序章
その昔、力を求めた人間がいました。
その者は、力を求める余り禁呪にまで手を出してしまいます。
人を辞め、人外となり、それでもその者は力を求める事を止めませんでした。
いつしかその者は、世界のすべてを破壊してしまうほどの力を、手に入れていきました。
しかし、その行為は神々の怒りを買い、その者は滅されてしまいました。
肉体を失くし、魂を封じられ、力を奪われても、その者は神々に反抗し続けた。
ついに神々は、その者を消滅させることを選びました。
その人間のすべてを消し去り、世界から消し去りました。
そうして、その人間は世界から忘れられていきました。
しかしその者は、別の世界に転生をしていました。
転生する時に、残っていたほとんどの能力を失いながら、
神々の手から逃れたその者は、力を取り戻す事と神々への復讐を胸に、姿を消しました。
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その日は、朝から厄日だった。
アパートの玄関を出ると、誰かが吐き捨てたガムを踏み、
道を歩いていると、犬に吠えられ驚いた拍子に、ドブに足を突っ込み、仕事中も後輩の失敗を上司に責められ、昼に自販機で缶コーヒーを買ったはずが、何故か缶しるこが出てくる始末。
で、極め付けが今のこの状況…。
何故に目の前にダンプが?と思ったのも束の間、意識は真っ暗闇の中に吸い込まれて行った。
莢衣 兎也は、その日人生を終えるはずだった。
35歳。
上からは若手と言われ、下からは中堅扱い。
何かと板挟みになる年齢なのだ。
しかし、死ぬには若すぎやしないかい?
と思いつつも、これで終わりかぁという思いもあった。
しかし、いつまでたっても何の変化も無い。
ちょっと不安になる…。
意識は今だ、真っ暗闇の中にあるのに、何も起こらないと不安になる。
「もしも〜し、誰か居ませんかぁ?」
『…………』
返事が無いただの屍のようだ。
って、言ってる場合じゃない!
これからどうなるんだ?と思っていると、不意に意識が覚醒する。
「……やっと起きた。…寝過ぎだよ。」
ぼんやりした頭で、立ち上がり声のする方を見ると、見知らぬ美幼女がいた。
いや、幼女ではない。
身長が低いのと、幼い顔立ちの為そう見えたのだろう。
あと気だるげで、眠そうな目も年齢より幼く見える原因だろうか?
そう思って、目の前の美幼女?を見上げていると…?
……見上げる?…大人の俺が?……???
そう思い、辺りを見回し、自分を確認しようと、手を出すと…
「なんじゃ!こりゃ〜!!」
まさか、自分が往年の名ゼリフを絶叫しようとは!
いや、そうじゃない。
自分の手が、手ではないのだ!
いや、手は手なんだけど、鱗の生えた肌に大っきな爪が3本あるだけ。
その手で、自分の体を触って確かめてみると、全身鱗に覆われた
爬虫類がいた。
いや、俺は人間なんだが、体は爬虫類なのだ!
自分でも、訳が分からなくなってきた。
俺たちが居るのは水辺の近くだった為、意を決して水面に自分の姿を移すと……
鱗に覆われた肌に、長く伸びた鼻と口、その歯は何でも砕けそうに鋭くなっていて、ワニの歯より頑丈そうだ。
そして、こめかみ辺りから後ろへ流れるように伸びたツノ。
さらには、背中から羽が生え、尻尾まである。
あ、これドラゴンだ。
そして、俺は二度目の意識暗転をしたのである。
つまりは、気絶である!
書くのが遅いので、マイペース投稿の予定です。
生温かい目で、見て頂ければと思います。