怨恨の歴史
今回はこの世界の歴史についてです。
今回もよろしくお願い致します。
ようやく話しを聞いてもらえる状態まで持ち込めた……さっきの戦闘で神経すり減らして胃がキリキリしますが、もう一回あれをやれって言われても絶対無理だな…死ぬ。
ライラが内容を話してくれているが、どうだろうな…俺が人間ってのは変わらないし、昨日今日の怨みであんな事にはならないだろう。
「アンタが召喚されてダークエルフに協力してるのは解ったわ、それにあれだけ特殊な能力見せられれば納得もするけど……」
やっぱりそうなるよなぁ、円満解決とはいかないが、今はそれだけでも良しとするしかないよな。
「ありがとうございます。俺はこの交渉さえ上手くいけば扱いはどんなでも構いません。
結局のところを言えば生きて帰ると言うのが最大の目標となってしまうのですから。
ですが、その為の尽力はどんな事になっても致します」
「なるほどね、利害の一致で協力してると言う事ね。
解ったわ、アンタの命は狙わない……けどおかしな事をしたらすぐに殺すわよ」
「今はそれで十分です。
それで援軍の件ですが、いかがですか?」
本題はこれだ……ダークエルフの為に動いてくれるかどうか。
「それなら問題なくてよ。
元々協力関係にある相手ですもの、ライラだってわざわざ来てくれてるのを突っぱねて返す理由がないじゃない」
「サンドラ様ありがとうございます。
私もこれで安心して国に帰れます」
「ただ日数は多少かかるわよ。
戦争になるならそれなりの人数と食糧に武器まで必要になるもの、大体4日ってとこね」
それから移動を考えれば約一週間程度でダークエルフ領に着くって事かな…
襲って来るのは何時か解らない為、防衛戦の準備をこちらもしなければならない。
「伝達役として別の者を向かわせるわ、それから私達が到着するまでは無茶はしないでよね」
案外簡単に交渉は上手くいった、後は守りきって援軍が到着次第反撃に出て返り討ちにしてやるまでだ。
「ライラ殿ジン殿、客間の準備をするから今日は泊まって行かれるとよかろう。
ここまでの旅路で疲れておるじゃろうから、今日はゆっくり休んで明日の明朝に出発するとよい」
「ギリク殿ご配慮ありがとうございます。
では、お言葉に甘えてそうさせて頂きます」
ライラと深々と一礼しドアから出ようとした時、サンドラから呼び止められる。
「ジン、アンタと少し話があるから残りなさい。
ギリク爺はライラを先に客間に通しておいて」
「サンドラ様!!」
「解りました。ライラ殿は先に行ってて下さい。
後で向いますから」
ライラは俺の事を気にしながら、部屋からギリクと共に立ち去る。
「根性はある様ね…アナタを残した理由が解るかしら?」
「なんとなくは……異世界から来たとはいえ、同族と殺し合いが出来るのかどうかって事ですかね?」
「半分正解かしら、さっきの攻撃を躱し続けた事といい、アナタの実力は多少なりと解ったつもりよ。
そんな相手が戦闘中に裏切った時が私達に相当な危険が及ぶと言うのが1つと、アナタが私に聞きたい事がある様だったからね」
「そうですね、サンドラ様の力には全く及びませんが確かに危険因子をそのまま放っておく訳にはいかないと言うのは納得出来ます。
ですが、今は私がサンドラ様を納得させられる程の何かは持ち合わせておりません」
「そうね、それで私から提案があるわ
ある者と契約して欲しいの」
「契約と申されますと?」
「闇の精霊との契約よ。
この世界には色んな精霊が存在するわ、その精霊ごとにほとんど性格が決まっているのよ。
火の精霊は勝気で荒っぽい感じ、水の精霊は普段おおらかだけど怒らせると手に負えない、風の精霊は自由気ままで掴みどころがない、土の精霊は物静かだけれど堅実、雷の精霊は逆によく喋るお調子者、光の精霊は優しく誠実、闇の精霊は少しひねくれ者だけど慎重派……という感じかしら。
だけど、契約する相手によっては多少性格が変わったりするの、その中でも特に闇の精霊は相手の心と同調し安く、その人の本心を濃く映し出す」
「つまりはそれで自分の本性が解るって事ですね」
「その通りかしら、最初のうちはただ光りの塊だけれど、実体化が進めば話す様になりアナタの性格を反映するわ。
ただし、良い事もあるわよ。闇魔法の発動や効力、耐性も上がるし、精神力の消費量も少なくなるのよ。十分な利点かしらね、おおよそ精霊と契約する者はそれが目当てで契約するのだから」
「なるほど、解りました。
その条件承ります」
「そう…良かったわ、精霊の結果でアナタを信用するかは判断する事でいいとして、アナタ私に聞きたい事があるわね?
まあ、あれだけ無言で攻撃し続けたのだから大体聞きたい事は解るのだけど」
「そうですね、その事で間違いありません。
ダークエルフが攻撃される原因は聞きましたが、魔族の方は何故敵対しているのかと言う事です」
「その話しは長くなるから、そこの椅子に掛けなさい」
ずっと部屋の入り口付近で立ったまま話していたので、サンドラはテーブルの横にあるソファーを指差し休める様促してくれた。
「お気遣いありがとうございます。では、失礼致します。」
「じゃあ話していくわね、事の発端はまだ国と言う明確なものがなかった時代の事よ。年数で言えば800年程前の事になるわ……
種族は別れて居たのだけれど、助け合いながら生活を営んでいたわ
けど、異変が起こったの……人間族の男性が「私は神から選ばれた神の使い手だ」とか言い出す者が現れたの、最初のうちは誰も相手にしなかったのよ。それこそ人間族ですらね。
けれども彼はある力を見せて人々を信用させていったわ」
「ある力とは何です?」
「予知能力みたいなものだったと記されているわ、それを見た人間は彼を称え始めた。
そしてそれは集団になり、彼の周りの人間達が人間至上主義を伝播させて言ったのよ。
それが原因で、少し他の種族達が敬遠する様になり、関係が悪化していき、人間族は他の種族を差別する様になった。
最初に差別の目を向けられたのが我々魔族だったの、見た目や魔力を他の種族よりも長けていた為、悪魔の使いと言われたの、そして獣人族は、ただの獣が人の真似事をしているだけだと言い広めたの……そして、敬遠して離れていた私達を探し虐殺を始めたわ。
元々人間族は他の種族と比べて人数も多く、他種族を圧倒していったの……彼らの虐殺に抵抗する様に砦を建て、軍を造り、統率する為に国を成し、城を造ったわ。
それからは戦争の歴史よ。殺し合いが続いた」
「事の発端はたった1人の人間から始まったと言う事なのですね……始めた彼の事はどうなったんですか?」
「長い戦争の最中死んでいったわ……云われとして死んだ直後彼の背中から翼が生え、天に登って行ったと言われているそうよ」
彼の死まで利用して人間はこの世界を混沌に陥れたかったのか……
お読みいただきありがとうございます。
もう少し歴史上の話が続きます。
次回もよろしくお願い致します。