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11 闘争心の発現

「へぇ、意外。アイツ死んだんだ」


 部下からの報告書に目を通していたサイラスは、そう言って報告書をパサリとデスクの上に放り投げた。

 てっきりアルヴィンは大統領を生かすだろうと思っていただけに、この結末にはサイラスは結構驚いた。


 トルコ大統領だった男は、元々政治団体の人間だ。彼は軍国主義思想者だったから、テロリストと似通った発想もあって、シュティレードに入った。だが、あくまで彼は政治家としての思想家であって、彼は政治的にも真摯だった。

 彼の思想は軍国主義であり、トルコを軍事政権として運用する事を構想していた。ヨーロッパ侵攻の要衝となるトルコが軍事政権になることは強みになる、そう考えてその構想にサイラスも賛成したので、彼をトルコ大統領に任命したのだ。

 そして、トルコが軍事政権であるという事は、その支配がギリシャの手に渡ったとしても、好都合だったはずだ。戦争の中継地として要衝の国が、いつでも戦争を出来る状態であるというのは、戦争をしている国家にしてみれば垂涎だろう。

 なのに大統領が死んで、トルコの要衝基地の軍人と中央の政治家は皆殺しになったという。これではトルコが軍事政権として再建されるには、どんなに介入を急いでも、最低でも5年はかかるだろう。


(あの狼男、何を考えているんだろう? 俺にも思いつかない策でもあるのか?)


 サイラスは少し悩んだが、それは考え過ぎである。これはただのヴィンセントのミスであって、概ねサイラスが考えていた事と同じことをアルヴィンも考えていた。この結果に驚いたのは、アルヴィンも同じである。

 そんな事とは露知らず、サイラスは頭を悩ませる。


(しかし、トルコが負けたのは痛いな……まさか負けるとはね。奴らを見縊っていたのは、俺の方だったみたいだ。あっちが本気なら、俺も本気を出そう)


 そうしてサイラスは、デスクの上に散らばった資料の、ある写真を眺める。その写真は衛星写真だった。映し出されていたのは、ミサイル攻撃が行われていた頃のものだ。

 そこに映るのは、ミサイルを全て迎撃した兵器。今まで地上には存在しなかったものだ。ギリシャがこんな技術力を持つとは想定していなかったが、サイラスは心当たりがあった。


 世界最高の頭脳を持つと言われる天才科学者、レミ・ヴァルブラン博士。彼が生存していて、ギリシャに助力しているとしか考えられない。彼の頭脳は正直な話、サイラスにとっても脅威だ。彼の開発したナノマシンの構造は、サイラスでさえ、未だに解析できないのだから。

 そんな天才科学者が、何の制限も受けず好き放題兵器開発に乗り出したら、とんでもない代物が開発されるに決まっている。そうなれば、戦力の分布は大きく塗り替えられる。この写真に写っている兵器だって、並の兵器では歯が立たない。


「デウス・エクス・マキナ。機械仕掛けの神、か。全く、とんでもないものを発明してくれたな。てか、いつの間に開発したんだ?」


 神と綽名されるほどの火力を持つ兵器。そんなものを短期間で生み出した、創造主たる科学者。自分はまだ彼には及ばない。

 だがサイラスだって、何もしていないわけではない。彼は科学と魔法を融合する技術を持っている。感情の消失したサイラスの心の中に、闘争心という感情が湧き上がり、その心に火をともした。


「レミさんの頭脳と俺の頭脳、どっちが上か。次の戦いでわかるかな。楽しみだ」  


 そう言ったサイラスがふっと資料に息を吹きかけると、舞い上がった資料が空中で燃え上がり、灰となってハラハラと床に燃え落ちた。



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