生後15日、はじめての吸血
知りたくなかった事実に打ちのめされて、昨日は結局本を見つけることができず――昨日の私は、今日の私にすべてを託したのだが……
お世話係がゴブリンから吸血王に変わりました。
――昨日、手加減をマスターしちゃったからね。
吸血王は私を膝の上に乗せ、前の世話係のゴブリンに負けない丁寧さで体を拭いてくれている。さらには、ゴブリンの時はポーションを使っていたのが、エリクサーにグレードアップされている。
体感的には、気持ち良いのだけど……ひいぃっ!
ボタッ ボタボタッと、不定期に生暖かい赤い液体――エリクサーではなく吸血王の鼻血が降ってくるせいでちっとも安らげない。
スライム的には血も栄養――それも高位魔族の中でもとび抜けて力の強い4天王の1人であるという吸血王の血は極上のお食事であるようで、私の忌避感を他所に体は勝手に落ちてきた鼻血を吸収しちゃっているのだ。
例え栄養価的に美味しかろうと、鼻血ですよ、鼻血!前世から、ゲテモノには手を出さない主義な私には辛すぎる!
逃げ出そうにも、手加減を覚えた吸血王の拘束は、力強くなんてないのにちっとも抜け出せないのだ。
拒否の意志を伝えるべく、鼻血を垂らされた瞬間両触手をバツにしてみても、鼻血を吸って消化しきるまで一時的にピンクスライムに染まる私の体に、「魔王様が私色に染まって……」とか言ってうっとりしている吸血王は気づいてくれないし、普段なら私のバツには過剰なまでに反応してくれる周囲の魔物も、吸血王が強者である為か、悔しそうな羨ましそうな様子を見せるだけで、私を助けようとは動いていない。
栄養価の高い鼻血を吸って、体はエネルギーに満ちてきている感じがするけど、精神はゴリゴリとすり減っていく……
昨日の私よ、すまない。今日の私もダメそうだ。
帰ってきて、前の世話役のゴブリン!
っていうか、吸血王は血を吸わす側じゃなくて、吸う方だよね!
いっそ吸われた方がマシーっ!――とはいえ吸わせる血もないんだ、種族的にね!
いやーーー!!
名前:まだない(生後15日)
職業:魔王
種族:スライム
Lv.1
HP 3/15
MP 3/3
【スキル】
ボディーランゲージLv.3 ※触手表現にて、肯定と否定だけは何とか通じる
吸血Lv.1 ※強い魔物の血を吸収することで生命力UP
魔王様、鼻血パワーで最大HPが5倍に……