城への帰還
眠たい……昨日はライラと同じベットに寝たのだ(もちろんまだ何もしていない)が、昔から誰かと一緒に眠れないのだ……
昔の彼女や嫁さんは元より息子まで、一切一緒に寝ていない。どうしてたかと言うと、隣に抜け出して布団をコソッと取り出し就寝という訳だ。
昨日はベッドだった為、逃げ出す場所も無く理性を保つという地獄を味わった……
『昨日はお楽しみだったか?』
『馬鹿言え一切寝てないぞ……』
『ははっ…寝れないほど激しいとは、お前さんもまだまだ若いな』
先程の説明をブラッド行うと当然の批判が返って来る。
『お前さん、なんて勿体ない……彼女を抱かずに、ただただ眠れぬ夜をって……どんだけドMなんだ』
『うっさい……とりあえず今はお前に構ってる気力はないから、静かにしててくれよ……』
『解ったよ。でも、次は抱いてやれよ』
ちくしょうめ、人の気も知らないで……罪悪感が凄いんだぞ、昔はともかく結婚して浮気なんかしてないんだからな。
でも、今のライラに応えるって言ったんだ。それは逃げれないしな……
「ジン、おはよう」
ライラが後ろから抱きついて来た。初々しいなこの感じ、これがずっと続けばどこの家庭も幸せなんだろうよ。
「おはようライラ……」
後ろを振り向いた瞬間に接吻される。その後もう一度強く抱きしめられる……良いよ。この展開最高だよ。満点だよ。
ちくしょう、幸せって怖い。ニヤケが止まらんぞ……
いやいや、こんな事ばっかしてたら1日イチャイチャして終わってしまう。我に返って現状を思い出す。今日中に城に着いて報告して、防衛体制を整えないと……
「ライラ、そろそろ準備して出発しようか、今日はやる事がたくさんあるからな」
「そうね、まだ側でゆっくりしたいけれど時間は待ってくれないだろうからね。それに移動中もジンの背中に引っ付いて居られるし」
可愛いだろこれ普通に、こんな綺麗な女性が可愛い顔するなんて愛くるしくて仕方ない、が今はまだ我慢だ。
素早く準備を済ませ小屋を出発する。早ければ昼過ぎにたどり着くかな、ライラを背中に乗せて急ぐ……
しかし、本格的に眠いな…居眠り運転ならぬ、居眠りダッシュなんて怖すぎる。出来るだけ意識を保つ為に周囲に気を配りながら走り続ける。
魔獣をチラホラ見かけるな……だけど、こっちに気付くのは俺が通り過ぎた後なので危険は少ない。しかし、行きにこんな数見かける事は無かったのになんだろう……
「ジン、急いだ方が良いかも……魔獣が森の向こうから押されて来てる感じがする」
「それって人間達が近付いているって事か?」
「気のせいなら良いけど、この道の近くでこんなにたくさんの魔獣を見かける事はないから」
「解った。もう少し加速するから、しっかり掴まっててくれ」
ライラが掴まってる手に力が入ったのを確認すると、更にスピードを上げた。
暫く走った後、城が近いのかスピードを遅くするように言われ、スピードを落としていく。そうなんだった…城がどこにあるのか判らないから、教えてもらわないといけなかったんだ。
「もう少し先の、そこの曲がりくねった木を右よ」
曲がった瞬間景色が変わり、目の前に門が現れる。
結界って凄いよなぁ、今度誰か仕組みを知ってる人に聞いてみよう
ライラが俺の背中を軽く叩いて、降ろす合図をしてきた。そっとライラを降ろし、門の前まで行くとお決まりの文言で門が開く……
「早く国王に報告しに行きましょう、さっきの異変もあるから急がなきゃ。あれが気のせいじゃなかったら手遅れになるわ」
急ぎ、国王にお目道理願う。至急と言う事を伝えたらすんなり謁見の間に通してくれた。
「2人共顔を上げよ。至急と言う事で先ずは話しを聞こうではないか」
今回の説明は俺がするより、ライラの方が適任だろう。ライラの顔を見て頷いた。
