準備
尋問で教団の手掛かりはなかった。だけど内通者はこの国から出て行っているから、とりあえず安心出来るのかもしれない。
しかし、いつまた戦争が始まるかは解らない為、防壁などを造っておいた方がいいだろう。
後は兵士達の強化が必要かもな、今回は自分が強者との戦闘を行ったが、これが同時に別々の場所で戦闘になる場合は対応出来ない。それなりに戦力強化を考えていかなければならない状況だった。
1人で悩んでもしょうがないか、みんなで考える事にしよう……
ライラとライトに相談をもちかけると、「今日の報告もありますから、国王に相談してみては?」という事で謁見の間に付いて行った。
まずは今日の報告で、内通者の件を王へと報告した。
「そうか……イルニードとこの国から出て行っているであろう者が内通者だったか……だがしかし、現段階で戦力のほとんどが無くなるとはどうしたものか」
「その件で相談したい事がありますが、発言しても構いませんか?」
「ジン、そなた何か良案があるのか?」
「良案と言う程のものではないですが、使える戦力の掘り出しと強化、それとその能力に合った隊の細分化です」
「掘り出しと強化か……」
「そうです。前1番隊と2番隊、そして現在の3番隊ですが、これは当人の強さで選定されていますね?」
「それでおおよそ合っているが」
「それを秀でた能力において分け、良い所を伸ばしていくのです。そうする事によって戦闘で適正な配置する事が可能になると思うんです」
「なるほどな……現段階で我が国の戦力が著しく落ちているのを補う為に補充をし、戦術的配置の為に適正な人員の確保か……解った。そなたの策に反対はない、細かい事は任す。だが報告はしてくれ、内容は把握しておきたいからな」
「ありがとうございます。では早速ですが入隊希望者の募集をかけて頂ければ助かります。
それと、隊の細分化の為にリュード殿をお借りしたいのですが」
「構わんぞ、入隊募集は町中に知らせておこう。3日後を目安に集まるようにする。それとリュードも呼んでおく」
「では、よろしくお願い致します」
希望は通った。後は細分化する為に、選定を行うメンバーに呼び掛けないとな。
謁見の間から出て早速行動を開始する。大体の構想はあるから、後は周りの意見を聞きながら追加したり、変更したりしていこう……
まずは、魔法使いの選定の為にサンドラ様に協力してもらう算段だ。多分魔族軍の集まっている所に居るだろうから、そこを探そう。
ライラ達に魔族軍の居場所を聞くと、今は町の外にテント等を張り滞在しているらしい。まずはそこに向かい聞いてみよう……
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ライラ達と別れ、滞在している場所にたどり着く。滞在している魔族に聞いてみると、一際大きなテントにいると教えてもらいそこに向かう。
でっかいテントと……あれか、ってデカすぎるだろ……
見た目一軒家程のテント?だ。サーカス小屋かなんかかよ……とりあえず門番みたいな人がいるから尋ねよう。
「すいません、ここにサンドラ様はいらっしゃいますか?」
「ええ、いらっしゃいますが何用ですか?」
「そうですか、私はダークエルフと協力して戦争に参加していた新垣 仁と言うものです。お願いがあり参りました」
「あなたがジン殿ですか、噂は聞きました。クリフを退けたと」
「相性が良かっただけですよ。実力じゃなく、運が良かっただけです」
「ご謙遜を、サンドラ様にご用事でしたね。どうぞお通り下さい」
一礼をし中へと入る。
噂になってるのか……クリフってそんなに有名なんだな、確かに強かった……属性の相性が悪かったら厳しかったしな。ショウのお陰で勝てたし、最終のあれはヤバかったもんな。
この世界で初めて打撃を喰らった。あれだけやったから2度と相手する事は無いと思うけど……
そんな事を思いながら中に入ってみると中の造りに圧倒される。
なんじゃこりゃ……テントの中に床や天井がある、土で壁まで造ってある。なんて魔力の無駄使い……俺も言えたもんじゃないけど。
中を歩いて行くと一箇所他とは違う大きな扉を発見する。
