防衛戦
結構数は来てるな、全体にバレない様に奇襲かけるのもなかなか難しいな……けど、時間も限られているから待ってる暇はない。
大体5~6人位で組んでる、魔法を使えば遠距離で危険を侵さず攻撃出来るが、俺は魔法の連射が出来ないから奇襲がバレてしまう。
危険度は増すが近接戦闘が有効だろうな、さっきと同じで魔法剣を使って数を相手にすれば大丈夫か……
一気に目星を付けたグループに奇襲をかける。足音や草に擦れる音で警戒を強めてしまう、元々魔獣に対して警戒しているのだから仕方がない。
一瞬で距離を無くし、対象を貫いて行く。1回でいけるのは3人がやっぱり限界か、残り3人だ。剣士はいいが、魔法使いは距離があっても魔法で攻撃出来るため、優先して倒す必要がある。しかも正面から攻撃すれば広範囲の攻撃を受ける可能性がある為、出来るだけ背後からの攻撃を行うようにしていく
狭い森の中ではショーテルの長さが気になる為、倒した相手のナイフを拾い斬りかかる。
魔法使いを後ろから刺し、残りの剣士2人はナイフのスピードに対応していない為、楽に終わった。
こんなペースじゃあ時間稼ぎにもならない……ド派手に暴れて引き付けるのが上策か?とりあえずそれだったら逃げ足には自信があるし、時間は十分稼げる。
それならと、拾ったナイフからショーテルに持ち替え、樹木ごと相手を斬って移動を繰り返す。
複数のグループを襲撃すると、騒ぎが起きている。もう少しすれば全体で騒ぎが拡散して前進するスピードも遅くなるだろう……
後はどこかで自分の居る位置を教える様に、派手な攻撃を仕掛ける必要がある。
『ブラッド、一度融合してこの前の爆発を使えるか?』
『いけるぞ、今回は魔法剣じゃなくて魔法として放つから離れた場所になるがいいのか?』
『大丈夫だ。爆破後にそこに立てばいいからな』
融合を行い、ブラッドに魔法を準備してもらう……狙うのは少し孤立してるグループだ。
魔法を放ち、狙ったグループは大爆発を起こし、爆風を巻き起こす。
予定通り爆発の中心部に行き自分を発見させる。
爆発が起きたのを何事かと冒険者達が集まって来る。
爆発によって発生した煙りがおさまっていく……
「お前等もこうなりたくなかったら引き返せ、戦いたいのなら相手になってやる」
いい感じに決まったかな、これで引いてくれれば最高なんだが……
「相手はたった1人だ。数で押し切れば勝てるぞ」
馬鹿が居たか……言った奴は、あそこか
力を使い一瞬で言い放ったやつの首を斬る。言っても判らないならもう少し恐怖を植え付けてやる。そのまま前に出ている奴等を斬り倒していった。
まだ抵抗する奴等は……いないな、斬られるのを見ていた奴等は急いで逃げ出していた。
後はまだ残っているグループを探し、奇襲をかけていけばあらかた終わるかな……統率が出来ていない冒険者達で助かったかな、もし軍の様に隊列を組んで来ていたら危なかったかもしれないな
他にまだ冒険者達が残っているか確認の為、左右を移動する。
ひとつのグループを発見する。他の奴等とは装備品が違うな……
まだ前進を進めている。コイツらはなんだ?さっきの場所からもあまり離れていないが、騒ぎにも動じず前進しているなんて……
「そこからコソコソとコチラを覗いているやつ、出て来い」
気配で気付かれた?そこそこ離れているのに……
大きなシールドを持った男がこっちを見ながら、大声で威嚇している。
「来ないのならば、こっちから行かせてもらう」
しょうがない、出て行き正面から戦うか……
「出て行くさ……隠れて居たのによく解ったな」
「殺気がな……お前は人間なのか?騒ぎの原因はお前か?」
「殺気か、そんなんで気付けるんだな。俺は人間だ。」
「人間のお前が何故こんな事をしている?」
「言ったら信じてくれるのかい?こんな騒ぎを起こした人物の言う事をさ?」
「一応聞いておこう、何が原因でこんな事をしているのかは気になるからな」
「じゃあ言っておこうか、俺はダークエルフ達を守る為に戦っている。その為にお前等をここから先に行かせる事が出来ないからだ」
「ダークエルフを守る?何故魔族と繋がって、我々に仇なす者達の協力をすると言うのだ?」
「仇なすねぇ、お前等はダークエルフと会った事はあるのか?殲滅しようとしているダークエルフ達の事を知っているのか?」
