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沈静

ブランの体は壁にメリ込んでいるが、まだ動けそうだ。

魔獣化したブランはメリ込んだ体を出そうと、震える腕で壁を押している。


まだやるのか……どれくらいやればヤバいのかが判らない。かと言って手加減すればこっちが殺られかねない。


ブランは壁から脱出してきた。こっちに身構えて地面を蹴るが、その足に力がない。

飛び跳ねようとするが、フラフラと倒れそうになっている……

それならと顎へと軽い攻撃をまとめて数発叩き込んだ。すると、糸の切れた人形の様にその場へ崩れ落ちた。


『呼んで来たよーーって何これ?医務室はボロボロだし、あの人魔獣化してるし』


『ショウありがとう、後はこっちでやってみる。

体の中に入って、ゆっくり休んでくれ』


「アリ、急に呼び出してすまない。急ぎでコイツの魔力の流れを元に戻してくれないか?」


「りょうかーーーい。でも、とりあえずこの人の事説明してねーー」


「イルニードと同じ魔獣化してるんだ。魔獣化に対しての自身の抵抗力が弱まってしまってて、それの所為で魔獣化してしまって自我まで失ってしまってるんだ」


「……う〜ん、元に戻るの?」


「姿は解らないけど、自我は取り戻せる筈と思う。

今は完全に魔獣と同じ状態だからな、抵抗力を高めればなんとかなると思うんだ。

それに、自身の魔力を正常な流れに保つ事で抵抗していたみたいだから、それさえ戻せれば現状は脱する事が出来ると思う。

可能性ばかりの話しですまないが、今出来る事はそれしか考えられないんだ」


「難しい事は解んないや、まずはこの人の状態を診てみるね」


アリはブランの体に手を当て、状態を探っていく……しばらくそうした後に手を放しこっちを向いた。


「ねぇねぇ」


「どうした?」


「魔力の流れっていうか、この人の中に流れてる魔力が真っ黒過ぎて元々の魔力が見つかんないよ」


「なっ…全部変わってしまってるのか?」


「どこかにあるとは思うんだけど、見つかんない」


どうしたものか……そうなると探している間にも悪化してしまうじゃないか……

ひとつだけ方法はあるんだが、それをやると反動がどんなものかも解らない……


「アリ、もう少し探していてくれないか?」


「わかったー、頑張ってみるね」


『ブラッド、ちょっと聞きたい』


『やったらダメだぞ、やったらどうなるか大体の予想はつく』


『まだ何も言っていないんだけど』


『チェーンの効力で無かった事にしようとしているんだろ?』


『正解……予想までつくのか』


『当然だ。チェーンの力は万能だが、誰かに使う際にその事象に対する反動はその事象を自分で肯定する事になる。

怪我の場合は怪我分の痛みを受ける事になる。今回使った際に相手の魔獣化を否定するなら、自身の魔獣化を肯定する事になる。

お前さんが魔獣化すると言う事だな』


『それを前提でやった後に、もう一度チェーンの効力で自身の魔獣化を否定したらどうなる?』


『前にやったろ?自身の怪我などを否定する場合は、自身の魔力を消費して解消される』


『それなら問題は……』


『あるな、そもそも対価が解らないでやった後に、自身の魔力上限値を遥かに超えてましたってなれば』


『昏倒して2度と目を覚まさない事になる』


『その通りだ。つまり対価が解らないものに対して行うのは危険しかないって事だ』


『この方法は無理って事か……』


『だかな、あいつの魔力をあった事にするのであれば』


『それなら俺の魔力が減るだけで済むって事か』


『その通りだ。

チェーンの力は過ぎた力だ。安易に使えば恐ろしい事態を招く事になる。それを絶対忘れずにな』


『あぁ、ブラッド助かった』


「アリ、まだ見つかりそうにないか?」


「……うん、予想以上に黒い魔力が邪魔してきて見つかんない」


「そうか、ちょっと交代してくれないか?」


アリがその場から離れ、その位置に屈んだ。


さて、チェーンにイメージを通して……発動させると自分の魔力が減っていく。つまりは成功していると言う事だろう。

しばらくその状態を続け、感覚的に自分の魔力を半分くらい費やした後、アリに話しかけて交代した。


「どうだ?」


「うん!わかるよ。これなら大丈夫」


「じゃあ頼む……」


どっと疲れが出て、その場に座り込んでしまった。


「わたしに後は任せて休んでてーー」


アリは、ブランに当てた手に魔力を込めていった……




―――――――――――――――――――――――――――――――




アリが汗を流しながら魔力の流れを戻していっている。始めてかれこれ30分位は経っているだろう……

今の所、目に見えた変化はない。


『ブラッドどうだ?流れは戻っているのか?』


『あぁ、凄いもんだな。ほぼ戻ってきている。もう時間は掛からないんじゃないか。

ただ、お前さんが言った通り元に戻るかどうかは判らないけどな』


そうだ。姿が戻るかどうかは判らない……イルニードもそのままの姿で出て行ったから、その後の姿を見ていない。


「終わったよーーーー。とりあえずは様子見だねーーー」


「そうか、ありがとうな。後は監視を付けて経過を見るしかないか」


「そだね。魔力も安定して循環してるから、やる事はこれ以上ないもんね」


『ショウ、すまないが見張っていてくれないか?後で交代をよこすから、それまでの間を頼む』


『う〜ん、解った。じゃあ、それまで見張っとくね』


『ありがとう、じゃあ頼んだ』


ショウを呼び出して見張りを頼んだ。


「アリ、契約精霊に見張りを頼んだから、とりあえずは城に行こう。来てくれて本当に助かった」


「いいって事よ〜。じゃあ戻ろうか〜、精霊さんよろしく〜」


ショウはアリに手を振った。それを見て城へと戻る事にした。

姿が戻ってくれる事を願って……



今回もお読みいただきありがとうございます。

ご意見ご感想お待ちしています。


次回もよろしくお願い致します。

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