コンスタンティア・エリントンの場合 その4
突然、六歳の息子を喪うことになった一家は悲嘆にくれたが、病死であるという警察の見立てには特に疑問を抱くこともなかった。
自分で遺体を見てもこれといって不審な点は見受けられなかったからだ。
まったく、神の如き、しかし邪悪な何者かが彼女に味方でもしているかのように、ことごとく彼女にとって都合の良い状況が生じ、コンスタンティアは髪の毛ほども疑われることもなかったのである。
もちろん、彼女が少々変わった印象を抱かせる少女であることは誰もが知るところであったが、それでもさすがに、家人のわずかな隙をついて堂々と他人の家に侵入し、僅か数分で人を死に至らしめるなど、そんなことを彼女に結び付けて発想する人間は一人もいなかったようだ。
故にこの、<十一歳の殺人鬼>の存在に気付き、それを止めようとする者も現れることはなかった。
さりとて彼女に都合の良い状況が目の前に現れることもそういつもいつもあることではなかったが為に、コンスタンティアが次の犯行に至るまでには数ヶ月の時間を要した。
このこともまた、次に起こった事件と先の事件をと結び付けて考える人間が現れることの障害となったようである。
六歳の男の子が突然亡くなった先のそれについて悼む者も、男の子の家族以外にはいなくなった頃、<不幸な偶然>は、再び恐ろしい殺人鬼に絶好の機会を与えてしまうこととなった。
その日、コンスタンティアの家の近くに、八歳の少年が祖父母を訪ねて両親と共に遊びに来ていた。しかし両親は、しばらくぶりに会う両親との積もる話に花を咲かせるのに忙しく、男の子のことは構ってやれていなかった。
また、男の子の方も心得たもので、そんな両親や祖父母には何も期待せず、勝手に家の外へと<冒険>に出てしまったのである。
そして不幸にも、その姿をコンスタンティアに見られてしまったのだ。
人目につかない茂みの中に野兎を見付けてしまった男の子はそれを追って自身も茂みに入り込み、コンスタンティア以外の誰からも見られることのない状況を自ら作り出してしまった。
しかも、彼自身、
「つかまえてやる…!」
と野兎を追うのに夢中になり、コンスタンティアが近付いていることに気付くこともなかった。
その事実に、彼女はまさに悪鬼そのものの笑顔を浮かべながら愉悦していた。
『神様、私に今日の糧をお与えくださいまして、感謝いたします……!』
口には出さず心の中でそのように唱え、彼女は背後から男の子の首にするりと自分の手を巻き付かせた。
実の父親から毎日のように首を絞められつつ淫蕩にふけっていた彼女は、どこにどう力を入れれば人間が意識を失い、抵抗できなくなるかを、自らの体で学び取っていたのだった。




