試験開始その4
キャメロの模擬戦が終了し、選定者の席へと移動する。
模擬戦の選定者はライトとリュードが行っている。他の会場の選定者は、ウィリアム様が剣技を、リレイが代行で行っていた遠距離戦をサンドラ様が今は行っている。補助の質疑応答と実践をアリ、サリの双子が担当を、ケインが次の面接担当だ。
「お疲れ様です。リュードさん、どうです目を引く人はいましたか?」
「今のところはなんともですが、さっきガルフを倒した彼ですが」
「キャメロですね。彼はどうですか?」
「ジン殿が肩入れするのも解る気がします」
「バレてましたね。ちょっと不安そうだったので作戦を伝えたんですが」
「公平に査定する場なので、あまりそういう事は……ですが、彼は素質があるようですね」
「私も気になっていたんですが、何をしたんです?ガルフを倒すなんてビックリしたんですが」
ライトが横の席から話し掛けてくる。距離は離れていたし、何か魔法を使った様子も見えないから気になっているんだろう。
「あれはな、水属性の魔法で倒したんだよ」
「水属性ですか?ですが、魔法が使われた様に見えなかったんですけど」
「キャメロの得意魔法は植物操作なんだ。それが特異な魔法で協力なんだけど、こういった植物の無い場所では不利だ。
そこで、植物操作の際に行っている水属性の魔法操作を使ったんだ」
「どういった事ですかな?確かに魔力の発動は確認出来ましたが」
「キャメロは植物操作の際に植物の中にある水を操作して動かしているんです。そして、人の中にも水分が存在しています」
「その水分を操作して相手の体の自由を奪い、自滅させたと言う事ですか……」
「正解ですね。もう少し詳しく説明すると、植物は魔力を纏っていないので自分で触る事なく操作していますが、人は魔力を纏っています。なので、一旦接触する必要がありました。
キャメロは奇襲を行っている際の移動は早く、動き自体良かったので可能と思いそれを指示しました。
そして、ガルフに接触し自分の魔力を接続し、体内の水分を操作しガルフの持っていた武器で自身を殴らせたって訳です」
「そんな事が可能なんですね……着眼点の違いと言うか、思ってもみませんでした」
日本ではよく聞く体内の70%は水分で出来ているってやつだ。メディアや学校で知る常識的な内容だが、この世界では当たり前の事ではないようだ。
「まぁ、俺がやろうとしても出来ないと思うけどな。あれがキャメロの魔法の素質ってやつかな」
「もしかして、技術部隊を創る理由って」
「そうだな、こういった魔法の発見なんかをしていって、戦闘で役立ててもらおうと思ってる。人を選ぶだろうが、戦力強化は出来るだろう」
人間族より優れている魔法やスピードをもっと活かす為の部隊の設立だ。戦闘技術が向上すれば間違いなく有利に戦えるし、人数という不利を補える筈だ。
「とりあえずは他の部隊の選定が先だろうけど、あって困らないだろ。憲兵部隊をリュードさんに任せる事が多くなるだろうけど」
「私は構いません。それが我々の為になるなら尚更ですが、きっちり仕事はしてもらいますよ」
「そこは気を抜きませんので大丈夫です」
次々と模擬戦が終わっていく中、話しをしながらもしっかりと査定している。仕事の出来る人は違うな……
全ての模擬戦が終わるまでその場で2人と一緒に見続けた。特に目立った人員は居なかったが、これから部隊を選定されていってどれだけ変わるかは楽しみだ。
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され、今から皆で部隊分けの時間だ。評価点を見ながらどこに入れるかを判別していく。
その中でも選定者達の査定で、特に欲しい人材には評価点と別にその部隊の名前を書き、重複していればまずは話し合いで決め、まとまらなければ公平にクジで決める事になる。
ちょっとしたドラフト会議みたいで少しテンションが上がる。
先に何も書いてない人物を評価点次第で振り分けていく。どこの種目で能力が高いかで選ぶだけなので割と楽だが、評価点の最高値が同点だった際は話し合いを行う。
ただし、工作部隊の評価点が高い者は少なく、評価点の最高値が工作部隊の面接時の点数と同数であれば工作部隊を優先した。
「おおよそ分け終わったな。じゃあこれから欲しい人員が被った者を相談して下さい」
とは言ったものの、引き合いにかけられた者はわずか3名。その中に自信のなかったキャメロが入っているのが不思議だったが、指名した隊の名前を見てなるほどと思った。
キャメロを欲しいと書いた隊は、魔法使い部隊と憲兵部隊だ。つまり、代理で選定していたリレイが選んだのとリュードが選んだって事だ。
リレイは一緒に戦った仲だから本当の能力を知っているし、リュードは模擬戦の時の力を見たからだろう。
「うちの部隊が関わっているのはキャメロだが、俺の本音を話せば魔法使い部隊で鍛えて欲しいが、自分が面倒をみたいって思うのが半々です」
「妾は直接見てないが、お主が見て素質があるのならば妾が直接鍛えてやるが」
サンドラ様が直接となると成長は期待出来るが、人格まで変わりそうだな……けど、それで度胸がつけば結果オーライかも
「私が欲しいと思った理由はジン殿が目をかけていらっしゃったからですから、そこはお任せします。サンドラ様に直接鍛えて頂けるならば、その後はかなりの期待大と思われます」
「なら、キャメロは魔法使い部隊に決めましょう。サンドラ様、よろしくお願い致します」
「よかろう、ジンの見込み違いではない事を思って鍛えてやろう」
キャメロの話し合いが終わると、他の2名も終わっていた。2名とも近接部隊と魔法剣士部隊だったので一気に片付いたみたいだ。
「全ての人員の振り分けが終了しましたので、今日の選定は以上で終了したいと思います。皆さんからなにかあればどうぞ」
すぐにウィリアム様が挙手し、発言を開始する。
「明日からの一般の申し込み者の人数がおおよそ解ったから報告したい」
「早かったですね。そんなに人数が増えなかったって事ですか?」
「ところがその逆で大幅に増えたのだ。昨日時点で300人超だったが、本日の最終受付の合計数がなんと……1000人弱だ」
またなんて人数来たんだ……絶対1日で終わらないし、宿舎の部屋数も足りないぞ。
最大で450人は泊まれるが、残りの550人はどうしたもんだ……
「サンドラ様、急造でもう1舎造れたりしますか?」
「問題はないが、残りの敷地が狭くなるぞ?」
「じゃあ外に造るしかないんでしょうか……」
「上に建てるには不安があるわ…実質外に造るしかないよのぉ。まぁ明日までにはやっておくから心配するな」
「なにからなにまですいません。では、よろしくお願い致します」
明日からが忙しくなるだろう……ケインが行っている面接の手伝いをしないと滞りそうだ。
ケインに了解もらって手伝うとしよう。それと、面接で聞く内容もだ。
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次回もよろしくお願い致します。
追伸 試験開始その2の広さと、部屋数を間違えていましたので修正しました。以後気をつけます。