共存
気が遠くなっていく中声が聞こえる……どこからだ?
……………………諦めるのか…………このまま帰れずここで果てるか………………あれだけ帰ってやるって言ってたのに………………
頭の中に直接声が響いてるのか?
光っていたチェーンが浮き上がる、よく見ればチェーンじゃない指輪のひとつが浮き上がっている。
…………死にたいか?…………生きたいか?
「生きたい、生きて帰りたい」
……じゃあ、俺を……この指輪を……掴め……
指輪を衝撃の中掴む……すると今にも吹き飛ばされそうだった衝撃が止まっている。
いや、周りを見渡して見ても何も動いていない……
「ヒュージから頼まれていたとは言え、召喚されてこんなに早く俺が呼び出される事態になるとは……お前さんの運が悪いのかそれとも……」
声のする方へ顔を向ける。そこには1人の男がいた……背中には真っ黒な翼を広げ、鮮血を思わせる様な真っ赤な肩まである長い髪、服装はこの世界に似つかわしくない白いスーツにVネックのシャツ
「誰なんだ?そして、なぜ今は全てが静止している?」
「ははっ…そんな事はどうでもいいだろ死にかけ野郎、それに最初に質問するのは俺だ」
なんだこの高慢なやつは?確かに俺は死にかけてるけど、初対面のやつに野郎呼ばわりされる筋合いはないぞ
「黙ってくれて結構……さあ先ずは決めてもらおうか、質問は俺と共存するかしないかだ?
まあ、共存しないならお前さんの命はここまでだろうけどな、さあ選べ」
選択肢なんてない質問しやがって、俺は生きて家族の元に帰るんだ。答えは……
「あぁ、共存してやる……聞かせろ、共存すればどうなる?」
「いいだろう、先ず俺の現状は指輪という器に俺の魂を保管させている。とある事情でそうするしかなかったからな…つまりお前さんに見えている俺は魂だと言う事だ。そして、お前さんと共存するって事はひとつの身体を2人で使うって事だ」
「それだけ聞くと俺に何のメリットもない話しじゃないか?それにこの現状を打破出来るとは思えない」
「ははっ…そうだな、もう少し詳しく話してやろう、俺と共存する事によって俺の能力を使う事が出来る」
「能力って?」
「この空間を静止する能力じゃないぞ、これはヒュージかこの時の為に仕掛けてくれたんだろうな。
俺の能力はな………………」
―――――――――――――――――――――――
「…………って訳だ。とりあえず時間ももう無い、先ずは指輪をはめろ。それで共存の許可になる」
「解った。でもあんたって言うのもおかしいから名前教えてくれよ」
「ははっ…色々説明したが名前言うのまだだったな、俺の名はブラッドだ。よろしくな共存者さん…………」
再び時が動き出し衝撃が襲う……じゃあさっき聞いた手筈通りいくぞ……
「指輪の封印を解除し、封印されし者との共存を許可する!!
来いブラッド!俺を生かしてくれ!!」
手に持っていた指輪を人差し指に着ける……直後、襲っていたレーザーからライラと共に脱出させてくれた。
「ライラ、大丈夫か?」
「ジン……なの?服装が、いえ…髪の色まで違うわ……」
「ははっ…ちょっとばかし理由があってね、それは後で話す。今はあの蛇を追っ払ってくる」
俺の服装は共存によりブラッドと同じ白のスーツ姿になっている。髪型は変わってないが髪色は真っ赤だ、しかも真っ黒な翼付き
共存の影響らしいのだが、一昔前のホストみたいで恥ずかしい……
『早く行かねぇか、あの蛇が気付くぞ』
『わかってるさ、じゃあ行くぞ!!』
腕輪の力を使って脚力アップ、その力で跳び上がる。そして、翼を羽ばたかせ更に加速させる。一気に距離を詰める
『やってみたい事があるがいいか?』
『お前さん今しょうもない事考えてるだろ、共存してるとお前さんの考えてる事を少し解るんだぞ……
でも、それは愉しそうだからやってみな』
男の子時代に皆がきっと憧れたであろう必殺技だ。
飛んでる最中にやりたくなってしまった……
状況的に余裕がある訳ではないのだが、さっきまでの腹いせはしなきゃな……
翼でもう一度羽ばたき再度加速、蛇もようやく何かが近付いてるのに気付きレーザーを止めた。
もう遅いけどな……
蛇王の顔の前で身体を回転させ、頭から突っ込んでいたのを脚向きにして……
「いくぞラ〇ダーキィーーック!!」
思い切り蛇王の頬にヒット、顔にクリーンヒットした勢いで胴体ごと後ろに吹っ飛ばされていった
『威力は良かったとして、なんださっきの掛け声は?』
『俺が昔観てた特撮ヒーローの必殺技だ!!
良いねぇ、決まると超気持ち良い』
『お前さん今後も使うつもりだろう……』
『もちろんじゃないか、こんな爽快な技はないぞ。
ただし、名前は変更しないといけないかな』
まだ蛇王を倒した訳ではないが、ヒーローの必殺技を実現した事で心ときめいていた……
さてさて、こんなもんじゃあの蛇王は死んじゃあくれないだろうから、気を引き締め直すか
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