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4 戦犯は人民によって断罪されたし


「おい、話が違うではないか」


 白い服に身を包んだ、禿げ上がった頭をした男が、電話口で不満を呟いた。胸に十字架を下げた男――正教会大司教――は、相手が溜息を吐いたのを聞いて、眉間にしわを寄せる。


「なんとか言ったらどうだ」

「偉そうな口をきくもんじゃねぇぜ? 俺は情報を渡すだけだって言っただろ? そんで俺は、大統領を舐めるなとも言ったぜ?」


 それを言われては、ぐうの音も出なかった。確かにこの男は、情報があると言ってきた。それだけだ。情報を渡す以外の事は、何も口にしなかった。

 だが確かに男は言ったのだ。アトス自治修道士共和国が戦争を仕掛ければ、政府には打撃になると。


「俺は嘘は言ってねぇぞ? お前らが攻撃し、撤退したことで、ギリシャが国民まるごと魔物に寝返ったってのは、他国にもわかったはずだ。ということは、ヴァチカンやイタリア、他国の正教会自治区、イスラム教国だって、ギリシャを攻撃できる材料が出来たって事さ」


 それは暗に、アトス自治修道士共和国が噛ませ犬だったと、そう言っているようなもので。


「貴様は、私達をバカにしているのか!」


 大司教は激昂したが、電話の男は鼻で笑った。


「バカにはしてねぇさ。バカだと思っているだけだ」


 そのセリフに大司教が青筋を立てたところで、男が続けた。 


「お前らにはもう用はねぇよ。消えろ」


 その電話の翌日には、シュティレードのイスラム教国軍がアトス自治修道士共和国を襲撃し、アトス自治修道士共和国の領地は焼け野原となった。




 その頃、アルヴィンも報告を聞いていた。


「Ⅰによると、左翼連盟キドニアス議員、国境警備隊所属、アリアドネス・キドニアスは、叔父と甥の関係に当たるようです」

「ふぅん、なるほどね」


 情報分析官モノが調べたところによると、キドニアス議員がアトス自治修道士共和国と頻繁に連絡を取っていて、その甥のアリアドネス・キドニアス伍長が、当日の国境警備を甘くするよう指示したとの事だった。

 どちらも敬虔な正教会教徒で、キドニアス議員は教会からの賄賂も受け取ったことがあったようだった。

 少し思案して、アルヴィンは笑った。


++++++++++++++



 裁判記録、事例17852号。

 被疑者:コーデリア・ウェルステリウス、エルミス・スィスティマ、アリス・コルモシア。


 2058年10月05日19:45.この3名は連絡を取り合い、メテクス・キドニアス及びアリアドネス・キドニアスの自宅に押し入り、両名及び家族を殺害した疑い。

 犯行動機については、3名の配偶者、長男が戦死した原因が、メテクス・キドニアス及びアリアドネス・キドニアス両名による、国家反逆罪によるものと考えての犯行と述べた。逮捕される前に復讐しようと考えたとの事。

 また3名は、配偶者及び長男が、戦争で死亡する事は覚悟していたとしているが、それが国家反逆による戦犯にもたらされた事に対して不服を訴えており、国家に対する賠償請求は行わない見通し。

 3名はいずれも犯行を認めており、各人懲役25年の刑に処するものとした。


+++++++++++++++


 アルヴィンがテレビで言ったのだ。この戦争は仕組まれたもので、メテクス・キドニアス議員及びアリアドネス・キドニアス伍長が国を裏切り、この戦争を招いたのだと、テレビで言った。

 アルヴィンがした事は、ただそれだけだ。アルヴィンがテレビでそれを放送したことで、「戦犯を断罪する権利を得た」と考えるかどうかは、視聴者の思考次第。とはいえ、この国はデモ活動などには非常に精力的な国なので、概ね結果は予想済みだったが。


「俺、何か悪い事した?」

「アルは事実を言っただけよ」


 朝の光が差し込む寝室。セルヴィは起きたばかりでシーツに身を包んでいたが、アルヴィンは先にシャワーを浴びたようで、いつものように銀髪をゆるやかなオールバックに固めていた。

 家での髪が乱れた姿もカッコいいが、やはり仕事用の姿はセクシーだと思う。


「セルヴィも支度しないと、もう6時だよ」

「そうね」


 セルヴィのケモノ耳にキスをしたアルヴィンがそう言って、セルヴィもシャワールームへ向かう。その後ろ姿を眺めて、ニュースにチラリと視線をやったアルヴィンは、彼女たちはその内特赦でも出して釈放してやろう、そう考えて愉快そうにその口角に弧を描いた。


++ドレス・ブラック++

 将軍ヴィンセントをトップに、アンジェロとミナを指揮官として組織された、魔物と超能力者による特殊部隊。

 アンジェロが軍人として育て上げ、なぜか敵を掃滅する事に快感を覚えるヒャッハー軍隊になってしまった。ヒャッハーではあるが、成果は軍の中でも群を抜いている。

 兵士一人一人が、人間を遥かに凌駕した力量を持っている為、1000人前後の大隊であるが、ギリシャが誇る一騎当千の最強部隊である。

 ドレスブラックは対外的には秘密の軍隊だが、アンジェロが訓練と称してシュティレードの領地でテロリストを殲滅するという、大変効率的な演習を行っていたため、恐らくシュティレードには存在がバレている。


++ドレス・クリア++

 アルヴィンが作らせた、対シュティレード情報捜査局。人数は少ないが、国内から集められた天才ハッカー集団が情報分析官として在籍している。また、トワイライトのメンバーの数人も、現地捜査官として派遣されている。


モノ

 ドレスクリア特別捜査官。情報分析官のナンバー1。アルヴィンが彼に目を付け、直接ヘッドハンティングしたほどのハッキングの腕前。数年前にサイバーテロを仕掛けた事があり、その腕を見込まれて現在は情報分析官の筆頭。

 アルヴィン信者で、ネットではイッチと呼ばれている。最初にアルヴィンをネットで兄貴と言いだしたのはコイツ。

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