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子供

慎重に階段を降りて行くと、地下室へとたどり着いた。

警戒しながら恐る恐る入る……真っ暗と思っていたのだが、明かりはある。


中にはいくつかの棚に食料を備蓄してあり、食料庫として使っているようだった。


探知で感じられる場所は、地下室の奥にある棚の下の戸棚だ。

縦横1m位の戸棚だ。

これくらいに入るのって、ネズミかなんかなのか?


フューリーに場所を指差し、ゆっくりと近づく……


戸棚の手前まで来たところで一旦立ち止まり、開けるぞという合図を送る。

フューリーもそれを見て頷いてくれた。

ゆっくりと戸棚に手を近づけた瞬間、戸棚が勢いよく開かれる。

開けられた戸棚の中からナイフを持った手が飛び出してきた。


咄嗟に後ろへと仰け反って回避しようとした。

フューリーはナイフと共に伸ばされた手を握り、俺に到達する前に止めてくれた。


「出てきなさい!」


フューリーは出てきた腕を引っ張り、中の人物を戸棚から出した。

出てきたのは子供だ……腕を握っていたフューリーは子供だと解り、叱る様に言ったのだろう。


「お前らなんかの言いなりになってたまるか!

そんなになるならここで死んでやる」


中から放り出され、両手が自由になっていた。

持っていたナイフを喉元に向かって動かす。


脚力を強化し一瞬で子供の元へと近づき、ナイフを蹴り飛ばす。


「何で死のうとするのか解らないが、死んでも何にもならないぞ」


「お前らの所為じゃないか、お前らが父ちゃんや母ちゃん、兄ちゃん爺ちゃんまでも連れて行って……」


泣き崩れてしまった……この子がお前らって言っているのは、俺らの姿である人間の事を指しているのだろう……

人間の姿である俺らが話すよりも、ダークエルフの者が説明した方が理解してくれるかもしれない……


『ショウ、ウィリアム様達を連れて来てくれないか?』


『いいよ〜、じゃあ行って来るね〜』


呼んで来てくれる間はフューリーと2人でこの子を見張る事にした。

また、死ぬなんて言って危険な事にならない様に、危険な物は排除していった。


少し待ったところでウィリアム様達が到着した。

経緯を皆に話し、俺達は階段の上へ登っていった。


「人間がここを襲ったのかな?」


「そう思える様な発言だったわね……でも、今までの家を見てきても、争った形跡なんてなかったわよ」


「そういえば連れて行ったって言ってたな……どこかに捕まっていると言う事だろうか……」


「あのドワーフ達が黙って連れて行かれるなんて考えにくい事だけどね……」


2人でしばらく会話して待っていると、メロが呼びに来てくれた。

どうやら落ち着いたみたいで、話しをしてくれると言う事だった。


下へと降りて行くと、俺の顔を見るなり子供が警戒していた。

ライラの足元にしがみついている。


「ロロ君大丈夫よ。あの人は私達の味方をしてくれてるんだから」


「本当に……解った。姉ちゃんを信じるよ」


「ありがとうね、じゃあお話し聞いても良いかな?」


「うん…ちょっと前なんだけど、俺達の村に人間達がやって来たんだ。

人間達が来るのは珍しくないんだけど、今回は来た時から様子がおかしかったんだ……」


「人間が来るのは珍しくないって?」


「色々と武器なんかを造ってくれって言いに来るんだ。

今回もそうだと思っていたら違ってた……

来る人数が多かったんだよ……この村いっぱい居たんだ」


「それで、どうなったの?」


「みんなに無条件で武器防具を造る様に言ってきたんだ。

もちろん、みんな断ったさ……でも、アイツらはその家の子供達に剣を向けて人質にしたんだ。

俺は父ちゃんが急いで地下に隠れる様に言ってくれたお陰で捕まらなかったんだけど、周りの子供はみんなそうなったんだ……」


もしかして、ダークエルフとの戦争に使う武器防具を造らせる為にやったのか……当然人間達は諦めていないだろうから……


「それで皆は従うしかなかったんだ……大人達と子供達は別々に連れて行かれたよ。

俺が確認出来たのはここまでなんだけど、多分大人達は村から少し離れた工房に連れて行かれたと思うんだ。

けど、子供達がどこにいるかまでは解んない」


「そうか、ロロよく話してくれたな。

皆で助ける事にしようじゃないか、ジン殿頼めるか?」


「良いですよ。まずは子供達の居場所を探さないといけないですね」


「ねぇロロ君、何か心当たりはない?

ここだったら捕まえとけそうとか」


「工房くらい広い場所はないよ……

でも、あそこの洞窟だったら……」


「思い当たるところがあるんだな、とりあえずそこを教えてくれないか?」


ロロから正確な場所を教えてもらう事が出来た。

子供達を先に助け出せれば、大人達を逃がして人間を倒せばいい。

後はそこにいるかどうかだな……


「なぁフューリー、お前の変化で他の人間に化けれないか?」


「大丈夫よ。侵入して来いって事ね」


「理解が早くて助かる。

じゃあ、どっかで人間1人捕まえて、その人物にフューリーが化けてもらう。

そして、状況が解ったら再度作戦を立てて救出に向かうという段取りでいこうか」


「じゃあ、ジン殿の言う通りで異論はないな?

なければ行動開始だ!」



今回もお読みいただきありがとうございます。

ご意見ご感想お待ちしています。


次回もよろしくお願い致します。

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