魔力探知
何かが肌に触れたのを感じ、意識が覚醒していく……
目を開けると、まだ外は真っ暗だった。昨日は早く寝てしまったからこんな時間に起きてしまったのだろう……
いや、違った……ライラが横に居る。部屋を間違えたぐらいじゃない、堂々と着替えて横に居る。
このまま2度寝は無理だ……この前はライラの部屋だったけど、今日は俺の部屋で添い寝って……絶対眠れん。
最近ご無沙汰なんだからキツい、この状況は悩ましい……
「……ジン、どうしたの?」
「いやいや、起きたらライラがいて、ビックリしたんだ」
「ちょっと話しをしようかと部屋に来たら、寝てたんで一緒に良いかなって思って布団に入ったの、ダメだった?」
寝起きで甘えてこられるシュチュエーション……これはもう俺の中で一番好きなやつだよ。すぐギュッていきたいけど我慢するんだ我慢……
「ダメじゃないけど何かがあったら大変だろ?」
「何かがあっても困らないよ。ジンならいいもん……」
座っていた俺の首にライラが手を当て、擦り寄って来る。
無理だーーーーーこれ以上は無理ーーーーーーーー、最終の二択……理性を取っ払うか、理性を保って大人の対応をするか……
―――――――――――――――――――――――――――――――
朝だ……体の疲れはとれてるが、心はどっぷり疲れました……
ライラは幸せそうに寝ている。こんな日が続けば心がもたない、着替えて外を歩いて来よう……
客室から静かに出て修練場に向かう、ちょっと体を動かしてスッキリしよう……
『やけに早いな……こんな時間から修練か?ご苦労な事で』
2日ぶりにブラッドから声が掛かる。昨日は疲れていたのか全く話し掛けてこなかった。
『おはようブラッド、ちょっと体動かしたくてな』
『良い心掛けだ。お前さんに教えたい事があったから丁度よかった』
『教えたい事って?』
『この前の戦闘の時に使っていた魔力探知ってやつをな』
何度も救われたブラッドの視界、それはその魔力探知で敵を追っていた。覚えれば戦闘で優位になるし、ブラッドに負担をかけずに済むから融合の際の時間も無駄に使わずに済む。
『それは助かる。けど、そんなに簡単には覚えれないだろ?』
『そうだけどな…今のお前さんの実力があれば難しくはないだろう、とりあえず1人で練習は難しいから精霊を召喚しな』
今の時間に起こすのは悪いと思いながら召喚を行う。起きててくれよ……
『なに〜?こんな時間に、僕まだ眠たいんだけど……』
『悪いが、ちょっと手伝ってくれないか?』
召喚すると俺の前を飛んでいた。やっぱり寝ていたみたいで少し気が引けた。悪い事したな……
『ジン、直接精霊と話したいから俺の事を説明してくれないか?』
『良いけど話せなかったのか?同じ様に頭の中から声が聞こえていたから話せるもんだと思っていたが……』
『話せないんだ。若干お前さんと話してる方法が違うからな、俺は直接思っている事をお前さんに話し掛けるが、精霊は魔力を伝って話し掛けているんだ。だから俺が話している事がそのまま伝わらないし、話せない。
それで、俺の存在を認識してもらって、魔力での会話をこっちにも送って欲しいんだ』
若干俺の頭の中がこんがらがりながらも精霊にその事を伝えた。
『そんな人がご主人の頭の中にいるんだね、解った。魔力使って探してみる』
賢いな……俺が整理つかなかった事をいとも簡単に理解して、既に実行に移している。
そう言えば名前決めてなかったな、戦いが終わったら付ける予定だったから、相談してみよう。
『把握出来たよ。じゃあこの人にも魔力での会話を聞ける様にするね』
『ありがとう、それと名前付ける予定だったよな。今から決めても良いかな?一応候補はあるんだけど』
『えっ本当に!先にそれを聞いてもいい?』
『いいよ。俺が考えてるのは翔って名前なんだけど、俺の元の世界で翔ぶって意味を表す言葉なんだけど、どうかな?』
まあ、いつも召喚した時に飛んでるからって安易な付け方だけど……
『ショウか…良いよ。凄く気に入ったよ。ご主人ありがとう』
『気に入ってくれたなら良かった。じゃあショウさっきの会話をお願いする』
『解った。じゃあ、もう一人の方聞こえますか〜?』
『聞こえるぞ、上手くいったみたいだな。俺はブラッドだ。精霊、よろしくな』
『ブラッド、さっきこいつの名前決めたんだ。ショウって名前になったんで、そう呼んでやってくれ』
