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デッドエンドフェアリーテイル  作者: 京衛武百十
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英田智基の場合 その1

「僕に突然扶養家族ができた訳」で、山下達やましたいたるの元同僚だった英田あいだの身に降りかかった突然の不幸についての物語です。



英田智基(あいださとき)は、会社員の英田透哉(あいだとうや)と妻で歯科助手の雪江(ゆきえ)との間に長男として2009年6月に生まれた。


生まれた時は2013gの低体重で保育器の中で育ち、退院してからも病気がちで透哉と雪江を心配させた。両親はそんな智基に愛情を注ぎ大切に育てた。そのおかげか、しょっちゅう熱を出したりはしたものの命に係わるような大きな病気には至らず、穏やかな気性の優しい男の子として健やかに育っていった。


透哉は要領のいい器用な人間ではなかったが、智基や雪江のことは愛していた。大切にしようとしていた。だから雪江も透哉と智基のことを愛した。


幸せだった。細かいことを言えばそれぞれ不満もなかった訳ではないようだが、親子三人は身の丈に合った自分達の生き方で満たされていた。


「智基さんは学校でも優しくて他の生徒とも仲良くできてるようです」


雪江の方の都合がつかなかった為に透哉が有給休暇を取って学校の個人懇談に行くと、担任教師からそう言われてホッとした。


「目立った活躍はできなくて構いません。他の子と調和して上手くやっていければそれ以上は望みません」


担任に語ったその言葉は、本気だった。他人の目を引くような活躍はできなくても構わない。他の子をイジメたり嫌がらせをせずにいてくれればそれで十分だと思っていた。そして息子の智基はその通りにしてくれているのだという。それ以上望むことはなかった。


「あの子には縁の下の力持ちとして誰かを支えてくれる人になってもらえればいいんです。スポットライトを浴びるような人でなくていい。ただ与えられた自分の役目をこつこつと果たせる人間になってもらえれば」


「はい、智基さんはお父さんがおっしゃってるそのままのお子さんですよ。グループ発表の時もリーダー的に他の子を引っ張っていく訳ではありませんが、全体に目を配って発表が成功するように内容をまとめることに力を発揮しています」


担任の口からそう言われると面映ゆい気もするが、息子がそういう形で役に立っていると確かめられたのは何よりだった。これからもそれを続けられればと思った。


「智基、学校で先生が褒めてたぞ。お父さんは鼻が高いよ」


家に帰って息子と顔を合わせた時にそう言うと、智基も照れくさそうに笑った。他人を傷付けてまで何かを生そうとは考えない、調和を是とする心優しい子。


まさに絵に描いたような幸せがそこにあった。その幸せがこれから先も続いていかないということを予測しなければいけないような気配はどこにもなかったのだった。



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