油断
「なぁ、後ろから来る筈の班が来てないけど、まだかかるのか?予定じゃ攻撃を交代で行うんじゃなかったか?」
「そう言えば来ておらぬ、もうそろそろ来ないと違和感」
「やっぱりそうだよな……お前らに任せて確認しに行っていいか?ちょっとした不安要素も消しておきたいから」
「今のところ大丈夫だと思うよ。こっちは上手くやっておくからお願い」
とりあえずはこの4人が居れば、進軍を遅くするのは問題ないか……特に俺のする事も無いのも実状だし
「じゃあ、行って来る。アリ、サリ周囲の確認を頼んだぞ」
「「うけたまっわたーーーー」」
少しづつ周囲も暗くなってきている。早目に見つけ出さないと、こっちは迷子になってしまうぞ……
周囲を警戒しつつ、交代班を探して行くが、歩いている人はいない。
どこに行ったんだ?自分達の領土で迷子なんてないだろうし……
走っている最中一本の木に目が止まる。今の木には何か違和感があるぞ、近付いて確認するか……
警戒を強めながらその木に近付くと違和感の正体が解った……血だ、大量の血が木に付いている。まだ乾いていないと言う事は、さっきまで戦闘があったのか?
周囲を探して見るとダークエルフ達の死体が5体、ひとつの班が全滅している事になる。
砂嵐の音でこっちの戦闘が解らなかったのか?いや、回りの木はどこも傷付いていないのを見ると、一方的に殺されたのか?なんにせよそれだけの実力差のある相手が近くに居るって事か……
「こんな所に人間か……俺ら以外には遊撃隊を命じられていた者はいなかった筈だが?」
不注意だったのか、それとも全く気付かせない様に近付いたのか?背後に男が立っている。
いつの間に背後を取られたんだ?急いでその場を離れ、背後を確認するが誰も居ない……
「結構なスピードで移動するんだ……ちょっと驚いたよ」
さっきとは別の男性の声、さっき「俺ら」と言っていたから複数人居るのは理解したが、何人いる?囲まれてるのか?
『ブラッド、何人居るか判るか?』
『おいおい、俺に対人センサーは付いてないぞ……たださっき話し掛けた奴らは今、木の上に居るぞ』
木々の上を見て見るがどこに居るかまでは判らない……
「僕らが木の上に隠れてるのを見破るなんてスゴイじゃん、ねぇ君は何なの?」
「お前らは何だ?何をしている?」
「味方がどうか判らないヤツに素性や目的を教えると思うのか?」
また別の声……最低3人は居るって事か
「それもそうだな、とりあえず俺はお前らの敵って事で間違いはないだろう」
「人間がダークエルフの味方?笑えるな……とりあえずここで死にたいらしいな」
「殺せるもんならな」
『すまないブラッド、敵の接近が解れば教えてくれ』
『囲まれてる人数が解らないし気を付けろ。、ひとまずは上を気にして戦え』
風魔法を周囲に回転させるよう発動させ飛び道具に注意を払う。
だが、どこの木にいるんだ……当てずっぽうに攻撃してみるか?
注意しながら上を見ていると、周囲の風魔法に違和感がある。横から何かが飛んで来ている。
前方に回避し何かを避け、何が飛んで来たのか確認する。
これってクナイなのか?漫画の中では見た事あるけど、多分クナイだろう……忍者でも潜んでいるのか?
考えてる暇は無かった……多方向からクナイが飛んで来た。違和感は左右から3つ、回避出来る方向は……これまた前方しかない。
敵の数は3人かと思い、回避後に後ろを振り向くと後方から物音がする。
木の上から鉄の棍棒を持った男が降りて来ながら俺を狙っていた。
避けるか?思った瞬間、再び風魔法に違和感。
またクナイなのか?またも3つ、回避出来る場所が……無い
『上のヤツを相手しろ!飛んで斬りつけろ』
ブラッドの声を聞きショーテルを手に飛び上がる。ショーテルを斬り上げ棍棒を滑らせる。
4人だったのか、とりあえず降りたやつをまず倒せば包囲網からは脱出出来るか……
『ブラッド融合するぞ、時間を掛ければあっちが危険かもしれない』
『了解。ははっ…さっさと片付けるか』
着地までの間に融合を行い、下で待ち構えている棍棒使いにショーテルで斬撃を見舞う。
棍棒使いはショーテルを受け後方に下がるが、目的を達成。俺の攻撃を受けてくれるだけで良かったのだ。
「急に姿が変わったからビビったが、大した変化はないのか?拍子抜けしたぞ、それとも変わってそれ位なのか?」
「お前はもう終わってるからどうでもいい……残りの3人を倒してさっさと終わらせる」
「は?何を言って……え?」
棍棒から爆発し、棍棒使いは爆発に巻き込まれ吹っ飛んでいった。
まぁ即興だったけど、十分な威力かな。ブラッドに爆破魔法を仕込んでもらったのだ……残るは3人、どこに居るか判らないが、魔法を使えば……
『ブラッド、風魔法で樹木の葉を散らせるか?』
『そこまでの出力には時間が掛かるが、土魔法でここら辺の樹木をひっくり返すのは簡単かもな』
『ナイスアイディア、それでいこう。じゃあ俺は出てきたやつを仕留めるぞ』
ブラッドが土魔法を練り、俺は周囲の飛び道具に警戒し風魔法に集中する。2人で別々の事を出来る融合は戦闘において優位だ。
前方方向からクナイがふたつ飛んで来るが、ショーテルで叩き落とす。もう1人は移動したか?
