魔法纏い
さてと朝の訓練も終わったし、朝食食べてケインにお願いするか……
食堂へと向かうと既にケイン達はいた。
ケイン達は違和感はあるよなぁ、人間と戦争してるのにダークエルフの中で普通に飯食ってるぞ…それを言ったら俺も同じかな?
朝食を食べ終わった後、ケインに話し掛けた。
「なあ、ちょっと模擬戦をしないか?」
「良いですけど、どうしたんですか?」
「選定が終わった後に訓練を考えてるんだけど、ケインの実力が明確じゃないからさ、修練場でやって周囲に知らしめとこうかと思って」
「そう言う事なら構いませんよ。この後すぐにですか?」
「何か予定があるなら外すけど、良ければ今からかな」
「予定は無いですから大丈夫です」
ケイン達とライトを呼び掛けて再び修練場に向かう、既に数人が訓練を行っていたので、話しをして少し場所を譲ってもらった。
「お相手はジンさんですか?」
「実はライトに頼んでいるんだ」
「そうですか、少し残念ですね。クリフを倒した実力を肌で感じたかったのですが……でもライトさんが相手でも面白そうです。では、よろしくお願い致します」
「こちらこそよろしくお願い致します。力不足で申し訳ありませんが、では……」
2人が構えた。武器は木造でライトはサーベルでケインはダガー、お互いスピードでは自信があるみたいだからいい勝負になるかな?
準備もいいみたいなんで……
「はじめっ!!」
始めに動いたのはライトだ。先制をとって優位に戦いたいのだろう…
「いきますっ!」
ライトが最小限の動きで最速の突きを放つが、ケインがライトの周りを円を描いた様に回転し背後をとる。
初撃を外したライトは背後のケインに向かって横斬り、ケインはバックステップで回避し再度接近を試みるが、ライトが突きの連続攻撃で直線での接近をさせない。
そこでケインが奇妙な行動をとる。直線での接近出来ない状態の中、真っ直ぐに進路をとる。
しかし、ライトは動揺せずに突きを放ちながら前進。するとケインの上半身に向かって突いた剣をギリギリで回避し、下を潜って前進している。
刹那ケインから蹴りが発せられ、ライトは回避を余儀なくされる。
「危ないとこでした……」
「いやいや、手合わせ程度で格闘術まで出すとは思いませんでしたよ」
一言づつの会話をした後、両者が再び接近。リーチではライトが有利だが、接近され過ぎるとケインに分がある。
ライトは今までと違う軌跡の突きを放つ、手首のしなりを利用し途中で狙いを変えていく。
ケインは回避を選ばす、サーベルをダガーで受け反撃を狙うが、ライトの剣の引きが早く反撃を断念し高速で移動を開始。
ライトも追うように移動をするが、スピードではケインが上の様でライトが追いつかなくなる。
スピードで負けてしまったライトはその場で立ち止まり、ケインの移動方向に体を向けている。最小限の動きでスピード差を埋める作戦のようだ。
ケインは撹乱を狙い接近の期を伺うが、ライトの体の向きが自分を正面で捕らえて来る為、攻撃のタイミングを伺っている。しかし、次の瞬間ケインのスピードが格段に上がる。
「久し振りに少し本気でやります」
これはスピードでいえばクリフの光っている状態に近い、目で追うのが難しいくらいだ……2日間ではあるが、魔力探知の練習のお陰で感知する事は可能になっていた。
ライトにも魔力探知の練習に付き合ってもらっていた為、やり方は教えていたがぶっつけ本番じゃあ厳しいか……しかし、スピードが上がる前と比べてケインが発している魔力が大きくなっている。魔力を使ってスピードを上げているようだ。見た目にそんな変化は感じないが……
ライトはケインを正面で捕える事が難しくなっている。ケインは一気に接近しライトの足を蹴り転倒させた。そして、倒れたライトの首元にダガーを押し当てた。
最後は一瞬で決めたか……魔力探知がしっかりと出来なければ対応出来ないスピードだったし、まだまだ本気じゃなかったみたいだな。
「参りました……」
ライトは負けを宣言する。回りにいたダークエルフ達は呆気にとられていた。それに一緒に見ていたアガートも驚いていた。
「勝者ケイン!」
ケインはダガーを首元から離すとゆっくりと立ち上がり、倒れているライトに手を伸ばした。ライトもその手を掴み立ち上がった。
「私では荷が重かった様です。まだまだ本気を出してもらえなかった」
「いえいえ、ライトさんは強かったですよ。場数を踏めば追い付かれてしまうかもしれません」
「ありがとうございます。出来ればまた、手合わせお願い致します」
「こちらこそ喜んで、ライトさんならいつでも構いませんよ」
「なぁ、さっき一瞬で速くなったのはなんだ?見た目に何の変化も見られなかったが、急に魔力が膨れ上がった様に感じたんだが……」
ケイン達に近付きさっきの違和感の確認をしてみる。
「さっきのは《魔法纏い》って言いまして、名の通り魔法を体に纏わせて、身体能力を向上させる技術です」
「ちょっと前に見たクリフもやっていたが、その時と違って変化が解りにくかったな」
「そうですね、私が得意とするのは隠密でして、クリフみたいに派手に光りませんよ。それに使った属性が違いますから」
確かに魔力を纏うのであれば何らかの属性を使うのは当たり前か、クリフのはどう見ても光属性で、ケインが使っていたのは……
「風属性の魔法纏いって事か……」
「ご名答です。風の魔法纏いは大きな変化も少なく、相手の裏をかくのに最適でして……移動する為の空気抵抗を減らしたり、移動の推進力にしたりと便利なんです」
確かに道理にあっている。サンドラ様は自身に風魔法を当てて浮いていたが、魔法纏いを使えば自分から発して移動する事が可能だ。
「しかし、これで尚更選定とその後の強化にケインが必要になったな。試す様な事をしてすまなかったが、よろしくお願いするよ」
「お気になさらないで下さい。誰かに認めてもらうには必要な事でしょう、特に種族が違えば尚更です。こちらこそよろしくお願い致します」
「じゃあ、夕方に会合を行うからライトと一緒に会議室へと来てくれよ。頼んだぞ」
ケインはこちらの話しに頷くとライトの方に向き、話しを始めていた。
俺はその場から去り、少し部屋に戻る事にした。
さっきの魔法纏いに関してショウに聞いておきたかったからだった。クリフ戦で行ったあれが闇魔法の魔法纏いだったのか確認したかった。
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夕方まではショウに魔法纏いの事を聞いたり、ブラッドと少し話しをして過ごしていた。
ようやく使える様になってきた魔力探知と、新たな技術の魔法纏い……この世界には自分が思っている以上に色んな戦闘術があるのにも驚いていたし、なにせ強いやつがゴロゴロいる。
帰るまでどんだけ戦闘になり、そんなヤツらと何回も戦うハメになるのかと思うと気が重かった。
そろそろ準備して会議室に行く時間かな、とりあえずは目先の事を心配して、無事にプレゼンを終わらせなくては……
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