「ありがとうございます。では報告する事が2つありまして、先ずは朗報です。魔族領にて援軍の確約をサンドラ様より賜りました」
「援軍を送ってくれると、これで少し光が射したな。して、もうひとつの報告とは何か?」
「帰路にて多数の魔獣を道より確認しました。いつもは見ない場所でです。もしかすると人間達が攻めて来ている可能性があります。
軍の定期報告はどうなっていますか?」
「うむ、確認してみよう」
国王は従者を呼び寄せ確認を急がせる……
「お前達の功績を讃えて、労ってやらねばならないのだが、この様な時期故に許して欲しい」
「いえ、俺達の事は気にしないで下さい。状況が状況ですから」
そう言っていると従者が戻って来て、国王は従者の言葉を聞き頭を抱えた……
「お前達の言っていた事が当たっているやもしれん、ある筈の報告が遅れているとの事だ。急ぎ防衛の準備を行う、帰って来て早々悪いがお前達にも手伝ってもらうぞ」
「解りました。では、俺は先行して状況を確認してきます。状況次第では先に戦うかもしれません」
「解った。お前の判断に任せよう、では頼んだぞ」
頷き扉から出て行く、その先にライトが立っていた。
「無事に帰って来られたのをお聞きしたので駆けつけたのですが、人間達が攻めて来ているのですか?」
「まだ可能性の話しだが、俺は外に確認しに行く。ライトは国王の指示に従って防衛にあたってくれ」
ライトは頷き謁見の間へ入って行った。俺は急いだ方がいいな……もしかするとすぐそこまで来ているかもしれないから
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門より外に出てみると魔獣の呻き声や咆哮に混じって、人間の叫び声が聴こえてくる。
マズいな、ここで聴こえるって事は結構近いのか?森の中に駆け出し声のする方に向かう
既に人間達は城から1km位の場所まで来ていた。戦列を組んでいる様な状態じゃなく、複数人で隊を組んで攻めて来ていた。
隊列を組んでないって事は兵士ではなく冒険者達だろう、これなら各個撃破していけば時間は稼げるか……
人間達の前に立ちショーテルを鞘から抜いた。
「なんだお前!?攻める方向が違うぞ」
「ひとつ聞きたい、何故お前らはダークエルフ達を攻める?」
「あぁ?そりゃあ世の中で悪しき存在とする奴等を倒して何が悪いんだ?それに、討伐に参加すれば金になるからな」
笑ってやがる……もう何も聞かないでおこう、コイツらは命を金になるものとしか思っていないんだ。
この世界が悪いとか、そう仕込んだ奴等が悪いとか考えてたいたが、ここに来た時点でコイツらが悪だ。
「意見が合わなかったな、じゃあ死んでくれ」
腕輪の力を使い、目の前にいる集団に斬りかかった。相手が不用意に会話で武器を下ろしていたのが運の尽き、速攻で3人の首を斬った。
驚いた回り集団はようやく武器を構えるがもう遅い……ショーテルには風の魔法剣を仕込み終わっている。突っ込んで集団の真ん中に立っていた俺は、ショーテルを横に振り斬撃を円状に飛ばし一気に倒し終わった。
正確な数の把握をしていなかったが、総数で8人ぐらいか……コイツらが先行しているだけならいいが、他にも集団を確認する事が出来る。
倒すなら全面的に気づかれてない今の状況を利用し、奇襲で数を減らしていくのが得策だろう。情けなんか掛けてやるもんか、人を殺そうとするんだ。殺されるのは仕方ないだろう……
『囲まれたら迷わず融合しろよ。戦闘に使うんじゃなくその場に回避に使うんだ。いいな?』
『解った。その時はこっちからも頼む』
数自体判らないが、防衛線が出来るまでの時間稼ぎだ。危険は出来るだけ避けて、準備が整ったら俺も戦列加わらないと。
じゃあ一気に行くぞ……
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