複合魔法
「そろそろ夕食じゃろうか、その前にサンドラ様にライラ殿の精霊契約の件をお願いに行って来なければの、ジン殿も夕食中もそんな空気の中では箸も進まんじゃろうからの」
「お心遣いありがとうございます。申し訳ありませんがよろしくお願い致します」
確かに夕食中もあのオーラの中では食欲も失せてしまう……ギリクさん、サンドラ様どうぞよろしく
「そのまま部屋に戻っても気不味かろうから、ワシの部屋の書物でも読んで時間を潰しておくとよい。
食事の時間が来たらここに人を寄こす様に手配しておくから」
「何から何まですいません。では、ここで待って居ますね」
ギリクさんは笑いながら部屋を出て行った。
流石年長者だなぁ、こう言う気の使い方はしっかりしていると思う……でもさっきの空気は読んで欲しかったよ。
さて、まだまだ不明瞭な魔法の書物でも読んで時間潰そうかな……
暫くしてメイドさんが呼びに来てくれた。
無事に契約の話が済んで、ライラの機嫌が直ってくれれば良いなぁ……
通された部屋にはみんな揃っていて、問題のライラは……機嫌が直ってる…か?
「ジン、さっきは済まなかった。大人気ない態度をとってしまい……ギリク殿に掛け合ってくれた聞いたよ。気を遣わせてすまなかった」
口では申し訳ないと言ってるが、顔はニコニコだな……全く判り易いよ。
「ギリク殿、サンドラ様お願いを聞いていただき、ありがとうございました。
ライラの契約も無事に終わったんですか?」
「この戦争に勝つ為に必要な事だと思ったまでよ。気にする事はないわ。
それにそんなに手間ではないから大丈夫よ」
食事の時間は楽しく過ごせた。料理も全く見たことない物ばかりだったけど、さすがは城の料理人が作っているだけはあるな。
食事を皆食べ終わり、解散になる時にサンドラ様に声を掛ける。
「サンドラ様、魔法の事で質問したい事がありますが、よろしいですか?」
「良いぞ、ここではなんだからテラスに行きましょ、では付いてまいれ」
外はもう暗く、テラスには灯篭の様な物で明かりが灯してあり、なんとも雰囲気のいい場所だ。
「して、魔法の質問とは何かな?」
「サンドラ様は色んな精霊と契約してらっしゃるんですか?火の魔法を使われた時に火種なんて近くに無かったから気になってたんですよ」
「そうよ。全属性の精霊と契約してるわ、魔法を使う上で精霊が居れば簡単に発動出来るし、魔法消費量も減るからね。
私は精霊使いではないけど、ある理由で精霊と契約する事が出来るの」
さっき聞いた母親の件だろう、精霊とのハーフだからこそ出来る事だろうな。ライラが自力で契約する事も難しいんだから……
「なるほどですね、ありがとうございます。
それと氷の魔法を使われていましたが、あれはどうやってるんですか?さっき魔法書を読んでいたんですが、そんな魔法の使い方は書いてなかったんです」
「あれは複合魔法と言って、2つ以上の魔法を組み合わせて使う事で発動させるの。
さっきの氷魔法は水属性と火属性を使って発動させるのよ」
水は解るが火属性?熱を発する魔法でなぜ氷が?
「ふふ…理解出来ないと言った顔ね。火属性の魔法の発動の際は火種から熱を奪って発動するわよね。つまりは熱を奪うという反面があるの、それで水の温度を下げていくと凍らせる事が出来るの」
だから氷魔法が発動する前に炎の弾を使っていた訳か、連動して使わなきゃいけないから燃費は悪いけど、先程の魔法の連携を使えば有用だろう。
「一筋縄では使えそうにないですね。しかも魔法の使用量は多いし、使えても余裕のある局面でしか使えないですね」
「そうね、魔力の容量が大きい人が使うけど、なかなか使ってる人は見ないわね。
複合魔法は色々あるから説明するより書物を渡すわよ。通常では出回ってないから使いこなせれば戦闘では有利に働くでしょうけど難しいからね。自分に合った魔法があれば覚えてみると良いわ」
「何回も色んな事を聞かせて頂いてありがとうございます」
「良いわよ。さっきも言ったけどこれから戦争だもの、使える物は使える様にしておかないとね、魔法も人もね。だから出来る事を出来る内にやっておきなさい」
そうだ、使える物はあればあるだけ良い、その為には俺も聞けるだけの事は聞いておきたかった。
生存率や勝率を上げておかなければな、俺は戦争なんてない次代に産まれた。つまりは素人だ……経験値は皆より落ちるから何でもやってやるさ…
食後部屋に戻るとギリクさんが本を持って来てくれた。明日には出発だ、今日寝る前に熟読しておこう……
今回もお読みいただきありがとうございます。
色々と説明で進みませんが、ご容赦下さい。
ご意見、ご感想お待ちしております。
次回もよろしくお願い致します。