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デッドエンドフェアリーテイル  作者: 京衛武百十
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篠崎香保理の場合 その2

父親の死後、香保理かほりは奨学金を受けて大学へも進み、家も出て中学時代からの友人と一緒にマンションの一室を借りて自立を目指していた。


「香保理、今日はカレーでいい?」


休日の夕方。特に予定もなく友人とずっと家にいたのだが、そう声を掛けられて、


「ありがと、任せる」


と微笑みながら応えていた。


強くパーマのかかった髪。どぎつい印象すらある真っ赤なマニキュアとペディキュア。一体どこの水商売の女性かと思わせるスレた印象のある香保理に対し、彼女と一緒にこの部屋に住む山田絵里奈やまだえりなはいかにも真面目だけが取り柄という感じの地味な印象の女性だった。もっとも、ほんの数年前までは、香保理と同じような見た目に、その時でも既に時代遅れになりかけていたルーズソックスを穿いた<ギャル>風だったりもしたのだが。


まあそれは余談なので脇に置くとして、香保理と絵里奈の同居生活は、まるで<同棲>のような甘さも秘めたものだった。出来上がったカレーを食べるにも向き合うのではなく体が触れるくらいに並んで座って、お互いに「あ~ん」と言って相手に食べさせるようなことをしていた。


その様子でも分かるように、これは実質的には同棲だったのだ。二人は、体の関係もある間柄だった。


中学の頃から何となくお互いに気が合い、何となく一緒にいるうちに何となくそういう関係になってしまったのである。


実の父親から性的虐待を受けてきた香保理は、男性に対しては非常に強い嫌悪感を持っていたが、性的な刺激については体に染みついた感覚としてある種の依存状態にもあったようだった。しかし男性と触れ合うのはイヤだ。だからこうして絵里奈のような女性とそういう関係になることは、ある意味では当然の成り行きだったのだろう。


そして絵里奈の方も、自分を優しく受け入れてくれてぬくもりも与えてくれる香保理に対して依存していたのだった。


この頃が、香保理にとっては一番幸せだった時かもしれない。父親からも母親からも解放され、自分の為に自分の時間を使い、自分の命も自分の為に使う。そんな当たり前のことが許される状態だったのだから。


やがて大学を卒業し、それぞれ変に高望みすることなく地元の中堅どころの企業に手堅く就職した二人の前に、一人の女性が現れた。


伊藤玲那いとうれいな


絵里奈の同僚だというその女性を見た瞬間、香保理は自分と同じ匂いをその女性に感じてしまっていた。


それは、絵里奈以上に自分に近いものなのだった。


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