プリムラ・テリェトーネリアの場合 その4
プリムラはもう諦めていた。蟲毒の行を生き延びられることを。この世界での感覚とは、そういう感じだった。儀式を生き残れるのは百人に一人。しかも単純に生存確率一パーセントという訳ではない。戦って勝ち残らなければいけないのである。そもそも勝てるだけの力がなければ可能性は限りなくゼロに近付いていく。だからこの星の住人の感覚としては、十三歳前後が寿命という認識だったとも言えるだろう。
プリムラ以外の子供らは、残された自分の時間を楽しもうと躍起になっていた。しかしその多くは享楽的刹那的なそれであり、性に溺れる者が大半だった。そうなれば当然、妊娠する者も出てくる。だが、子供がどんどん死ぬこの星では常に新しい子供を待ち望んでいる為、人工妊娠中絶というものが存在しない。子供を産んでくれるならたとえ十歳の少女でも構わないという認識すらあった。妊娠・出産の負荷は魔法によって軽減される為、イメージとしては月経と大差ない程度の負担でしかなかっただろう。プリムラの同級生の女子の半数が既に経産婦であったりもする。今も数人が妊娠中だ。
生まれた子供は、大抵、親がそのまま我が子のようにして育てる。何しろ、この時期に妊娠などしているようでは魔法の修練どころではなくなる為、蟲毒の行を生き延びられる確率はさらに下がる。だが、享楽的刹那的な行動に走る時点で魔法使いとしての才能はお察しというレベルな為、親の方もどうせ死ぬのなら子供を残してくれた方がいいとさえ考えていた。
なお、この魔法の国では、通常の妊娠で生まれた場合は女性の方が魔法使いとしての適性が高い傾向にあり、しかも子供を産んでくれるということで、女児を望む親が圧倒的に多い。産み分けの為の魔法も存在し、性交する際にそれをあらかじめかけておくと九十パーセント以上の確率で女児が生まれる。それ故、十三歳以下の男女比は実に一対十八という、歪なまでに女性上位な社会だった。とは言え、数少ない男性は重宝される上に、特に産み分けの魔法をものともせず男児として生まれてきた子は生命力が強く、魔法使いとしての適性も一般的な女児をやや上回る傾向にあった。その結果として、蟲毒の行を生き延びた成人の男女比は一対三程度にまで矯正される。
だが、プリムラは、そういう形での妊娠・出産を望んでいなかった。絵本に出てくるような素敵な<王子様>とお互いに惹かれ合って結ばれて幸せな結婚をしたいと思っていた。それができないならそもそも男性とそんな関係になりたくないとも思っていたのだった。




