 本来は姉であるディーヴァが族長を務めていたが、彼女は現在歌手活動が忙しいので、ラウラに族長の座が譲られた。


■ディラン・ハートネット

 人間で42歳、超能力者。アンジェロの友人であるレオナルドの息子で、レオナルドの能力である、強化人間ブーストと千里眼が遺伝している。

 幼い頃に両親は離婚したが、パパっ子だったのでしょっちゅう父親に会っていた。そしてまんまと父親似のチャラチャラしたオッサンに成長したが、父親譲りの射撃の腕は一級品で、実はオリンピックの射撃部門で、「本気出すと人間離れし過ぎてるから、テキトーにやるわ」と言いつつ金メダルを獲得したほどの実力者。

 元々アメリカ在住だったが、アンジェロと父親の誘いに乗ってギリシャについてきた。

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