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ブランの様態も安定していたのでそっちは一安心だ。
それと別に昨日のライラの件がどうなったか心配だから会いに行くことにした。
探すのには時間が掛からなかった。城の入口でウィリアム様と話していたからだ。
「あっジン、ちょうどいいところに来たね」
「俺も探していたから丁度良かったんだけど、どうしたんだ?」
「ウィリアム様にドワーフ領の話しを聞いていたんだ。それで、王に今から2人で話しをしに行こうかってなってたの。ジンも予定が無ければ一緒に行きましょう」
「俺は構わないよ。ウィリアム様、ご一緒しても良いですか?」
「大丈夫だ。君が来てくれた方が話しをしやすいかもしれないからな。引退した俺が何回も国政に口を出してると思われると問題だから」
「ありがとうございます。では同行しますね」
それから3人で国王の元へと向かった。今回は謁見の間ではなく、バルコニーに通された。
「おくつろぎ中にすいません」
「いやいや構わん。ウィリアムまで一緒で今日は何用かな?」
「私からの提案なのですが、今、私がアースドラゴンの素材を持っていまして、それを加工する為に色々と当たってみたのですが、国内では扱える者がいないという事で、ドワーフ領に出向きたいと思っています」
「ドワーフ領にか?確かに彼らは色んな種族と中立関係であるから、話しは聞いてくれるだろうが……」
「何か問題があるんですか?」
「それに見合った対価を請求してくるという事だ。ただでさえ扱いの難しいドラゴンの素材だ。何を請求してくる事か……」
「それなら国の葡萄酒はどうだ?やつらは酒に目がなかったろう」
「それはいいけが、どれ位の量を言ってくるかという事と、それを運ぶ方法が問題だ」
そんなにがめついのか?俺が知ってるイメージだと、確かに酒好きで性格は豪快な感じなんだが……
「自分から提案があるんですが、よろしいですか?」
「ここで畏まって話さなくていいぞ、気にせず申すがよい」
「ありがとうございます。
私が考えている部隊編成で技術部隊と言うのがありまして、そこで彼らの技術を欲しいと思っています。
今回同行の許可が出ればその技術を少しでも盗めればと思っていましたが、加工を依頼するのに問題が色々とあるのであれば、技術提供も一緒に依頼して国に来てもらえばどうでしょう?」
「なるほどな、それなら輸送関係の問題なんかは一気に解決するが、ドワーフ達は易々と来てくれないと思うぞ」
「そうだな、特に戦争中の我が国に好き好んで来る者もおるまい」
「確かに……とりあえずは行ってから考えるしかないでしょうね」
「交渉次第だな。では、俺も同行して交渉を行おうか?」
「……な、兄さんが行くと言うのか?」
「それだったら話しは早いだろ?ある程度の権限をくれれば成功させてくるぞ」
「……そうだが、それに対しての危険が多過ぎる」
「心配するな。ジン殿とライラが同行するなら大丈夫じゃないか、不安ならもう数人増やしてくれればいい」
「試験で集まっているし、魔族の者達もいる今なら戦力はある程度あるが……」
「サンドラ様に話して誰か魔族から出せるか聞いてみましょうか?」
「それならば兵士の訓練にも差し障りもないし問題なかろう。それは俺から話しておこう」
「兄さん……解った。それで了承しよう」
「ありがとうございます。では、早めに準備を進めて明日にでも出発出来る様にしておきます」
「俺もリュードに訓練を任せなきゃいかんし、サンドラおばさんにも話しを通して来なきゃいかんな。
選定結果が全員に届くのは2〜3日後だろう、部隊の編成で集うのはいつにするんだ?」
「私は考えていないぞ、そっちに任せていたからな。そっちで決めてくれた結果に従おう。決まったら報告してもらえれば、それに合わせて段取りをしよう」