『準備出来たぞ、いくぞ』
翼を使い少し浮き上がり、周囲の地面をひっくり返していく……木々は倒れ、隠れていた2人と、移動中の1人が出てくる。
「めっけた。じゃあな……」
離れた1人に水魔法を圧縮した突きで攻撃し、残り2人にはショーテルで頭と胴体をおさらばしてもらった。
「さて、お前らは全員で4人か?」
水魔法で攻撃した相手は即死を狙わず、右肺を撃ち情報を聞き出す。
「……お前に、答える……事はない」
「そうかい、じゃあそのまま死ぬか?回復魔法をかけて命だけは助けてやれるが」
「……そんなもの……敵にかけてやるやつが……どこにいる?」
「そうだな、じゃあこれで死ねばいいさ……」
ショーテルを心臓部目掛けて突き刺した。
簡単には吐いてくれる訳がないか……少しは何か聞き出せるかもしれないが嘘かどうかも判らないし、この場では殺す方が正解だったかもな
融合を解き、急いでリレイ達の元に向かう、何もなければいいのだが……
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走っている最中に砂嵐が発動し、人が舞っているのが見える。
まだトラップが発動しているって事は無事なのか?周囲の警戒を続けながら急いで向かう。
アリの姿を確認出来た。アリはリレイの肩に両手置いて揺さぶっている様に見える。
何かあったのか?急いで来たが間に合わなかったのか?
「アリ、リレイは大丈夫なのか?」
「何の事を言っているのです?」
アリはポカンとした顔でこちらをうかがうと、リレイもこっちを振り向いた。
「ジン、どうしたの?何かあった?」
「いや、アリがリレイを揺さぶっているように見えたから、攻撃にでもあったのかと思ったんだが……」
「ああ、これね。疲れたから肩をもんでもらってたの。これがまた上手でね」
心配してたら、本当に戦場で肩をマッサージしてるとは……ってそれはさておき人間達は前進を諦めたのか?
「人間達はもう下がったのか?」
「暗くなってきたし、下がって野営出来るとこまで移動し始めたわ。
ところでどうかしたの?」
さっきの状況を4人に話す。後衛が全滅させられていた事、奇襲戦は俺らだけと言う事、さっきの戦闘で4人が心配で急いで戻って来た事
「と言う事で、今は俺らだけしかいないんだ。今回は俺がたまたま後衛を探しに行って、こっちが襲われる前に全滅させたが、夜の内に相手が奇襲かけて来ないとも限らない。俺は一旦城に戻るべきだと思うが、意見を聞きたい」
「ぜっっっったい戻りましょ、そんな状況聞いてないし、危ないなんてもんじゃないですって」
「私も賛成かな、夜の奇襲はジンと後から来るはずだった人と行う予定だったのでしょ?だったら、その人が死んでしまった以上行動出来ないじゃない。帰って作戦を立て直す必要があると思うの」
「アリとサリもそれでいいか?」
「「問題なーーーし」」
「じゃあ、一旦撤退と言う事で一致したから、今から戻るぞ。ただし、無事に帰れるかは判らない。今日襲撃してきたのがあいつらだけとは限らないからな、サリとキャメロで警戒を行っててくれ」
2人が返事してくれた後、撤退を始める。ここから城までは敵の進軍スピードを考えて1日位だろう……魔族の援軍到着を考えるともう少し時間が欲しい。
帰りの途中にリレイにトラップをもう少し仕掛けてもらって撤退して行った……
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