レイレーネ・ハルファレギスの場合 その1
「JC邪神の超常的な日常」の中に出てきた、魔法使いの惑星での暗殺者レイレーネ・ハルファレギスと、「第一〇七六四八八星辰荘へようこそ」に登場するヘルミッショ・ネルズビーイングァについての物語です。
レイレーネ・ハルファレギスは、病弱な少女だった。元々発育が遅れがちで、他の子供達より二年も遅れて魔法学校に入学した。本来なら病弱という時点で才能なしと見捨てられるところだったが、自分の家から脱落者を出したくなかった両親の必死の賄賂攻勢により猶予されていたのだった。
もっとも、そもそも魔法の才能自体がないと判断されればそれも認められないので、そちらの才能自体はあったようである。
そんなレイレーネは自分が特別な扱いを受けていることを幼い頃から承知していた。だからその後ろめたさを解消しようとしてか、他人にとても優しかった。この魔法の国の人間達は十三歳前後に命を落とすことが一般的なこともあり、どこか投げやりで刹那的でかつ自我が肥大化している者が多い故に他人に対して冷淡かつ冷酷な傾向があるのだが、時折、プリムラやレイレーネのように大人しかったり他人をひどく気遣う者も現れるのだった。
レイレーネは、泣いている者がいれば傍に寄り添って抱き締めてやり、愚痴をこぼす者がいれば気が済むまでそれに耳を傾けてくれた。
十三年前後という短い生涯が一般的でそういうものだと思いつつもやはりそれを恐れる気持ちも残す者も多く、己の運命を嘆いて涙する者も少なくなかった。
そんな者を抱き締めながらレイレーネは言う。
「大丈夫。不安なのはみんな一緒だよ。みんな怖いの。私は生まれつき体が弱かったからここまで生きられたのが逆にすごいと思ってる。
私は魔法ではみんなに勝てないから蟲毒の行できっと早々にリタイアになると思うけど、その分、あなたは生き延びられると思う。お願い。私の分まで生きて。生きて私のことを覚えていてほしいの……」
入学が遅れて同級生達よりは既に二年長く生きた彼女は、それだけ人生経験も積んでいたということなのかもしれない。いつしかそんな彼女を心の支えにする者も現れ始めたのも当然の成り行きだったのだろうか。
ヘルミッショ・ネルズビーイングァもその一人だった。彼女は元々、辛うじて魔法の才覚は持つもののそのレベルは決して高くないとみられて下賤の者と蔑まれている種族の出身であり、それ故、荒んだ眼をした攻撃的な少女だった。にも拘らず、レイレーネはそんな彼女にも優しかったのだ。
「ヘルミ…あなたは決して他の子に劣ってる訳じゃない。少なくとも私よりは優れてると思う。だから自信を持って。あなたの力を発揮すれば大丈夫だから……」
入学したばかりの頃は馴れ馴れしく綺麗事を並べるレイレーネを嫌っていたヘルミだったが、どんなに邪険に扱っても態度を変えないレイレーネには、表面上は反発しつつもいつしか心を許していったのだった。




