クリフという男
脚力強化してればなんとか追い付く筈だ。先に城にたどり着かせてしまえば制圧されてしまう……キャメロを担ぎ上げて走り続ける。
『ブラッド、まだ先なのか?』
『前も言ったが、俺はそんな万能じゃないっつうの。ただ、後方にデカい魔力を感じただけだからな』
役に立つのやら立たないのやら……
『おーい、ご主人。僕が空から状況見ようか?』
精霊からのナイス提案だ。それならわかりやすい
『頼む、どこら辺か解れば手っ取り早い』
『了解。じゃあちょっと召喚して、上から探して来るよ』
精霊を召喚し、索敵を頼む。
しかしなんだな、名前が解らないとやりずらいな……
『なぁ精霊、名前教えてくれよ。精霊って呼ぶのも違和感あるから』
『ご主人が名前付けてくれてないのに、名前なんかある訳ないじゃん』
名前って俺が付けるの?そんな事初耳で……名前ねぇ、息子の名前ですら考えるのに半年かけた俺が、そんなすぐさま名前付けろって……これが終わってからにしよう
『知らなかった。すまんな、とりあえずはこれが終わったら考えるから勘弁な。じゃあ上空から見つけてくれ』
空へと飛び上がり城までの間を探してくれる。その間も城へと走って行く……
『見つけた!!ご主人、ヤツらは今城に向かっていないよ!今こっ……』
精霊が喋り終わる前にその答えが解った。正面から複数の兵が突っ込んで来たのだ。
キャメロを下ろし急ぎショーテルを抜き、飛び込んで来た数人を斬り倒す。
「あらら、こんなに簡単にやられちゃダメでしょ、少しは人間の意地を見せなさいって……君は人間だよね?こっちに敵意を出しながら突っ込んで来てるからダークエルフと思ったけど……後ろに居るのはダークエルフみたいだけど」
兵士の後ろから純白の鎧を纏った金髪の青年が現れて倒された兵士と俺に向かって話しかけてきた。
「僕が話しかけてるのに返事なし?しかも敵意をこっちにずっと向けてるよね……殺されても文句言えないよ」
『ジン、後ろに飛ぶんだ!!』
ブラッドが危険を教える。その声と同時に後方へ飛ぶ……
俺が立って居た場所に閃光が落ちて来る。その場所に大きな穴が空く、高威力の光魔法のレーザーか?
「へぇ、これを初見で避けるなんて凄いね。すぐに倒して城に向かおうと思ったけど、ちょっと遊んでもらおうか……君達は先に城に向かいなよ。すぐに追い付くだろうけどね」
「クリフ様しかし……」
「僕の言う事が聞けないのかい?ここは戦場だ。どこで人が死んでも誰も疑わないだろうね……」
兵士達は後退りした後、逃げる様に城に向かって走って行く……
兵士達を城に向かわせるのもマズイがコイツが一緒じゃなきゃ被害は最小限で済むだろう……
やっぱりコイツがクリフか、どんだけ俺が相手していられるか……それより城に知らせないと
「キャメロ!アイツらより先に城に行って危機を知らせてくれ」
キャメロは脚がすくんでいる……クリフのプレッシャーにビビっているんだ。
「いやいや、行かせると思ってるの?僕が2人とも倒してあげるから遠慮なくかかって来なよ」
「ここに居たら死ぬぞ、急いで行くんだ。逃げ足には自信があるんだろ、証拠を見せろよ」
「だから行かせな……」
ショーテルでクリフに斬りかかったが簡単に剣で受け止められる。
「行け!!」
「はいいいいい〜」
やっと走って行ってくれた。これで城はなんとかなる……
「人が話してる時に斬りかかるなんて礼儀がなってないね」
「お前だっていきなり魔法使って来たからおアイコだ」
「なるけどそうだね、でも今度は全力で攻撃させてもらうよ。それに、男と引っ付く趣味はないからそろそろ離れてくれないか」
鍔迫り合いになっていた状態から一気に吹っ飛ばされる。
なんて力だ……腕輪の効力で同じぐらいは出せるが、コイツは使わずにこれだ。斬られたら鎧や骨なんか関係なく一刀両断だろうな……
『最初から融合使うか?』
『いや、少し様子をみたい。それからだ。』
「じゃあいくよ。簡単に死なないでね」
どうしてこうもこの世界は戦闘狂が多いんだ……
思った瞬間クリフが視界から消える。やつから目を離しちゃいないのにいなくなったぞ!?
「これくらいの速さで付いてこれないの?これじゃすぐに終わっちゃうよ?」
後ろからクリフの声、コイツは俺が腕輪使ってする様な動きを自身の身体能力だけでやっているのか?
