闇魔法
衝突までの時間がゆっくりと流れる。昔の事を思い返していく……
ってこれ走馬灯ってやつか?高校の時に原付きで崖から飛び出し、みかん畑の上を飛んだ時に経験したやつだよ。
光魔法が俺の闇魔法の中に入ってくる……あれ?少しづつ細くなっていないか?
俺のところにたどり着く頃には鉛筆くらいになっていた。一応当たったけど、ほぼダメージは無い。
確か、闇魔法で他の魔法を吸収出来るとか言ってたな……
『僕の属性は光と相性が良くてね。ああいった魔法なら吸収して終わりって具合になるよ』
『マジか……ちょっとヤバかったけど、これで打撃以外は大丈夫って事だな』
『その攻撃の為に使っている、光に覆われた状態も解除出来るから目で追えるんじゃないかと思うよ』
何気に相性バツグンじゃないか……とりあえずさっき打たれまくったお返ししなきゃな……
「君は闇魔法が使えたんだね……だけどその程度の魔法でしのげると思わない事だね」
クリフは光魔法をいくつも発射し、俺を狙ってくるが闇魔法に吸収されてしまい、一発も届かない。
「その程度でもしのげたみたいだな……」
『今からアイツの影を縫い付けるから、影を伸ばして』
言われた通りに影に向かって魔力を注いでいくと影がクリフに向かって伸びていく。森の影で気付かれにくいとはいえ、気付かれない様に会話で注意を逸らすか……
「なぁ、お前は何で前線じゃなくて城を襲っているんだ?しかもなぜここまで掻い潜って来れたんだ?」
「君が知ったところでどうなる?」
「どうなるもこうなるも知って得する情報なのは確かだろ」
「いいさ、少し話しやるよ。この戦争の発端は人間ではなく、この国のダークエルフからの提案だったって事さ。公に国内で明かしていないから知る者はいないだろうけどね」
なんだって……どうなってる?発端がダークエルフって……
「どこの種族でも救神教の信者がいるみたいだね、結局はソイツが発端さ……反旗を翻した人数までは知らないけど、発端のダークエルフは戦争で負けて、自分が国民を救神教で導くなんて言ってたそうだ。まぁ僕には関係ないけどね」
「それでお前も操られていてもか?」
「構わないよ。力を使って殺し合いが出来れば問題ないさ、結局はどこでも戦争が起きるんだそれに便乗して愉しむだけだからね。そろそろお話しは終わりだ、決着を着けようか」
「そうだな、いい話も聞けたしさっさと終わらせてやるよ。覚悟するんだ。こっちも本気でいくからな」
「それはこっちのセリ……フ……なんだ、身体が動かない……」
「そうみたいだな、じゃあお別れだ……2度と帰って来れない様に吹っ飛ばしてやるから」
脚力の強化を行う、世界の果てまで飛んで行け……
「君の仕業か?卑怯だとは思わないのか?」
『ブラッド、一瞬だけ融合してあれを使ってくれ』
『解った。景気よくいきな』
「卑怯だ?戦争では何が起こるか解らないんだろ?全部ひっくるめて戦争だ。愉しんで飛んでいけ」
融合を行い、クリフの下から突き上げる様にボディに思いっ切り蹴りを喰らわす。浮き上がったクリフにトドメの一撃……男のロマンが詰まった必殺技
「ラ○ダーーーーキーーーーーーック」
決まった……気持ちいい……何度やっても快感だな、でもいい加減名前変えないと、俺はラ○ダーじゃないし
クリフは蹴りの威力で鎧を破壊され吹っ飛んでいく……そしてキメの……爆発!!
完璧だ……これ以上ない仕上がりだったよ……
死んだかな?いやいや、あれで死ななきゃ人間じゃないよな。それだけの威力を込めて蹴ったんだし、大丈夫かな
さて、余裕ぶっこいてる訳にはいかない、城が襲われてるだろうから急いで向かわないと……
城に移動を始めようとすると後ろが騒がしい、何か起きたのか?
