奪還作戦
村から出ると外はもう日が沈んでた……ロロに工房と、子供達が捕まっているかもしれない場所を聞く、距離的にはそんなに離れていないようで、まずは工房の方へと様子見に移動する。
工房の入り口らしき場所には、見張りをしている人間が1人いる。
魔力探知で確認してみると、木の上にもう一人いるのが解った……
「入り口に1人と、木の上にもう一人居るようです。
両方一緒に黙らせられれば一番ですが、近づくだけでも難しいかもしれない状況なんですよね……」
今、俺達がいる場所は木から死角になる場所の茂みだ。
ここから出て見張りの2人を倒すとしても、すぐに見付かってしまい大事になる。
手段としては2人同時に倒すっていうのが1番なんだが……
「誰か上にいる敵を狙撃出来ないか?」
「私の魔法であの距離を正確に狙うのは難しいわ……」
ライラでは難しいか……確かに正確な場所も感知出来なければ、当てるのも厳しい距離だ。
「なら私がやりましょうか?」
「フューリー、いけるのか?」
「そうね……場所も解るし問題はないわ」
「それならば後は下の見張りだけど……」
「私に任せて下さい、気付かれずに倒すくらいなら出来ますよ」
発言したのはタニアだった。
彼女の実力も判らないし、ここは任せてみようと思う。
なんてったってサンドラ様のご推薦なんだから、全く心配はいらないだろう。
「解った。じゃあ、上はフューリーで下はタニアに任せる。
俺を含めた他の皆は周囲の警戒を頼む。
合図を出すのは遠距離を狙うフューリーが良いだろう」
作戦は決まった。
後は合図を待つばかりだ……
周囲に魔力探知を使い、近づく者がいないか確認している。
一応ブラッドにも広範囲での探知を頼んでおいた。
二重の警戒網を張っていれば、かなり安心だろう……
「それじゃあいくわよ……」
『待て!!』
フューリーからの合図を出そうとした時にブラッドからの静止がかかる。
同時に俺もフューリーに静止をかける……なんとか気付いてくれて止まってくれた。
『奥の方から多人数の反応だ。結構な数がいる』
「どうしたの?」
「奥から大人数で近付いて来ている」
自分の魔力探知を奥へと伸ばし確認すると、確かに結構な数が近付いて来ていた。
ブラッドにも頼んでいて助かった。
危うく正面から戦う羽目になってしまうとこだった……
少しづつ近付いて来て、視認出来る所まで来ていた。
人数が多かったのはどうやら子供達を連れて来ていたからだった……
これで全員の子供達がいるのかは判らないが、一気に片付ける事が出来るかもしれない……
「ロロ、見えるか?」
「うん、見える」
「捕まっている子供達はあれで全員か?」
「待ってて………………
正確じゃないかもしれないけど、殆どの子供達がいるのは間違いないよ」
「解った。ありがとう……
だけど、何しに人質の子供達を工房へ連れて来てるんだ?」
「解らないな……判断材料が少な過ぎる。
だがこれで手間は省けたんじゃないか?
ジン殿、このまま全員助けようじゃないか」
そこにいる人間の数は7人だ。
木の上の見張りを倒した後に突っ込めば、1人で1人づつ相手すればなんとかなるが、騒ぎたてられないように一瞬で終わらせないといけないな……
行動に移すなら早くしないと工房に入って行ってしまう。
「フューリー頼む、狙撃した後に一斉に仕掛ける。
みんな気を引き締めてくれ!」
一瞬で緊張が張り詰める。
失敗は許されない状況なのだ……
「いくわよ……」
フューリーが土魔法を勢いよく放つ、丸まった石じゃなくて尖った形に形成して飛ばした。
それを皮切りに、皆で飛び出す……
俺は脚力強化し、一瞬で敵との距離を殺した。
その後をタニアが付いて来ている……さすがは自分から言い出すだけのスピードだった。
上の見張りに狙撃が命中した瞬間に、ショーテルで手前にいた人間の首を斬る。
そして、次にたどり着いたタニアが、敵の開いた口の中に何かの魔法を掌底と共に打ち込むと、顔中から血を噴き出し倒れていった。
他の者がたどり着くまでに時間が少しある……その間に他の人間に攻撃を仕掛ける。
タニアも同じ考えの様で、2人同時に動き出した。
残るは4人だ……こっちに先に気付いた人間に向かってショーテルで喉を一突き、タニアも他の人間に手刀で首を裂いた。
遅れて来たライラがサーベルで眉間を突き、絶命させる。
次に着いたメロが水魔法で顔面を覆って、狙撃を終えて追ってきたフューリーが尻尾で串刺しにした。
これでここにいる人間達は全滅させたと思う……すぐさま魔力探知で周囲を警戒し、誰も居ないこと確認した。
「皆速すぎるぞ……」
最後に着いたウィリアム様が話してきた。
「急がないと危険でしたからね、上手くいって良かったです」
その後からロロが走って来る。
「みんなーーー」
「ロロ君!?
ロロ君だ!居なかったからみんなで心配してたんだよ」
子供達が泣きながら抱き合っている。
さっき起こった人間達の殺害に対して呆然としていたのにな……
「この人達が助けてくれたんだ。
今も皆を助けてくれたんだよ」
子供達が俺達を見回している。
ダークエルフと魔族に人間(1人は人間に化けているが)……まぁ他種族ばかりの一味だから珍しいんだろうか?
「皆さんありがとうございます。
でもまだお父さん達が捕まってるんだ……」
「心配しなくて良いわ、私達が助けてあげるから」
「お姉ちゃんありがとう……
でも、下にいる人間の数はいっぱいだよ」
「大丈夫よ。なんとかするから」
子供の扱いはライラが上手いな……
だけど、まずは子供達を安全な場所へと避難させないと。
「ライラとウィリアム様とメロで子供達を村で守っててくれないか?」
「でも、下の人間達が……」
「大丈夫だって、なんとかしてくる。
子供達をそこに連れて行くわけにもいかないだろう?
それに、少数の方が奇襲はかけやすいし、子供相手はライラが1番みたいだしな」
「解ったけど、本当に大丈夫なの?」
「心配すんなって」
「連れて行こうとしてる私達の心配はしてくれないのかしら?」
「フューリーとタニアの実力だったら心配なんていらないだろう?」
「言ってくれるわね……」
「私は問題ありませんよ。
ちゃんと助け出してみせます」
「……全く…じゃあ行くわよ」
「ライラ、子供達を頼んだぞ。
ウィリアム様、メロも子供達を守ってあげて下さい」
「解った。
無事に帰って来るんだぞ」
二手に別れ、俺達は工房に侵入する。
フューリーに見張りの1人に化けてもらい先行してもらう。
何が中で行われているのか解らないが、無事に助け出してやる……
今回もお読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想お待ちしています。
次回もよろしくお願い致します。