「心配すんなって、老眼で焦点が合わなかっただけだ。すぐに慣れるさ」
「何を意味を解らない事を言ってるんだい?」
姿を確認した瞬間に脚力強化で一瞬で近づく、視界から外したらヤバい……出来るだけ動き回ってどこかで視界に入れて攻撃をさせない様にしないと
「君も縮脚を使えるんだね。だったら少しは足掻いてくれそうだね」
縮脚?このスピードを出せる移動方法の事か?
ショーテルで斬りかかるが一瞬でその場からクリフの姿が消える。俺もすぐにその場から移動する。
『ジン、右だ!』
ブラッドの声にショーテルを右に構えると、刹那鋭い衝撃がショーテルに当たる。
ブラッドの声が無ければ危なかった。コイツと同じ力と速さを出す事は可能だけど、明らかに違うとこがある……それは動体視力だ。
どんなに早く動けても目がついていかないんだったら、ただの欠陥と変わらない。追い付いても立ち止まってやつを探すまで動けない。
『ブラッド、どうしたらあいつを捉えられる?』
『魔力を感じろなんて言ってもすぐに習得出来るもんでもないから、目を閉じろ、俺が見てる映像をお前に認識出来る様にするから』
ブラッドの言う通り目をつぶる。すると、目を閉じているのに自分の視界が確認出来る。
これがブラッドの見ている景色か、森の中にクリフが見える。しかもちゃんと目で追えている……これならいける
ブラッドの視界を使いクリフを追いかける。脚力強化もクリフよりも早く動けるイメージをし、攻撃をしていく
「急に反応が良くなったね、僕に攻撃を仕掛ける人間なんて滅多にいないよ。じゃあもう少し速くするかな」
クリフの動きがもっと速くなるが、それは問題ない。腕輪の力でなんとかなるからだ。
再び追いつきショーテルで斬りかかる。クリフはギリギリで剣で受けるが動揺しているらしい、戸惑いの色が隠せないでいる。
そんなのはお構いなしでどんどん斬りかかっていく、クリフの持っている剣はロングソードみたいなんだが、やたら硬い……だけど、今はやつの足を止め、防御する事で精一杯になっている。それならあの剣を斬り裂くイメージで剣ごと斬ってやる。
力を込めてクリフの剣に上から斬りかかる。クリフは思った通り剣で受けにきた。これを斬る為の力だ……切れろ!!
思った通りにクリフの剣を斬った。そして、クリフまでも斬ろうとするが、クリフは危機を感じ後ろに下がっていった。
「君はいったい何なんだ?僕の速さに付いてくる、いや追い越してくるし、お気に入りのこの剣まで折るなんて……しかも気付けば目を閉じながら戦ってるじゃないか」
「何でもいいだろ……それとお前に「君」って呼ばれる筋合いもない。どう見たって俺の方が年上だろ、目上の人には敬意を払うもんだぞ礼儀は大事なんだろ?」
「こんな侮辱初めて受けるよ……やりたくはないけど、全力で相手させてもらう」
「そりゃどうも、今までが全力じゃなかったから押されてましたって言い訳するのか?結構な身分だな」
「後悔するなよ。僕をここまでコケにしたんだ、報いは受けてもらうよ」
クリフの身体が光輝いていく……
なんか見た事ある……本当にこいつは戦闘民族の子孫か?これはスーパーサ○ヤ人なのか?
「僕の先祖の勇者が編み出した技でね、光魔法を纏ってそれを移動や攻撃に利用するものさ……味わってみるといい」
いやいや、編み出したのは鳥○明先生だって……お前の先祖が嘘ついてんだって……
ブラッドの視界からクリフが消える。この視界から消えるなんてそんなバカな……
直後腹部に激しい痛みが走る。クリフのヒザが突き刺さっているのだ。
マジか、当たるまで本当に気付かなかった……ショーテルで斬りかかるが既にそこにはいない、確認出来た時には上空だった。
「流石にこの状態にはついて来れないみたいだね。じゃあ、さっきまでのお礼をさせてもらうよ」
再び消えて、痛みだけが俺の認識出来る状態になる。
顔、腹部、背中、そして顎をかち上げられて上空に舞う……
『ジン、融合するぞ!これ以上はヤバい』
下にクリフが確認出来た。光魔法を手に溜めてこっちに撃つつもりだ。
『僕の力を使って!対抗出来る筈だよ!』
精霊……何を言ってるんだ……あの速さ自体見えないのに……
『信じて!』
『解ったよ。殺すなよ』
精霊を召喚すると回りを闇で纏われる……これはなんだ?
考えてる暇はない、下から既に光魔法が発射されている。
『魔力を込めて闇を広げて』
もう、言われた通りにやるしかない……魔力を闇に込めて増幅させる。
これで大丈夫なんだろうな?
精霊を信じて光魔法の衝突を待つしかなかった……
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