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デッドエンドフェアリーテイル  作者: 京衛武百十
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藤波沙代里の場合 その1

「JC邪神の超常的な日常」のクォ=ヨ=ムイが人間として転生を繰り返していた時の一人、藤波沙代里ふじなみさよりの話です。



正直、これから話すことはあまりにも馬鹿馬鹿しくて恐らくネットなどではただの笑い話とされて嘲笑の的になるだけというエピソードだろう。だが、そんな形で喪われたものであったとしても、命は命なのだ。その尊厳を踏みにじる権利を、誰が持っているというのか……




「姉ちゃん、うるせぇよ!! ドタバタしてんじゃねぇ!!」


そう言って怒鳴り込んできたのは、弟の孝多(こうた)だった。高校受験を来年に控え、その為の勉強をしていたのだが、隣の姉の部屋から響いてくる物音に、苛立ちが頂点に達してしまったのである。


扉を乱暴に開け放ち、拳を握り締めた彼の視線の先にあったのは、真っ赤なミニスカートを纏った逞しい太腿の間から覗く、真っ白な女性用のショーツだった。


「はっはーっ! 見よ弟よ、このカールゴッチばりの見事なブリッジを!! こんな完璧なジャーマンスープレックスを決められる女子高生が他にいるか!? 大いに自慢しろ!!」


まるでショーツが喋っているかのような絵面に、孝多は、


「ダマれ! この変態プロレス女!! とにかく俺は勉強中なんだ、邪魔するな!!」


と怒鳴るしかできなかったのだった。そんな弟に、ブリッジの状態からまるで巻き戻しのようにスッと立ち上がった藤波沙代里(ふじなみさより)は、胸を張り腕を組んで声を張り上げた。


「はっはっは! 心配いらん!! この私が公立に進学できるのだ! 高校なんてよゆーよゆー!!」


事実だった。中堅どころとは言え、沙代里は受験勉強など殆どすることなく、『近いから』というだけで選んだ近所の公立高校に余裕で受かっていたのである。だが、弟の孝多にすればそれがまた癪に障る。


幼い頃からプロレスにドはまりしたこの姉に、トレーニングと称してプロレス技の練習台にさせられ、本気で立ち向かっても一度も勝つことのできなかったことは、彼にとっては屈辱以外の何ものでもなかった。だからせめて高校は姉より上のレベルの学校に進んで見返してやりたいというのがあった。


それなのにこの態度。どこまでもふざけてると孝多からは見えてしまった。だから頭に血が上ってしまったのだ。どう言えばこの姉に分からせることができるのかが分からなくて、つい口を吐いて出てしまったのである。


「タヒね!!」


もちろんそんなことを本気で思っていた訳ではない。他愛ない姉弟ゲンカ、いや、ケンカですらない一方的で幼稚な悪態だった。それなのにまさかそれが、姉と交わした最後の言葉になってしまうなどとは、夢にも思わなかったのだった。



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