捜査と作戦
翌朝、ライトが起こしに来てくれる前に目が覚めてしまった。もう少し寝たかったのにな……この際、二度寝といこうじゃないか。
開けた目を閉じ、もう一度眠りに就こうとした瞬間、俺の身体に誰かが触れているのに気が付く……
誰だ?俺は昨日はライラと別にソファーに寝たはずだ。ライラはベットの上に……居ない。
毛布をめくり中を確認すると、やっぱりライラが居る。
ソファーは1人で寝るのには十分な幅はあるが、2人だと落ちてしまうくらいの幅しかない。
そこでライラは俺に抱きつき、横向きになって寝ている。
毛布をめくった所為か、ライラは目をこすりながら起きた。
「あ……ジン、おはよう」
「おはようじゃなくて、何故ここに潜り込んでいるんだ?昨夜は自分のベッドに寝ていた筈だろ?」
「せっかく同んなじ部屋で寝るのに、別々は嫌だなぁって思って、ジンのとこに来たんだよ。ダメ……だった?」
「ダメとかじゃないけど、起きてそこにライラが居たらビックリするだろ」
「じゃあ今度は先に一緒に寝よって言うね」
それはいいが、理性が飛ぶのが先か、睡魔に負けるのが先かで葛藤が続くだろう……
このまま寝れないし、もう起きるしかないか……二度寝よさらば
「とりあえず起きてリレイ達の無事を確認したいな、起きて一緒に行かないか?」
「そのまま起きるの勿体ないから、もう少しだけこうしてたい」
それはそれでモーニングなムスコがヤバいんだって……
『 やってしまえばいいのに……』
『 ブラッド、お前なぁ……意外と緊急事態なんだぞ』
『ははっ……不可抗力だ気にすんなって』
『朝からするのは不健康だそうだ。俺もそこそこ歳なんだから、健康には気を付けたいんでね。
それに、その時に命狙われてお陀仏なんて嫌なこった』
『確かにな、無事に乗り切るまではお預けって事だ』
現状嬉しいのだか、悲しいのだか複雑な気持ちになってるが、今は行動しよう。
「俺もゆっくりしてたいけど、相手の動きも気になるし、戦争が終わってからって約束したんだ。約束は守るからそれまで……な」
「そうだね、何か事が起きる前に行動した方が良いもんね。
じゃあ準備するから待ってて」
ライラは毛布から出て着替えにかかる。ジロジロ見て、色々と集中出来なくなるのは困るから反対を向いて待つ事にした。
「準備終わったよ。じゃあまずはリレイ様のとこに行きましょう」
「昨日帰って来てから、ずっと放置してたから怒ってないといいけど」
「そこら辺は説明しといたから大丈夫よ。少し機嫌悪かったけどね」
詳しい説明は一切せずに出てきたからしょうがないか……まずは謝ろう
ライラと共に部屋を出て客間へ向かう。昨日は勘づかれたく無かったからフードを被って移動したけど、今日は既にバレてるしそのままの姿で移動した。
何事も無く客間に着くとライラは魔法を解除しドアをノックした。中から返事があったので、戸を開け中に入る。
みんな既に起きていたみたいで全員の視線がこっちを向いていた。
「昨日は詳しい事を言わずに出て行ってしまい、すまなかった」
「ホントですよ。調べたい事があるって言ったっきり戻って来ないし、心配したんですよ」
「そのまま堂々と帰還しましたって訳にはいかなかったからな。キャメロ、心配かけた」
「「とりあえず無事で安心したのだーーー」」
「アリ、サリ、2人共にも迷惑掛けたな。とりあえず今日は外に出ても大丈夫だが、出来るだけ近くに居てくれ」
「……昨日はライラさんの部屋で寝たんですってね……」
リレイさん……想像以上のキレっぷりで……
「それは、みんなが巻き込まれない為にだな……」
「へぇ……それだけかしら?私だって自分の身ぐらい守れますけど、一緒に行ってはいけない理由があったんじゃないんですか?」
「決してそう言う事では無くて、みんなを心配してだな……」
「ライラさんが昨日言った事を信じます。ジンの言った事じゃなくて、あくまでライラさんの言った事をですよ」
理不尽だ……理不尽過ぎる。これ以上の言い訳は油を注ぐだけだから止めとこう……
「すいませんでした……」
「と、とりあえず皆さんが無事で良かったです。昨日の話しを、より詳しく話しますので現状を理解して下さい」
ライラ、お願いした……既に俺の言葉はリレイに届かないだろうから。
しかもまだ、こっちを睨んでらっしゃるし……
その後、昨日の話しを全て説明してもらった。俺が補足なんか必要ないくらいに細かく
「それで、結局怪しいのはリュードさんって事ね……」
「そんなぁ、中にも敵が居るなんて安息の地が無いじゃないですか」
「そうだな、だからいち早く犯人捕まえたいけど。敵の規模が解らないんだ。もし上層部全てがそうだと、手の打ちどころない。
昨日の段階の捜査では答えが見つからなかったから、今日必ず糸口を見つけたいんだ」
「それで今日の予定はどうするの?」
リレイが予定を聞いてきたけど、まだ作戦自体立ててない……出来る事は情報収集か……
「手分けして情報収集していこうと思うけどどうかな?1人だと危険が伴うから、2人で組んでさ」
「じゃあ組み分けはどうしますか?」
「実力に応じてって感じかなぁ……とりあえず、リレイはアリと、ライラはサリと、残りのキャメロと俺って感じでどうかな?誰か異論はあるか?」
みんな回りを伺っているけど、声を発しない。誰も異論は無いようだな……
「じゃあ、上層部以外の人間に情報収集を頼む。みんな狙われる可能性が高いけど、本格的に衝突する前に出来るだけ犯人を絞っておきたいから、協力お願いする」
みんなで頷き、各ペアで情報収集を行っていった。
ライトに起こしに来てもらう約束していて、その前に部屋から出て会っていなかったのでライトに謝罪しに行き、俺はキャメロと一緒に城から出て、町の中で行っていたが収穫は見つからなかった。
唯一気になるコメントがあったのは、冒険者達が襲って来た日の夜に、町の端で兵士らしき集団を見たと言うだけで、話しは聞こえなかったと言うものだった。
昼くらいになり町の入り口の方が騒がしくなっていた……何かあったのか?