『ショウと言います。ブラッドさんよろしくです』
『そうか、名前決めたのか…ショウ、こちらこそよろしくな。
それで早速なんだが練習に付き合って欲しいんだがいいか?』
『魔力探知でしたっけ?いいですよ。僕はどうすればいいですか?』
『方法は簡単だよ。少量の魔力を発しながら翔んで欲しいんだ』
『それだけで良いなら問題ないよ〜。じゃあ、早速翔ぶけどいいかな?』
『頼む。じゃあジン始めるぞ、お前さんは目をつぶり自分の魔力を微量でいいから放出してくれ。それでまずはショウを見付けてくれ』
それなら召喚魔法と近い感じだから問題ないだろう……案の定見付けるのは簡単だった。
『見付けたぞ、それでこの後どうすればいい?』
『随分と早かったな、じゃあそれから魔力を発してるのを止めて、さっき感じた魔力を見付けてみな』
魔力の放出を止めショウを探すが解らない……こりゃ難しいぞ。
『解るか?』
『いや全くだ。なんかコツはないのか?』
『お前さん、サンドラの所に行ったショウを感覚で追っかけていってたのを覚えてるか?あれと同じだ。自分以外の異質な魔力を探すんだ』
そう言えばやったな、異質な魔力ね……あっ、これかな?
異質な魔力がある場所に手を伸ばすと何かを触る。
『そうだ。それでいい、じゃあ今からはショウが動いているのを目をつぶったまま捕まえてみろ、これが出来れば魔力探知の成功だ。後は何回もやって覚えるんだな、慣れれば形まではっきり解る様になるし、視覚と一緒に使えばどんなに速い相手も補足出来る様になる』
感覚で覚えて反復練習だな、俺が一番得意な方法だから助かるな……
暫くショウと一緒に二人で練習を行っていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「ジンさんおはようございます。随分とお早いですね」
遠くからライトの声が聞こえた。目を開くと確かに日が登っていた。
大体7時ぐらいかな?まだ確かに早い時間だが、俺ん家の近所のじいちゃんばあちゃんは既に散歩終わってるぞ……
「ライト、おはよう。丁度いい所に来てくれたな、少し練習に付き合ってくれないか?」
既にショウの魔力探知に慣れすぎてしまって、魔力の質自体を変えないと練習にならなくなっていた。
「良いですけど、何をすればいいですか?」
「俺に向かって攻撃を仕掛けてくれないか?武器を使ってくるとまだ自信が無いから素手で頼む」
ライトは頷くと構えてくれた。俺は再び目をつぶり攻撃に備える。
「目をつぶったままでいいんですか?」
「大丈夫だ。出来るだけ全力の速さで頼む」
ライトの魔力探知は出来た。後は動きを追うだけなんだけど……
ライトの魔力が右に動き、こっちに向かって来る。まだ避けるタイミングが掴めない為、ガードを優先し上手く対応。これで少しづつ慣れていこう……
小一時間程行っているとライトの攻撃を避け、反撃を出来る様になった。
「凄いですね……目をつぶったままで回避や反撃までしてくるなんて」
「魔力探知って言ってな、ちょっと訓練してたんだよ」
「良かったらそれ、僕にも教えて頂けませんか?」
ライトに覚えてもらえれば、これからの練習でも一緒に出来て役立つし、戦力アップにも繋がるから教えない手はないだろう。
「良いぞ。今後も一緒に練習に付き合ってくれればな」
「はい、こちらこそよろしくお願い致します」
ライトにブラッドから教わった事を説明し、一緒に練習を再度開始した。
すっかり日が高くなったところで今日の練習を終了する。暫く練習してしっかりと物にしないといけないな、ライトが付き合ってくれるから、すぐにでも実戦で使えるぐらいになりそうだ。
「練習に付き合ってくれてありがとうな」
「こちらこそご教授頂きありがとうございます。そう言えば、聞きたい事があってジンさんに声掛けたんでした」
「なんだ?」
「姉さんを知りませんか?昨日の尋問はどうだったか聞きたくて探してたんですよ。そしたらジンさんを見かけてここに来たんです」
姉さんね……俺の部屋に来て寝てるよ。って正直に言っていいものか?
ライトだからそこは大丈夫だと思おう……
今回もお読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想お待ちしています。
次回もよろしくお願い致します。