「解りました。今日中に皆で話し合って報告します。決まり次第報告に参ります」
なんだかんだでどんどん決まっていく、言い出しっぺのライラはオロオロとしていた……
「じゃあ、兄さんにジン殿、ライラもよろしく頼んだぞ」
「また後で報告しに来る」
話しもまとまり、部屋を後にした。ウィリアム様が他の者への通達をするから、先に行っててくれとの事だったので、先にライラと2人で会議室へと向かった。
会議室へ入室すると、もちろんの事一番乗りだった。そこで腰掛けるとライラが話し始める。
「言い出したのは私なのに、なんだか全部決めてもらっちゃった」
「国王と元国王が居ればそうなるだろ。流石と言うか何と言うか……」
「その会話を一緒にやっていたジンにもびっくりだよ……私は付いていけなかったもん」
「いやいや、やりたい事伝えただけだし、大した発言はしてないよ」
「私なんて最初以外喋ってないけどね。
でも良かった。ドワーフ領に行ける様になって」
「そうだな、俺も少し楽しみだよ。
知ってる国はここと魔族領の少しだけだからな。どんな所か今からウキウキしてる」
「ジンとまた旅が出来るのも嬉しいかな……」
「そんなに前の事じゃないけど、2人で行ったのが結構前に感じられるな。
戻って来て色々とあったからなぁ……遊びじゃないけど、俺も一緒に行けるのは嬉しいな」
ライラが俺が座っている席に近づいて来る。そして、後から抱きしめられた。
「早く何もかも終わって、ゆっくりしたいね」
「そうだな、前も言った通りに時間が取れたら2人でゆっくりしたいな……」
言った瞬間にドアが開く。中にライトが入って来たのだ。
しかし、その事にライラは気づいている様子もなく、抱きしめたままだ
「ライラ……」
「どうしたの?」
「……すいません、姉さん会議室でイチャつくのはどうかと思いますが」
ライラは焦って俺から急ぎ離れる。
「入って来る時は、ノックぐらいしなさいよ!」
「したさ!姉さんが気づいてなかっただけだろう」
「ライト、気を悪くしたなら謝る」
「いえいえ、どう見たって後から抱きついていた姉さんの方が節操がないのは解ってますから」
「ライト、何よその言い分はーーー」
「待てって、とりあえず落ち着こう。ここは会議室なんだぞ」
実は扉の向こうで、入るタイミングを失った人物がいた。多分リュードだと思う……
「リュードさん、入って来て大丈夫ですよ」
「すまない、中が騒々しくて入るのを戸惑ってしまってな。しかし、よく私と判ったな」
「外に誰かがいたのは解っていたけど、こんなに早く来れるのはあなたとライトだけだったからですね」
「そうか、それで騒ぎの原因はなんだ?」
「「すいません……」」
「ただの姉弟喧嘩ですよ。騒ぎ立てして申し訳ありません」
「それならいいが、少しは場所をわきまえるんだ」
「「以後気をつけます」」
「全く、ライトは隊を預かっているんだ。部下に見られても……」
この後、アリとサリが来るまで絞られていた……姉弟が少しやつれている様に見えたのは間違いじゃないだろう……
皆が集まり会議が始まる。
国王と話した内容を伝え、これからの事を話し合っていく。
通知書はほとんど出来上がっているみたいで、後は部隊別に集まる日付けを決めるだけだった。
現状は帰って来れるのが何日後か不明だった為、そこは一旦リュードとライトに任せて合同で訓練を行ってもらうようにウィリアム様から指示された。
とりあえず戻って来るまでの間に、部隊管理としてリュードが近接部隊と憲兵部隊を、ライトが魔法剣士部隊と弓部隊を、サンドラ様とリレイで魔法使い部隊を、アリとサリで後方部隊を、ケインが工作部隊をとなった。
集まる日付けについては5日後と決まり、会議は終了となった。
俺は、これからの準備をする為に一旦部屋へと戻った。
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