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デッドエンドフェアリーテイル  作者: 京衛武百十
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マルガリーテ・ブリエットの場合 その4

「おめでとう! マリー!! いよいよあなたの夢が叶うのね!」


ホームステイ先の親戚の女性が彼女の手を掴んで飛び上がりそうなくらいに祝福してくれた。それからすぐに母と妹に報告する為に電話をすると、


「ああ、マリー! 素晴らしいわ! あなたは私の誇りよ!!」


「おめでとう、姉さん!!」


と、二人も電話の向こうで涙声になって喜んでくれた。そのままレストランでお祝いのパーティーが始まり、常連客達からも、


「おめでとう!」


「良かったな、マリー!」


と声を掛けてもらった。


この日は、マルガリーテの人生の中で最高の日となった。




週明けからさっそく出勤した彼女は、まずアニメ制作の全体像を学ぶべく様々な部署の雑用から始めることとなった。さすがにいきなりアニメを作らせてもらえるとは思っていなかったが、アニメ制作の裏側を直に見られて彼女は毎日興奮しっぱなしだった。時には興奮のあまり鼻血を出して医務室に運ばれもした。


そこに努めている人達全員が彼女に対して親切とはさすがにいかなかったし、嫌味を言う先輩や意地悪な同僚もいたりもしたが、そんなものはどこに行ってもあることだと彼女は気にしないようにした。


それから二年が経ち、真面目で積極的で情熱に溢れる彼女の姿を見てくれている人はちゃんといて、ある時、上司が彼女にこう言った。


「どうだ? 君も絵を描いてみないか? 実は次の新作のプロジェクトにあたり、社内でコンペを行うことになったんだ。それに君も参加してみたらどうかと思うんだが」


「はい! やります! ぜひやらせてください!!」


「まあ正直、既に候補はほぼ決まっていて、それを正当なコンペの上で決まったっていうことにする為のアリバイ作りの出来レースというのが現実なんだがね。それでも、そこでプロデューサーの目に留まればいずれはっていうことも十分にあり得るんだ。そういう場でもある。参加しても無駄にはならないからね」


こうしてマルガリーテは、夢に向かって順調に歩み続けていた。


歩み続けていたのだ。それなのに……




「コンペは残念だったが、まあそれは予め決まっていたことだからいいだろう。だが、プロディーサーが君の絵を熱心に見てくれていたよ。しかも、何かインスピレーションを得たらしい。これはひょっとするとひょっとするかもだぞ」


「ありがとうございます…!」


上司の言葉に、彼女の心は浮かび上がらんばかりに高揚した。そのテンションのままに同僚達と飲みに出掛けて、彼女は浮かれて飲みすぎてしまった。だからいつもより帰宅が遅くなってしまったのだ。


いつもなら遅くとも十時には帰ってくる筈のマルガリーテが深夜十二時を過ぎても帰ってこないことを心配した親戚の女性が警察に相談すると、彼女は信じられないことを聞かされた。


マルガリーテと思しき若い女性が、射殺体となって発見されたというのである。そしてその遺体を確認した親戚の女性により、マルガリーテ本人と断定されたのだった。


発見された時、持っていた筈のバッグが見当たらなかった為、行きずりの強盗によるものと推測されたが、その犯人は特定されることはなかった。他の事件で逮捕された強盗犯がそれらしい供述をしたのだが、同様の供述をした者が他にもいて、果たしてその中に真犯人がいるのかいないのかすら判然としなかったのである。




マルガリーテ・ブリエット。享年、二一歳。死因、外傷性ショックによる心不全(推定)。


アニメ作りを夢見た若い彼女の、あまりにも早すぎる死であった。



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