多分この部屋かな?ノックしてみるか……
扉をノックすると、中からサンドラ様の声がした。入室の返事はもらえたから中に入るとするか……
「失礼します。サンドラ様ご用事があって参りました」
「ジンか、戦争最終日以来だな。体は大丈夫か?」
「はい、なんとか疲れも癒えましたし大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
「それは良かった。では用事とは、腕試しをしたいって事か?」
いやいやいやいや……勘弁してくれよ。やっと戦いが終わったのに、なんでもう一度死ぬ目に合わなければならないんだ。
「いえ、今日の用事は違います。これからダークエルフの軍を立て直すのにご助力してもらいたくて来ました」
「違うのか……せっかく時間を持て余しておったのに」
止めて下さいよ……暇を持て余したら誰かで遊ばないで下さい。
「すいません、国王と話してこれからまた人間がいつ襲って来るかも解らない現状なのに、軍の戦力を削いだままではいられないので再編を考えていてですね。それで私達と一緒に選定をお願いしたいんです」
「そうか、お主と国王の頼みであれば断れまい。で、具体的な内容は?」
「内容は明日、選定する人が集まった後に説明する予定なんですが、少し説明しておきますね」
国王に話した内容を伝える。サンドラ様には魔法使いの隊の選定をメインにお願いしたいと思っている事も付け加えて
「なるほどな、確かに合理的よな。それじゃあ明日また集まって会議を行うんだな?」
「はい、明日の夕方に色々と相談したいと思っています」
「それなら選定にうってつけの人物がおるから、それまでに連れて来よう」
「サンドラ様が信用されていらっしゃる方なら大歓迎です。よろしくお願い致します」
「解った。じゃあ明日の夕方だったな、ではその時に」
「ありがとうございます。では後日に、失礼しました」
殺されかける事なく無事に生還出来た……まずは人員確保っと、後はサポート役のアリとサリにも手伝ってもらうか、城に戻って居場所を聞かないとな。
サポートで選定の依頼をしたい人物で思い当たるのはあの双子だけだったから、まずは彼女らに聞いて他にいなければお願いしたいと思っていた。彼女らの有能さは実感しているし、イルニードが俺らと一緒に潰したい人物だったから、能力については折り紙付きだ。
1度城に戻り確認に向かう事にした。
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城に戻ると彼女らの居場所はすぐに解った。まだ、負傷者の看護に当たっているそうだ。
とりあえず医務室へと向かい、彼女らを探す。
二人を見付けると、真面目に仕事していた。いつもの感じであっけらかんとしているのかと思ったが、仕事に対しては真面目なようだ。
確かに助けに向かった時にアリはライラに肩を貸し、あの危険な場面を頑張って乗り切ろうとしてたもんな。
「よお双子、元気か?」
「「おおぉぉ、ジン殿ではないですかーーー元気してますよーーー」」
やっぱりこの感じが合ってるよ。仕事をしている時の真面目さも良いけどな。
「今日はお前らに用事があって来たんだが、時間作れるか?」
「もう少しやったら終わりまーーーす。少し待ってて下さいなーーー」
「解った。じゃあ、医務室の外で待っとくな」
双子に手を振り、医務室のドアから外に出た……
10分程待ったところで、双子がドアから出てきた。とりあえずひと段落出来たのだろう。
「「お待たせしましたーーー話ってなんですの?」」
軍の再編の話しを行う、難しい顔をしていたから「この人に補助役が合ってるかどうかを判断してもらうだけだ」って伝えると、了承してくれた。
「じゃあ、明日の夕方に詳しく説明すっから、よろしくな」
「「はーーーい、じゃあ明日の夕方ねーーー」」
双子に手を振ってその場を去った。とりあえずは後1人声掛けたい人物がいるけど、夕食の時でいいかな。まずはもう少し部屋で構想を練る事にしよう……
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