02話 牛 覚醒!
「……接続を開始します……エラー……
再試行……エラー……再試行………エラー
……回線を切り替えます……エラー……
再試行……エラー…再試行………接続成功
……情報取得を開始します………………
成功しました……取得した情報から不要な
モノを削除します………ローディング…
再起動開始……」
真っ白な部屋の中央にある椅子に座っている、
1人の少女がいた。
白銀の髪に、色の無い瞳、青白い肌、白いワンピースを着ているが、その顔に表情は一切無かった。
小さく呟く唇だけが、微かに振えていた。
しばらくすると、少女に変化が現れた。
髪は一度虹色に輝くと、漆黒の色に染まり、
青白かった肌は、赤みを帯びて人肌の色になり、何度か瞬きをした瞳には、赤い色が現れていた。
「…動力確認……身体動作確認…視野範囲内認識確認…五感回路ローディング……オールグリーン……『オートドール』起動します」
何かに報告するように呟くと、少女は椅子から立ち上がり、白い部屋から静かに立ち去った。
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コゲコゲにされてから2日後、俺とあの巨牛は
畑仕事に精を出していた。
せっかく、良い田畑が広がっているのだから、
利用しないと勿体無い。
と言うことで、村の納屋にあった犂を牛に引かせ、俺は自慢の爪で一気に耕していた。
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ‼︎」
畑の土を跳ね上げながら、耕していく。
多少固まって硬くなった土も、ドラゴンの爪の前には新雪も同然!
あっと言う間に耕し終えた俺は、牛の方を見た。
牛は、筋骨隆々な体から湧き出すパワーにて、
畑の中を爆走していた。
そして、俺は気づいてしまった。
あの牛は、アホなのだろうと……。
その後、爆走して畑を滅茶苦茶にしてしまった牛に説教していると、ふと思った事がある。
そう言えばこの牛、名前を決めてなかったなぁと。
あれほど、一緒に色々やったのだ。
名前くらい、付けてみるか。
そう思い、牛に話しかける。
「いつまでも牛だと不便だな。
そこで、牛!……お前に名前を付けようと思う!…んだが、イイか?」
俺は牛にそう言って近づいた。
今迄俯いていた牛は、いきなり顔を上げ俺を見た。
その目はこれでもかと、見開かれている。
…が、俺の姿が見えなくなった為、キョロキョロと辺りを見回し首を傾げる牛。
「ああああああああれぇぇぇぇぇぇ⁉︎」
俺は、またもや空高く舞い上がっていた。
牛が顔を上げた瞬間、近づいていた俺は、
角で突き上げられたのだ。
どんなミラクルか!
空中で突っ込みを入れた俺だが、このままではまたもや、地面に突っ込んでしまう。
しかし!今回は大丈夫なのだ!
前回の失敗を機に、俺は飛ぶ練習を始めていたのだ!
その成果を披露しよう!
翼を広げ、風に乗る俺!
……………結果。
またもや地面に突っ込んでいる俺!
あっれ〜?おかしいなぁ?
何がいけないだろうか?
そんなことを考えていると、土の中から助け出される俺。
俺の尻尾を咥えて、土の中から引っ張り出してくれたようだ。
俺は、牛に礼を言う。
だがしかし!元はと言えば、牛が急に頭を振り上げた事が原因である。
そこはしっかり説教しておいた。
さて、本題の名前付けであるが、中々いいのが出ない。
そんな中、ポンと浮かんだ名前を言ってみた。
「…サラスってどうだ?
ツヤツヤ、サラサラな毛並みしてるし、
筋骨隆々なだけかと思ったけど、実は引き締まった、しなやかな身体付きをしてるから、ピッタリだと思うんだけど…」
すると、牛は大きく頷いてくれた。
良かった。気に入ってくれたようだ。
気がつくと、もう日が沈みかけていた。
「もう、こんな時間かぁ。さて、今日も色々あったから(主にコント的なモノが…)、帰るかぁ」
そう言って、サラスの背に乗せてもらい、家路に着いた。
家に着いた俺は、サラスを牛小屋に戻し(だって牛だから、家に入れれないじゃん!)
玄関を開けた。
するとそこには、行き倒れの美幼女こと、
リアがいた。
「…ト、トウヤ…」
「どうした!何があった!」
俺は慌てて、リアを抱き起こす。
「…トウヤ…お…」
「お?」
「…お腹すいたょ〜」
潤んだ瞳で俺を見つめ、盛大に腹の虫を鳴かせるリア。
俺は、リアを引っ張って食道に行くと、
急いで夕飯を作り、リアに出してやった。
リアは口いっぱいにほうばって、食べてくれた。
よっぽど、腹が減っていたのか。
その姿に、少しほっこりしてしまった。
食べ終わったリアは、また眠くなったのか、
うつらうつらしだした。
俺はリアの手を引いて、部屋に連れて行き、
ベッドに寝かしつけた。
部屋を出て、廊下を歩いていると、ドアを叩く音が聞こえた。
こんな時間に誰だろう。
そう思ったが、旅人でも来たのだろうかと思い、玄関へと向かう。
「はぁい、どちらさ…ま!」バァーン!!