「キャメロ、町の入り口が騒がしい。向かうぞ」
キャメロが頷くと、入り口へと移動。そこには数多くの魔族の集団が現れていたのだ。
時間的に早いが助かる。これで首の皮1枚で繋がったぞ。
遠くの様な物に知った顔を覗かせていた。
あれはサンドラ様か、まずは声でも掛けておくか。
「サンドラ様、遠いところありがとうございます。数日振りですね」
「ジンか……数日振りだが、あの時言った様に実力は付けたか?」
「それなりにですね。今なら手加減してくださったあなたの相手が少しは出来るかもしれませんよ」
「それは楽しみだ。後ほど空いた時間に手合わせ頼もうかな」
またあれやらなきゃいけないのか……勘弁ですよ。
「戦況が動く前なら可能ですよ。その時に時間があれば、こちらからもお願いします」
「まずは国王に会って話しを聞いて来るから、時間があれば頼む」
とりあえず援軍はたどり着いたのだから、少しは楽になるかな……
サンドラ様は乗り物で移動し城へと向かって行った。
しかし便宜上言ったが本気らしい……胃が痛むなぁ、パワハラだパワハラ……
さて、援軍が先に来たのを裏切り者はどう対応するのかな?
とりあえず、他のメンバーの聞き込みの成果も知りたいし、一旦戻ってみるか……
城の中に戻ると、既に他のメンバーは戻って来ていた。
「みんな、どうだった?町民からは有益な情報は無かったから、こっちは空振りだった」
なにやらリレイがニヤニヤしながら、見下している……役割分担で俺らは外を回ったってだけなのに
「私達はあったわよ。聞き込みを始めてすぐにガルフさんと会ったの。そしたら、会議の合った朝に2番隊の兵士が町の外に出て行くのを見たらしいわ。
朝早くで、彼が町の実家に泊まっていて、城へ向かう途中だったそうよ」
ガルフって確か初日に出会ったゴツめのやつだったよな……
それにしてもやっぱり2番隊か……これはほぼ主犯格は確定かな
「ライラの方はどうだった?何か収穫はあったかい?」
「私の方で出た情報は大した事無いかもしれないけど、リュード隊長の事よ。
度々部下達を叱っていたらしいわ、激昴していた訳では無いみたいだけど、頻繁にあったみたい」
計画の失敗等を叱っていたのか?何かを揉めたって事か……
「2番隊全体が敵とみなしていいのかもな……」
けど、魔族の援軍も来てしまっているから、おおっぴらに捜査出来ないし、揉め事なんて厳禁だ……穏便に終わらせないと
「質問なんだが、戦争に勝った場合は裏切り行為を続ける意味は無くなるよな?」
「そうだと思う……昨日ケインが話してる内容だと、負けた後の立場を優位にするのが条件みたいだから」
「じゃあ俺らで隊を作って内密にして奇襲をかければ、少しは敵の裏をかけないか?それで内通者を出し抜いて戦局を優位に出来ないかな?」
「ちょっ、ちょっと待って下さいよ!?たった6人しか居ないんですよ。そんな無茶な事出来ませんって」
「大丈夫だって、昨日の奇襲となんら変わんないさ。な、リレイ」
「そうね正面からぶつからなければそこそこいけると思う」
「それにキャメロだって昨日は大活躍だったじゃないか。お前が居なきゃ作戦自体失敗してたかもしれないんだぞ」
「そ、そんな言われるとぉ……」
「心配すんなって、今回はライラだってついてる。何かあった時の対応は俺らに任せな」
「「大船に乗った気持ちで!!」」
なんでお前らが言うんだよ……けど、これで少しは状況を良く出来る。後は何とか上を誤魔化して秘密裏に行動出来る様にしなければ
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