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デッドエンドフェアリーテイル  作者: 京衛武百十
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コンスタンティア・エリントンの場合 その1

「JC邪神の超常的な日常」のクォ=ヨ=ムイが人間として転生を繰り返していた時の一人、コンスタンティア・エリントンの話です。

「クスクス…クスクスクスクスクスクス」


今年、十一歳になったばかりのコンスタンティア・エリントンは、自宅の裏庭の隅にしゃがみ込み、控えめな声ながらずっとクスクスと楽しそうに笑っていた。


その彼女の視線の先には、透明な小さなビンが地面に置かれている。彼女がそれを見てずっと笑っているのだ。


そのビンの中には、くすんだ灰色の毛を持った、やや大きめのネズミらしき小動物が入れられていた。だが、その小瓶に入れて飼っているのだとしたらいささかビンが小さすぎるようにも見えた。これではあまりにも窮屈で、いくら相手がネズミでも、さすがにこれは憐憫の情を覚えるというものかもしれない。


なのに、コンスタンティアはまったくそういう様子を見せることなく、ただ嬉しそうにクスクスと笑っているのである。


なぜなら、彼女はそのネズミを『飼って』いるのではないからだ。


飼う為なら、大きさもさることながら絶対に必要な筈の<空気穴>が、そのビンには開けられていなかったからである。


そう、彼女は、そのネズミを飼うのではなく、殺す為に小さなビンに詰めたのであった。


どうせ、ネズミ捕りの罠にかかったネズミなのだから、家人に見られればすぐに殺されてしまうものだったのを、彼女は自らの手で殺す為にそのビンに詰めたということだ。


空気穴を開けていないというのは、それが目的だったからだ。


窒息させてじわじわと殺し、死んでいくその様をじっくりと観察するのが目的だったのである。


ビンに詰めてからもう既に一時間。小さなネズミだから必要な酸素量が少なかったことでここまでもったのかもしれないが、それももう限界だった。


ネズミは、自分が命の危険に曝されていることを察しているのか、窮屈なビンの中でしきりに体の向きを入れ替え、どうにかしてそこから脱出しようと抜け穴を探しているようだった。


しかし、少女はそのネズミが窒息して死ぬところを見たいが為にそこに詰めたのだから、当然、抜け穴などない。


で、抜け穴がないと察すると、ネズミは今度はガラスを破って外に出ようと、必死に爪でそれを掻いた。


掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて、


さらに、


掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて、


掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いた。


その場から脱する為に、脱して、生きる為に。


最後の最後のその瞬間まで、諦めることなく。


だが、そんなネズミの必死の努力はすべて徒労に終わった。掻けども掻けども、小さなネズミの爪ではガラスに傷さえ付けることは叶わず、そして錯乱したかのように暴れたかと思うと、突然、動かなくなったのだった。


その一部始終を見ながら、コンスタンティアは、


とてもとてもとてもとてもとてもとても、


嬉しそうに笑っていたのであった。




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