リーネの場合 その2
村での収穫の時期を迎えた頃、また国が変わった。いつものことだと村の人間達は気楽に構えていたが、今回はこれまでと大きく状況が変わっていた。新しい領主は、これまでの領主や国王が都としていた町ではなく、急峻な土地にある町を都と定めたのだった。他の国に攻められ難いようにという狙いだったようだ。
だがそれは、リーネのいる村の地理的条件も大きく変えることとなった。隣国との交易や交通の面で重要な位置に存在することになったのである。
そこで新しい領主はその村に軍の部隊を常駐させることとなった。村に隣接し、しかし土の状態があまり良くないということでそれまであまり利用されていなかった平地に軍が常駐する為の施設が作られ、さらにはその周囲に、兵士達を客と見込んで店を始めようとする者も集まり始め、殆ど農耕だけで細々と成り立っていた寒村が、僅か半年ほどの間に一気に賑わいを見せるようになっていったのだった。
元々その村に住んでいた住人達はその変わりように戸惑いながらも、軍が兵站として作物を買い上げてくれる上に、兵士達目当てに建ち始めた飲食店や酒屋なども村で採れた作物を仕入れてくれるようになり、経済的にも潤い始めたのである。
こうなると元の住人達としても恩恵に預かることになり、やがて軍や新しい住人達のことも受け入れるようになっていった。
しかしそれは、先にも述べたようにこの村の地勢的な意味合いをも変化させることでもあり、次に起こることは必然であったのだろう。
領土を奪われる形になった隣国が、反転攻勢に出たのだ。それにより長らく平穏だったリーネの村は、戦火に晒されることとなってしまった。
他の国からの支援を得て武力を増強した隣国は新たに兵士を雇い、軍隊を編成して進軍を開始した。領主が新しい都とした町を目指すにはリーネの村はまさに重要な拠点となり、一気かつ苛烈な攻撃を受ける形になった。それを見越しての村への軍の配備だったが、それが完全に整わないうちにということだった。
十分な準備が完了しないうちに激しい攻撃を受けたことで、村に配備されていた部隊は潰走。隣国の軍隊がそこを制圧した。と言っても、ついこの前まではこの村は隣国の一部だったことで、元々の住人達はそんなに酷いことはされないだろうと楽観的に見てさえいた。
だが、この時、村を制圧していた部隊は、臨時で雇われた兵士だけで構成された、ある意味では使い捨ての突撃部隊でもあった。その部隊の兵士達の殆どは、兵士とは名ばかりの、ならず者やごろつきの類であったのだった。




