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デッドエンドフェアリーテイル  作者: 京衛武百十
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白小夏の場合 その1

「JC邪神の超常的な日常」のクォ=ヨ=ムイが人間として転生を繰り返していた時の一人、暗殺者・白小夏パクシャオシャの話です。

白小夏パクシャオシャは、暗殺者である。


第二次世界大戦の最中さなか、中国を中心に暗躍した彼女は、南方系のクォーターで香港出身。国籍はイギリスだが、実際にはロシアの指令を受けて暗殺を実行している工作員だった。


艶やかな黒髪を肩の辺りで切り揃えた、醜女しこめではないが、かと言って飛び切りの美人でもないという、まあそれこそどこにでもいる普通の中国人娘という風体の女だった。もっとも、それこそが工作員として求められるものではある。普通で目立たないことが重要なのだ。


彼女の主な任務は、他国の諜報員や諜報員の協力者の暗殺であり、彼女は殆どの任務を成功させてきた優秀な暗殺者だった。仕事の際には何でも武器にする。その場にあるもので目立たず確実に仕留める為だ。大抵は強盗や痴情のもつれに見せかける。


無論、その諜報員を使っている側はそうでないことを承知しているだろうが、世間的にはその方が騒ぎにはならない。


彼女は優れた暗殺者であり、何度か危機に陥ることはありつつも、結局、戦争を乗り切った。終戦間際、指示を出していた直接の上司とも言うべき工作員がいずこかの勢力によって謀殺され、彼女は寄る辺を失った。同じロシアの他の工作員にすら正体を知られていなかったことで、繋がりが失われてしまったのである。


しかしそれは彼女にとって幸運だったと言えるだろう。終戦と共に事実上、工作員としては穏便に引退できたということなのだから。


「皮肉なものね…。私みたいなのが生き残るなんて……」


そんなことをふと呟いてしまう。元よりいつ死んでも仕方ないと彼女は思っていたのだ。


表向きの出自は偽装されて平凡な家庭の生まれとなってはいたが、本来は売春婦が産み落とした私生児だった。母親には愛されず、五歳で盗みを覚えてそれ以降は殆ど自力で生きてきた。八歳で体を売ることを覚え、十二歳で後に所属することになる組織の人間に拾われ、人を殺す技術を叩き込まれた。どうせ誰からも必要とされなかった命なのだからどこで終えようとも構わなかった。多くの人間を殺し、命の終焉を見届けてきた。


『死にたくない』と懇願しながら息絶えた者。『母さん、母さん…』と母を呼びながら事切れた者。パニックを起こしケタケタと笑いながら死んでいった者もいる。


任務を言い渡される度に、次は自分の番だと思ってきた。なのに何故か生き延びてしまった。


戦後は、以前から表の仕事として行っていたレストランの給仕に精を出し、そこの厨房で働いていた男と結婚し子供を産み、つまらない平凡な主婦として、彼女は新たな人生を歩みだしたのであった。



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