精霊とサンドラ
とりあえずは魔族との共闘で、どういった作戦になるかが気になる……
だけど、それを直接聞きに行くわけにはいかない、俺らがどこかに組み込まれてしまう可能性があるからだ……
「どうやって今後の動きを確認しようか……」
「そうね、誰かに聞くしかないんじゃないかな?」
「ライラ、そうは言っても簡単に教えてくれる人が……いや、居るには居るが俺の命の危険が」
「もしかしてサンドラ様の事?」
正解だ……さっき会ったけど、腕試し的な事したいって言ってたもんな……ここに来て腕試しされて1個もいい事ないんだよ。
「そうだよ……あの時の恐怖がね……」
「ジンさんでも怖い方いるんですね。どんな目にあったんです?」
キャメロにその時の事を鮮明に話してやった……
「それ、城の中じゃなかったらどうなってたんですかね……」
「間違いなく死んでたよ……」
「まぁ今はジンの立場を理解してくれてるんだからさ」
ライラがフォロー入れるが会わなきゃいけない約束はしたし、会いに行くしかないか……
「じゃあ俺は会議が終わり次第会いに行って来るよ。それまで待っててくれ」
「「了解したーーーー」」
この双子は相槌なら完璧に合わせられるから、難しい話し以外はこれで入ってくるよな。でもそれで空気が和むから助かる。
みんなを客間に置いて、1人で部屋から出て行った。
ちょっと先にライトのとこに行き、会議が終わってサンドラ様が出て来るのを教えてもらう役をしてくれないか相談しに行く
ライトの部屋をノックしてみるが、返事がない……もしかしてライトも招集かかってたのか?しまったな、早くも目論みが終わった。
どうしようか……会議室の近くで待てば、誰かに遭遇してしまう可能性も高いし……
『………………が……くよ……』
ん?ブラッドか?どうしたんだろう、声が途切れてる。
『ブラッドどうした?よく聞こえないぞ』
『は?俺は何も言ってないぞ。幻聴でも聴こえてんのか?』
そんな訳ないんだけどな……確かに誰かの声がしたんだよ
『……から……が……行く…………んじゃ……な……か』
また聴こえるぞ、誰なんだ?
『ブラッド、やっぱり聴こえるぞ。幻聴なんかじゃない』
『何言ってんだ。そんな訳ある……って聴こえた。おいおい幽霊でもいんのか?こえぇ〜』
お前自体幽霊みたいなもんじゃないのか……幽霊が幽霊怖がるってどんな話しだよ……
『おいジン、この声もしかしてお前が契約した闇の精霊じゃないか?ちょっと呼び出してみな。間違ってなけりゃ知らない内に成長してたんだ』
ブラッドの言った通り、精霊召喚魔法を使ってみる。未だに1度しか使ってないから自信は無いが教わった通りやっていく……
自分の魔力の中の違和感が……あった!!これを召喚……
自分の目の前に少しづつ光が形を成していく、精霊が話せるって事は姿を形成出来たって事だ。どんな姿なのか期待でドキドキする。
全体の姿が伺える……なんか羽の生えたちっちゃな悪ガキにしか見えないんだが……
『呼んでるんだからさっさと召喚してよね……ってなんだよその残念そうな顔は!!』
『いやいや、自分の影響を受けて育った精霊がこれかって思ったらな……まあまあ残念な訳で』
『うるさい!しょうがないだろ、アンタの本質がそうなんだろうよ。僕だってもう少しマシな契約者が良かったよ』
『お前さん自分の本質攻めて楽しいのか……』
『いやいや、こんな子に育てた覚えはありませんって言いたくなっただけだよ。どころでさっきなんか言ってたよな』
『サラッと悪口言って、話し変えないでよね。まぁこのまま言っても進まないから説明するよ。
僕があの方に会いに行って来ようかって話しだよ』
『そんな事出来んの?だったらふたつ返事でOKだ。なんなら会議内容まで聞いて来てくれると助かる』
『それ、あの方に言ってもいいかい……自分の用事は自分で済ませなよ』
『告げ口は勘弁だ。解ったよ……呼んで来てもらえるだけでも助かるさ』
『じゃあ行って来るから、終わったら向かうよ』
精霊は会議室の方に飛んで行った。とりあえずライトの部屋の前に居るのもなんだから移動しよう……
一旦中庭の目立たない場所に移動し待つ事にした。待ってる間時間潰しに精霊の追跡なんかを試していた。
暫くすると精霊が動き出した。終わったみたいで、こっちに近付いて来ていた。
居る場所がわかり難いといけないと思い、ちょっと見易い場所へ移動した。
『ジン、サンドラ様をお連れしたぞ』
『ありがとな、助かったよ』
そう言うと俺の身体の中へと戻って来た。
「ジンよ、ここでやり合うには狭くないか?」
もう既に臨戦態勢なの?勘弁してくれよ。隠れている意味もなくなってしまうぞ
「ちょっと待って下さい。まずは話しを聞かせて下さいって」
「いや、待たんな。約束だったからな」
「解りましたけど、ここじゃ城まで壊してしまうでしょ?ちょっと移動しましょう」
