説得
朝練を終えて、昨日の場所に向かうとブランが立っていた。
「もう何か解ったのか?」
「ちょっとな……簡単に情報は手に入れられたぞ」
「極秘裏にやっていたんじゃないのか?」
「いや、同志を募っていたようなんだ。俺の部下に話しを来たそうで、そこから話しを聞いた。
ほとんどアンタが言う通りだったよ……」
ケインの予想は当たっていたか……早く対処しないとマズイな。
「そうか、それで主要人物達は解ったのか?」
「それは今日調べる予定だ。夕方には判るだろうから、後で報告する」
「助かる。じゃあ、すまないが頼むぞ」
「頼まれなくても自分の利益の為だ」
「そうだな、じゃあ後でな」
その後試験会場へと向かった。
面接室の前でケインが立っていた。ケインも何か掴んだのだろうか?
「待ってました。昨日の話しで報告したい事がありまして」
「それだったら俺もあるが、ケインから話してくれ」
「そっちでも何か掴んだんですね。では、私から報告します。
昨日の予想は当たっていました。それに数人の怪しい人物の後を追って確認したんですけど、他の者に協力を求めている様でした。
随分と計画自体の進行が早いんです……どうなっているのか」
「おおよそ内容は同じだな、主要人物は今日の夕方には判るらしいから、それを確認でき次第行動だな」
「そうですか、それなら私も付き合います。どういった経緯で計画が進行されてるのか知りたいですから」
「じゃあ、今日の試験が終わったら一緒に来るといい。まずはしっかりと仕事を終えようか」
「ありがとうございます」
お互い面接室に入り、今日の仕事の準備を始めた……
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今日の面接も終わったが、今日中に試験は終わらず明日に持ち越しになった。残りはそんなにいないようで、明日の昼には終了となるだろう。
選定を行う為に皆で集まり、選定作業を行っていく。
流石に何回もやれば慣れたもので、最初に比べれば短い時間で終わっていった。
作業も完了し、皆の報告を行う時間になった。現状が把握出来ているし、報告しておく。
ケインと一緒に話しをしていくと、みんな動揺している様に見えた。
「して、その対応はどうするつもりでいるのだ?」
「出来れば説得したいと思います。まだ、実行段階でもないでしょうから、事実を話して解ってもらえれば止める事も出来るんじゃないかと……」
「それなりの覚悟で行動している筈だぞ、そんなに簡単にいくとは思えんが」
「ウィリアム様の言う通りかもしれませんが、説明だけはしないといけないと思います。それで引き下がってもらえないなら、状況に応じて対応していくつもりです」
「私も付いて行こうか?」
「人数が増えれば増えるだけ警戒させてしまいます。俺とケインでここは対応させて下さい」
「うむ……そうだな、任せるとしよう。結果は知らせてくれ」
「解りました。では、これで締めます。今日お疲れ様でした」
締めの挨拶を後にみんなと一緒に部屋を出て行った。
部屋を後にし、ブランの待つ場所へとケインと向かって行ったがブランがまだ来ていなかった。
「ブランはまだみたいだな……」
「協力してくれる人はブランって言うんですね。ここで待ち合わせだったんですよね?」
「あぁ、そうなんだけど、居ないんだよ。何かあったのか?」
その時、こっちに向かって来る人がいるのを確認する。見た感じブランとは違う、でも間違いなくこっちめがけて来ている。
「はぁ…はぁ……す、すいません、ジンさんで間違いないですか?」
「合っているがなんだ?」
「ブランさんからの言伝で、急いで知らせてきて欲しいと頼まれたんです」
「ブランに何かあったんだな?」
「はい、ブランさんは頼まれて追っていた人物に囲まれてしまってます。助けて欲しいと伝えてくれと言っていました」
「場所はどこだ?」
「付いてきて下さい。案内します」
「ケイン行くぞ」
後を追って走り出す。危機的状況なのかは判断出来ないが、急いで行った方が良いだろう。国家を謀ってまで行動する連中だし……
たどり着いたのは外に造った宿舎だ。事が起きているのは3階らしく、階段を駆け上がる。
3階に着くと人が、ある一室の前で壁を作っていた。
「何をしているんだ?」
人垣の後ろで声を出した。囲んでいたダークエルフ達が一斉にこちらに向く。
「面接官さん達ですか、アンタ達には関係のない事なんで、黙って帰ってくれませんか」
「ここで起きている事の責任は俺らにあるんだが、まずはそこを退いてくれないか?」
「人間共には関係ないんだよ!さっさとどっかに行きな!」
「声を荒らげて言う事を無視すると思うか?残念ながら通らせてもらう」
威勢のいい人物に近づく。すると奥から別のダークエルフが出てくる。
「すいません。大きな声を出してしまって、そこを通しなさい」
「ムートさんしかし…」
「いいんです。ここでの責任を負って頂くそうなので」
ムート……俺の面接には来なかった相手だ。そっと後ろを見てケインに確認するが、ケインも知らない様で首を横に振っていた。
人垣を通してもらい中に入ると、ブランが倒れていた。
「お前らブランに何をした?」
「何をしたも何も、彼が攻撃を仕掛けてきたので反撃したまでです」
近くで確認すると至る所に怪我を負っている。流血はしていないが、打撃か衝撃波で何度も攻撃されたのだろう……
「反撃の度合いを越えているようだが、ここまでする必要があったのか?」
「彼はしつこくてですね……気を失うまで攻撃したんです」
「何故こうなったかを説明してもらえるかな?」
「いいですよ。我々が集まって試験の事について話していた時に、急に彼がこの部屋に入って来て弓を構えたのです。
何故弓を向けるかと聞いたんですが、答えてくれませんでした。なので、起き上がれなくなるまで攻撃して気を失ってもらったのです」
「どうしてか解らないのに同族に攻撃する事なんてないだろ?お前らに何かなければ弓を向けたりしない筈だ」
「あなたは彼を知っている様ですね……では、彼を差し向けたのはあなたですか?」
「差し向けた……そうだな」
こいつらはどこまで計画しているんだ?ここに来た時点で罠にハマっている気がする。
何を画策しているのか解った時には遅いのかもしれない……
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