ドアを開けようとしたその時、反対側から勢い良くドアが開かれた!
…外に開くタイプなのにである。
そして、響く大声量!
「御前様!見て下され!私お名前を頂いた『サラス』にございます!
あの後、気がつくと、私この様な姿になっておりました!」
そこに現れたのは、美しい黒髪でしなやかな身体をし、胸には見事な双丘がある美女がいた。
しかも全裸…美女じゃなくて痴女じゃん。
なんて突っ込みは出来なかった。
俺は吹き飛ばされた勢いで、また気絶していたのだ。
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数時間後、俺の前には昨日の全裸痴女が…
違った、美女になったサラスが正座して小さくなっていた。(服は着せている、サイズは色々あってないが…汗)
「で、なんでそうなった?」
気絶から復活して、サラスの大声量のせいで起きて来たリアと一緒に、サラスの話しを聞くことにした俺たち。
「…はい。実はあの後、小屋で休んでいると、
急に魔力の高まりを感じて、気が付いたらこの様な姿になっておりました」
端折り過ぎて、要領を得ない話しになっている。
あ!この子アホの子だった〜!
そう思って、リアを見るとフゥと息を吐き、
俺たちに話しかけてきた。
「…トウヤ。あなた、この子に名前を付けたでしょ?」
「ああ。名前無しは不便だったし、牛とは、色々あって友達だと思ってるからな」
俺の言葉に、リアはふぅんという様な顔をして、話しを続けた。
「その時に何か言わなかった?名前以外に?」
「何か……あ!確か毛並みが良いとか、実はしなやかな身体してるとか…言った気が」
その言葉を聞いたリアは、大きく息を吐いた。
「…きっとそれだわ。いい…」
そう言うと、リアはこの現象について説明してくれた。
サラスは元々魔物で、中位種の一つミノタウルス族の亜種だという事、サラス自体に性別は無く、同じ亜種に出会えた時のみ、性別が出来るタイプなのだと言う。
では何故、女性型になったのかというと、
俺の名付けの時の、要らぬ一言が原因だとか。
名前だけなら、魔物の能力や力の総量が上がるだけだが、俺の言った一言で性別まで決まってしまったらしい。
その結果、サラスは女性型に変化してしまった。
さらに上位種に進化を果たし、人の姿になれるようになったとか。
マジかと思ったが、ドラゴン自体が最上位種族に位置しているので、魔物同士だとあり得る話なんだとか。
話しを聞いていて、疑問に思った事があったので、リアに聞いてみた。
「リア。もしかして、俺も人の姿になれるのか?」
するとリアは、首を横に振り否定した。
「あなたは生まれたばかりの、赤子のようなモノ。人の姿になれるようになるには、もっとも〜っと、長く生きないとね。」
つまり最上位種族の俺は、すでに元々名前持ちでもあるため、人の姿になるには長く生きるしかないとの事だった。
がっかりする俺を、後ろから抱きしめる者がいた。
サラスである。優しく抱きしめられて、少し落ち着いた…だが背中に当たる双丘の感触に、全神経を集中する俺。
だって、男の子だもん。
「…トウヤのエッチ!」
リアに言われ、はっ!としてサラスの腕からすり抜けた。
サラスは、少し残念そうにしていたが、不要な誤解は避けるに限るのである。
「…おほん。ところで、サラスの服も用意しないとなぁ」
サラスに今着せているのは、この家の箪笥にあったものだが、サイズが合わなすぎて少しでも動こうものなら、色々出てきそうな感じなのだ。…何故こうなった?
「だけど、町に買いに行くのも、今は金が無いから無理だしなぁ。」
「私は、このままでも構わないのですが…」
頬を赤らめながら、サラスはそう言ったが、
今の格好では、色々なところから、お叱りがくるであろうから却下である。
「牛の姿には、戻れるのか?」
俺の質問に、サラスは頷いて答えた。
「じゃあ、しばらくは牛の姿になっててくれ」
「えぇ!それでは、旦那様を可愛いがってあげられないじゃないですか!!」
驚いた声を上げ、サラスは抗議する。
「誰が旦那だよ!てか、良く考えてみろ!
田畑で働く時に、半裸の女が華奢な体で犂を引くとか、異常な光景だからな!普通あり得ないから!」
「…でも、サラスは魔物だょ?」
リアの言葉は、無視して俺は考える。
いくら山奥にある村とはいえ、誰が訪れるか分からないのだ。
そんな時に、華奢な女性が重たい犂を引く姿は話題にならないはずが無い!
てか、下手すれば魔物だとバレて討伐されてしまう。
しかし牛の姿ならば、あまり怪しまれないはず!
それに他の魔物が来ても、角とか蹄とか武器になるからね。
そう考えを纏めると、俺たちはその日は、そのまま解散とした。
サラスがしれっと、俺の部屋に入って来ようとしたが、牛小屋に戻るように言って、部屋に鍵をかけて俺は眠りについた。
遅くなって申し訳ありません。m(_ _)m
早く書けるようになりた〜い。orz
(話数を間違える(;^_^A)