リーネの場合 その1
「JC邪神の超常的な日常」のクォ=ヨ=ムイが人間として転生を繰り返していた時の一人、リーネの話です。こちらも悲惨な最期を迎えるのでご注意ください。
その少女が暮らしていたのは、今から八百年ほど昔のヨーロッパ中部の山間の小さな村だった。周囲ではあれこれ戦争とかで騒がしかったが、その村は地理的な理由もありあまり重要視されず、それまでは戦争に巻き込まれることも殆どなく、長らく平穏であった。
さりとて必ずしも裕福とは言えない暮らしぶりでもあり、決して栄えているとも言えなかっただろう。
そんな村で農家を営む夫婦の長女として生を受けたリーネも、僅か八歳ながら、自身の体とそれほど変わらない大きさの鎌を器用に使いこなして両親の手伝いをしていた。それは彼女より年長の子供達ですら敵わないほどの業前だったという。
「リーネは本当に働き者の偉い子だねえ。うちのグータラ息子にも見習わせてあげたいよ」
隣家の小母さんが感心しながらもそうボヤくのを、彼女は照れくさそうに笑いながら聞いていた。
さらに黙々と仕事をこなして、刈り入れが一通り終わると、隣の畑の刈り入れをしていた父親が「よし、今日はこれでお終いだ」と声を掛けてきた。
鎌の扱いは大人顔負けだったものの、さすがに力仕事となると小さな体ではどうにもならなかったが、彼女は本当によく働いた。しかも決して嫌々やらされているのではなく、自らの役目をきちんと理解して進んで行っていたのだった。それは、彼女の両親がそんな彼女の働きをしっかりと認めてくれて一人前として扱ってくれたのもあるだろう。
「お疲れ様、リーネ」
父親と一緒に家に帰ると、母親が優しい笑顔で迎えてくれた。
「畑仕事もいいけど、もう少し家の仕事も手伝ってくれたらお母さんは嬉しいかな。リーネも女の子なんだから」
食事の用意をしながらそう言うものの顔は笑っており決して嫌味や小言の類ではないことは傍目にも分かる。あくまで母と娘のコミュニケーションなのだろう。だからリーネも、
「私、包丁よりも鎌の方が使いやすいもん。それに楽しいし」
と、口を尖らせながらも目は笑っていた。
そんな親子の暮らしは、つつましやかではありつつもとても満ち足りていて、幸せそのものだった。
村の外では度々戦争が起こり、村が属する国が変わったりしてその度に役人がそれを告げに来たりもするものの、何しろ領主や国王といった支配者達が住む都からも遠く離れており、生産力も決して高いとは言い難いこんな山間の小さな村まではわざわざ手間をかけて支配の手を強めることもなく、
「何だかまた違う国になったらしいよ」
「へえ、今度は何ていう国だい?」
などと他人事のように世間話としてやり取りがされるような状態なのだった。