もう逃げられないのな……この前みたいにいきなり襲いかかられるよりはマシだけど……とりあえず人目に付かない場所に移動しないと
「城内や、町内だと危険なので城の裏手の山に移動しましょう」
サンドラ様は「解った」と一言だけ言うと風魔法を使い飛んで行ってしまった。俺も脚力を強化しジャンプしながらの移動をしていった。
「ここら辺で良いかな……準備はいいか?いくぞ」
追い付いた途端に威圧感が増す。直後、風魔法での衝撃波が飛んで来る……避けようにも範囲が広すぎて厳しい。防御すれば腕が無事に済むか解らない為、土魔法で地面に穴を掘って間一髪回避に成功するが、既に水魔法で上空からの攻撃が来る。
これをショーテルに風魔法を纏わせ斬撃を飛ばし縦に斬り裂くが、切り裂かれた水の先端がこちらを向いて襲いかかる。
だけど、さっきまでの勢いはない為、回避に成功……と思いきや地面に当たった水を伝って雷が襲って来る。
これを土魔法を発動させ、防御する……
息つく間がないぞ、当たったらただじゃ済まない威力の魔法の連発、しかもまだ遊ばれている様子だ。
「お主は本当に器用に避けるよな、これ位じゃどうもないようだし、もう少しこっちも本気をだそうか」
「いやいや、命懸けですって……もう少し手を抜いて下さいよ」
「それじゃ腕試しにもならん、面白くないからな」
面白いで死ぬ目に合う人の気持ちになって欲しいよ……
すぐに炎がサンドラの回りに発生している……6個出来上がったところでこっちに向かって来る。
直線的に向かって来る為、回避は難しく無かったが、ひとつが地面に当たった瞬間にその場で爆発が起こる。
炎はカモフラージュで、中身の爆破が本命という事か……だけど、威力自体ブラッドのアレとは比較にならない位だから土魔法で防御してやる。
その考えが甘かった。土魔法で壁を作り爆破させていくが、当たった場所を破壊してこっちに向かってくるのだ。
全部の壁を破壊された後、後退し更に壁を発生、全てが同じ爆破威力と思っていたが最後のは違っていた。
壁に当たった炎は壁をいとも簡単に破壊し、その周囲を巻き込んでいく……爆破で石や土等が飛来するが、それを風魔法で弾く。その一瞬だった。
サンドラから目を離してしまったのだ……ここまで読んでの攻撃だったのだろう、土煙の中を尖った氷魔法が幾つもこっちを飛んで来ている。
しまった……氷魔法の発生条件は聞いていたのに爆破に気を取られ忘れていた。
風魔法で下から煽って、方向を変えてやる。間に合うか……
風の衝撃波を使い、下から氷魔法に打ち当てる。なんとか間に合うが、既に次弾が発射されていた。
横に回避しようと思った瞬間に、左右に壁が発生……回避する方向を無くされたのだ。
回避出来ない……ならこれで……
ショーテルに土魔法を使い形状を肥大させる。そのまま打ち落とす。
すると左右の土壁が迫って来る。
壁でサンドイッチ作る気か?けどこんなの破壊してやる。
ショーテルの魔法剣をそのままに壁を叩き壊し、撃破
どんだけ魔法使えるんだ?こっちの体力が持たないぞ……
足元で僅かな風の動きを感じるとすぐに風の勢いが増し、竜巻になる。
さっき壊した壁の残骸を巻き込んで回転を始めるとそれが凶器に変わる……
急いで脚力を強化し上へ飛び、風魔法後方へと脱出するが竜巻がこちらに向かってる。
今ならサンドラから俺は確認出来ていないはずだ。一気に背後に移動し、攻撃を止めてやる。
竜巻を右に回避して、サンドラの背後に移動しようとするが居ない……どこに行ったのか周囲を確認するが不明
まさかと思い上空を見上げると、俺の上に浮いている。そこから水魔法で雨の様に注ぎ、彼女の手には雷魔法が既に発動している。
回避しても俺は濡れてる……直撃じゃなく、濡れた地面から感電させる気だ。
ショーテルと鞘で火花を発生させようとするが、濡れていて上手くいかない。
それならこっちからそこへ向かってやる……
上空へ飛び上がりサンドラに向かうが、先に雷が落とされる。
自分に向かって来る雷を避ける為に、サンドラの雷を借りて雷の魔法剣にして、雷が直撃する前にショーテルを投げる。
するとショーテルが避雷針の代わりになり、直撃を免れる。
俺は風魔法を使用しサンドラを落とそうとするが、忘れてた竜巻がこっちに近付いている。
最初に見たサンドラの風魔法を見様見真似で発動し、衝撃波を竜巻にぶつけるが消えていない……1発で駄目なら何度も続けてやる。
そしてようやく竜巻解除に成功。そして上空にいたサンドラの方へ風魔法での移動、サンドラに接近を試みるが距離を取られてしまう。
お互い地面に降りて来て、サンドラが口を開いた。
「楽しいのぉ……しかし時間も少ないゆえ次で終いにしようか」
次を凌げばようやく終わる……警戒を最大限にし、最後の攻撃に備えた。
今回もお読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想お待ちしています。
次回もよろしくお願い致します。