でも、後ろにはサンドラ様もいるんだ。ちょっとやそっとの問題くらいはどうにかしてくれるだろ。まずは城の安全確保だ
融合を解き急いで城に向かう……途中で闇魔法の中から回復薬を取り出し、回復を行った。
もう少しで城に着くかと思った時に、ライトとキャメロの姿を発見する。
「お前ら無事か?」
「あ、ジンさん。今し方終わりましたよ。キャメロが知らせてくれたお陰で、全員無事で戦闘を終了しましたよ。既に倒した人間は捕虜にして運んでいます」
「そうか、良かった……キャメロもありがとな。助かったぞ」
「いえいえ、ジンさんの判断のお陰ですよ。僕指示に従っただけですから」
って言ってる割には嬉しそうだ。
「でも、ジンさんクリフのやつはどうしたんです?」
「なんとか倒したよ。かなり強かったが、俺との相性が悪かったみたいでな」
「相性ぐらいで勝てませんって……ジンさん間違って召喚された割には勇者より強いんじゃないですか……」
「割と上手く騙せた部分もあったからな、年の功ってとこかな。ところで城内は問題ないか?」
「その事で姉さんから話しを聞いていましたが、今のところ動きはありませんね。城内のアリさんから先程連絡ありましたんで大丈夫だと思います」
まだ動いていないのか……そりゃそうか、クリフも2番隊や人間達もまだこっちに近づいてないんだから、当然まだか、でもさっきみたいな奇襲がこれで終わりとは限らないから十分に気を付けないと
「俺はもう一度前線に行ってみる。さっき騒がしかったのが気になるからな。キャメロはそのままここでライトと防衛を頼む、別の奇襲隊がいるかもしれないから警戒は解くなよ。それじゃあまた後でな」
「はい、よろしくお願いします」
「ジンさんも気を付けて下さいねーーー」
再び前線に戻る為に走り出す。皆んな無事だろうな……不安を抱えながら急いだ……
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前線に近くなったのか騒がしくなってきた。だけどおかしい……前線の位置はもう少し前だった筈だ。
ようやく人が確認出来る。魔族がダークエルフと戦っている?
裏切りはまさかダークエルフの兵士達全員なのか?
「ジン、やっと帰って来てくれた。今、大変な事になってて」
「ジンだと?まさかクリフを退けて来たのか?」
「能力の相性が良かったお陰でなんとかなりましたよ。それで大変な事って?」
「2番隊と1番隊が急にこっちに向かってきたのだーーーーー」
「1番隊もか、じゃあ他の兵士達は?」
「困惑してるみたい……人間達は1番隊と2番隊に続いて突っ込んで来たから、魔族に対してサンドラ様が指示を出して抑えてるの」
「妾が居なかったらここは突破されていただろうな、しかしながらこんな混戦になってしまえば手を出せない」
もう、ダークエルフの誰が敵で味方は判らないから手出し出来ないか……魔法で双方巻き込んでしまう可能性があるから援護も出来ないか……
「そう言えば、1番隊も裏切ったって事はイルニードはどうしたんだ?アイツがここの総指揮をやっていたんだろ?」
「さっきからそれが見当たらないの、最後に見かけたのは1番隊と2番隊がこっちを攻撃してきた時だったよ」
まさか、城に向かったとか……1番隊と2番隊の隊長揃って裏切るなんて思ってもみなかった。
「城がヤバいかもしれない……急いで向かわないと。だけどここも突破されては……」
時間が足りないし人手も足りない……
「行ってこい……そして終わったら助けに来い。それがお主の役割だ!!」
サンドラが声を張って伝える……俺は……
「はい!行ってきます。そして必ず戻って来ます。待ってて下さい」
女性3人をこんな危険な状況に置いて行く……最悪な事だが、今は3人を信じる。俺が帰って来た時に絶対生きてると
森を駆けては間に合わないかもしれない……空を飛んで時間を短縮したい。
『ブラッド、融合だ。さっきの今ですまない』
『いいのか?まだ彼女達から見えるぞ、見えたらヤバい事態にならないか?』
『構わない。どうせその内バレるさ……言い訳なら上手い方なんで、なんとかする』
『ははっ……じゃあいくぞ』
融合を行い空へと駆け上がる……城の方向に向かって高速で飛び出した……
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