「何を言ってるんだ。会った事など無い、我々を襲っている魔族と助け合っているんだぞ、それだけで戦う理由は十分だろう」
「殺し合う理由がそんなものなのか?やっぱりお前等にとって、他の種族の命の価値はそんなものなのか?数百年もこの地で静かに暮らして居る種族を滅ぼす理由を、人から聞いた情報だけで実行するのか」
「それは……だがしかし事実だった場合は、我々の行いに正当性があるだろう」
「やっとひとつ認めたな、違った場合はお前等が悪でしたすいませんで済むんだな?結局行動理由が軽いんだよ。魔族達でもそうだ、お前等が踏み込まなきゃ現状攻撃してこないのに、自分から蜂の巣をつついて自ら被害を被り、魔族の仕業だって言って悪にしている。それがお前等の掲げる正義なのか?」
コイツ等に言っても無駄なのだが、腹の虫が治まらない。全部言ってスッキリしたら全滅させてやる。
「しかし、昔から魔族達がやってきたことは許されない……だからこの戦いをしているのだ」
「まだわかんねえか、それも人から聞いたり見た事だろ?それは事実なのか?証明出来るだけの情報を確認を行ったのか?」
「いや、しかし……歴史が証明してる……ハズなんだ」
「解ったか?お前等が命を奪う行動理由は結局、間違ってるかもしれない情報と、金なんだよ!!」
これ以上言っても無駄だろう、殺ってしまうか……
そう思った時、今まで背後で話しを聞いていた女性が前に出る。
「では、あなたはそれだけの情報を得てここにいるんでしょうね?
我々は神の記された書を元に行動しています。それが人の命を奪う理由であったとしても」
「そうだ。それだけ情報を得るだけの行動はしてきた。だからこそ、俺はダークエルフ達を守る。
ひとつ言っておいてやる。その神が書いたとする書物は、神の使い手と名乗った人物ではなく、それを利用した者が書いた物だ」
「そんな紛いごとを、どこにそれを証明する物があるの?あるなら出してみてよ」
「お前等は逆に証明出来るのか?その書物が神の使い手が書いたって事を?」
「それは……」
「出来ないだろう……それは俺も同じだが、俺は自身で他の種族に会い確かめて来た。そして結論ここにいる、お前等とは違うんだよ」
「けど……それじゃあ今まで私達が戦ってきたのは、情報に踊らされ一方的に迫害して来ただけと言う事なの?」
「そうだ。それ以外の何物でもない……喋りすぎたな、他に冒険者が居るかもしれないから、時間の無駄になる。それじゃあ、終わらせるぞ」
これ以上はただの無駄話しだ。これだとただサボっているだけだからな。言う事言ってスッキリしたし、死んでもらうか
「待ってくれないか?僕も聞きたい事があるけど良いかな?」
もう面倒臭い……もういいだろ?俺は十分話したぞ
弓を構えていた男性が話し掛けてくる。
「僕は君の言う事を少し理解出来る。ギルドの仕事内容を見る度に疑問に思っていた事があったからね。僕の名前はケイン、見ての通りの弓使いだよ。答えてくれるなら、僕は弓を起き、他の仲間もこちらに来るよう伝えよう」
「ちょっとケイン何を言っているの?」
「リターナは黙ってて、良いかな?」
時間が無いのに……
「解った。が先に、まだ前進している者がいるか確認するのが先だ。それまでここにいるなら話しを聞こう、結果戦う事になっても知らないがな」
「ありがとう。では、ここで待っているよ」
その一言を聞いた後すぐに索敵に向かう。
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思いのほか索敵はすぐに終わった。広範囲に行こうとしたのだが、先にダークエルフの防衛軍を見付けたからだ。
「あっ、ジンさん現状どうなってます?こちらに攻めて来ているのは確かですか?」
「ライトか……攻めて来ているのは確かだったが、とりあえず第一陣は追い払った」
「追い払ったって、1人でですか?」
「そうだな、冒険者達が来ていたから、丁重に帰ってもらったよ」
「攻めて来ていたのは確かだったんですね……では、先ずは王に報告して来ます」
「いや、ちょっと待ってくれ、報告は他の者に回して一緒に来てほしいところがある」
色々と説明が面倒だし、相手の対応を見てみたい……ライトなら適役だろう……
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